第37話 帰還
「おーい!あんたら!大丈夫か!」
あたりがうるさい。
ベネボランスに飛ばされてからの記憶がない。
「主人よ起きなされ。皆が呼んでおる。」
耳元でベネボランスに囁かれた。
目を開けるとそこは大きな穴の中だった。
しかし、体が痛い。
筋肉痛か?
「あら?どこだここ?」
上には人がいっぱいいる。
とりあえず隣に寝ているインペルドを起こしてみる。
「インペルドさん!ちょっとー!起きてー!」
「んあ?おおー!スッゲー!」
インペルドはあたりの財宝を見てはしゃいでいる。
「いや、まって。ここどこだかわかります?なんか知らないけどいっぱい人いるし。」
インペルドの声で起きたのか、みんながこっちへきた。
すると穴の上から声が聞こえた。
「おーいあんたら!あんたらが迷宮を攻略したのか!?」
「おう!そうだ!ここにいらっしゃるのはミハイリル王国第七王子インペルド・モール・ミハイリル様だぞ!」
サミュエルが大きな声で言う。
すると上がざわついた。
「インペルドだって??」
「ああ、そうみたいだ。」
「あいつも大したものだな。見直したよ。」
「あれは、霊王級のシルバー・ヴォルクじゃないか?」
と、口々に言っているのが聞こえる。
俺も有名になったものだな。
「皆さん、一旦上に上がりましょうか?」
「どうやって登る?こんなにいっぱい荷物あるし。」
サミュエルが辺りを見て言った。
「俺が氷で上まであげます。こっちに荷物持ってきてください。」
みんなが財宝をたくさん持ってくる。
「それよりシルバー?あなた頭に何乗せてんの?」
マリシュンにそう言われて頭の上に手を乗せるともふもふしたものがあった。
「ありゃ?なんだこりゃ?」
持ってみると黒い猫がいた。
「かわいいー!なに?この子!?」
「我だ!気安く触るでない。」
「しゃべったー!!」
マリシュンが頰にスリスリしている、
「やめろ!主人よ!助けてください!」
主人?まさか……!
「ベネボランス!?」
「そうです。やっとお気づきになられましたか。」
「なんでそんなんなんだ?」
「迷宮の中でなら私は精霊化できるのですが、外に出てしまうと精獣化してしまうのです。だからこんなんになってしまいました。」
そうだとしてもかわいいな。
いかんいかん! ありゃベネボランスだ!
「とりあえず!上に上がってからこの続きは話しましょうか。」
「そうだな。」
みんな頷いてくれる。
思えば最初の頃は敵だと思っていたがこんなにも打ち解けられた。
「じゃあ!『氷の塔!』」
俺たちの体が氷の塔とともに上に上がっていく。
上には多くの人たちがいた。
「僕たち、これで有名人ですね!」
「まあな!良かったじゃないか!俺もこれで出世だな。」
「そうですねぇ。」
良かった。
インペルドも嬉しそうな顔をしている。
マリシュン、サミュエル、グルームはインペルドと話している。
オルニアは相変わらず黙っている。
いや、少し目がウルウルしているか?
リカルドといえば泣いてしまっているし、老けちゃってる。
まあ無理もないだろう、迷宮の中でずっと1人だったんだから。
「シルバー!シルバーなのか!?」
感慨にふけってると遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「どいてくれ!」
男が1人、女が2人、人混みから抜け出た。
ん? ありゃあ。
「父さん!母さん!レイスさん!」
俺は三人の元へ向かう。
「大きくなったな……お前なら帰ってきてくれると信じていたぞ。」
心なしか目に涙が見える。
「なに泣いてんですか!たった1週間ほどじゃないですか!」
三人は顔を見合わせている。
ん?なんだなんだ?
「シル?なに言ってるの?あなたが迷宮に入ってから三年よ?」
は……? じゃあソフィはその間。
俺はそう思った時には走り出してた。
ソフィが目を開けてるという希望を元に。




