第32話 やらかした
「え!?ちょっと待ってください……」
今、クーデターって言ったか?
「なにか?」
「え……だってクーデターって言いましたよね?」
「はい、言いましたが?」
いや、言いましたがって……
「だってクーデターですよ?そんな……できると思ってるんですか?」
「ですからこうしてお願いをしてるんです。」
お願いって……俺にも出来る事とできない事があるんだぞ。
「いや、ですから考え直してくださいよ!」
「私たちは国を変えたいんです。隣の国、アノラ王国を見ればわかります。この国は衰退して来ています。今こそ変えなければならないのです。そのためにもいずれ力をお貸しできないでしょうか?」
力をって……そりゃあ困る。
俺には大切な家族がいるんだ。
前世では家族の愛情を感じられなかった分俺は家族を大切にしたい。
「少し考えさせてください。クーデターを
起こすと言ってももっと先なのでしょう?」
「ええ、もちろん。今はこの迷宮を攻略しなければなりませんしね。」
そうだ、今はこの迷宮に集中しなければならない。
「では僕はオルニアさんを読んで来ます。グルームさんも休まれますか?」
「ええ少し休ませてもらいます。」
オルニアを呼び、壁際に座る。
目を瞑って今日あった出来事を思い出す。
オルニアの過去とインペルドの過去、それに彼らが起こそうとしていることもわかった。
クーデターがどれだけ危険なものかはわかっているつもりだ。
前世のテレビなどでよく見たものだ。
しかしなぜだろう、この心踊る感じは。
経験したことのない仲間との語り合いをしたから!?
俺はこの日この胸騒ぎが気になって一睡もできなかった。
ーーー
「はぁ……」
「どうしたのよシルバー。元気がないじゃない。何かあったの?」
「いえ、特に何もありません。」
迷宮に入って3日目。
俺たちはようやく三階層へとたどり着いた。
昨日寝てないせいで体が重い。
「とりあえず!今日は下の階まで降りてみましょう。」
無理矢理元気を出す。
「そろそろ、あの帰って来た男が言っていたような空がある外のような空間に行ってもいいんですがねぇ。」
「何言ってんだグルーム、こんなに簡単に行けたら迷宮なんて言われてないだろ。」
俺が聞いた中で初めてかもしれないな、
サミュエルが正論を言ったのは。
確かにこのまま行くとクソみたいに難易度の低いただの遺跡になってしまう。
しかし、ここは曲がりなりにも迷宮と呼ばれている場所だ。
こんなに簡単に攻略できるわけがない。
しばらく歩くと穴のようなものが壁に空いていた。
人が何人も入れるような大きな穴だ。
「みなさん、ちょっと見てください。これは何でしょうか?」
パーティー全員の顔が強張った。
どうしたと言うのだろうか。
すると穴からカサカサ、カサカサと言う音が聞こえた。
「何でしょうか。ちょっと見て見ましょう。」
「だめだ!戻ってこいシルバー!」
久しぶりにインペルドが大声を出した。
そんなに危険なのだろうか。
「ああ、出て来ちまったよ。そいつは毒蜘蛛王だ!」
インペルドが言った時にはもう遅かった。
後ろを振り返ると大きな蜘蛛がいた。
俺が前世で嫌いだったのは蜘蛛と犬だ。
「うわぁーー!『火炎爆風』!」
ゴォォォォという音とともに爆炎が舞い上がる。
「バカ!やめろ!そいつ殺すと毒が空気として充満するんだ!」
しかし遅かった。
インペルドが言う前に燃やしてしまった。
「すみません!燃やしちゃいました!走って先に進みましょう!」
俺らは走り続けてようやく大丈夫になって来たところで止まった。
「すみません。僕がやらかしてしまって。」
俺は毒が来ないように来た方向に壁を作った。
「ほんとだ!今度からはちゃんと確認してからやれ!」
サミュエルに怒られるのは嫌だったが今回は仕方がない。
「本当にすみません。」
「まぁ、誰も怪我してないしいいだろう。それにしてもこの先は行き止まりだな、どうする?また違うとこ階段があるかもしれないが。」
「じゃあ僕が行きます。こんなことになってしまったのは僕のせいなので。」
「じゃあサミュエルと行け。」
「嫌です。」
「嫌だ!」
2人とも同時に言った。
「インペルド様の命令だろうとさすがにこいつとは一緒にいたくありません。」
いやいや、それはこっちのセリフだっちゅーの。
「同感です。サミュエルさんには悪いですけどオルニアさんや、グルームさん、マリシュンさんの方がよっぽどいいです。」
サミュエルが睨んでくるのを無視しながらインペルドに頼み込む。
すると今まで黙ってたマリシュンが急に怒り出した。
「いいから行って来なさいよ!蜘蛛が来るかもしれないでしょ!」
どうやら彼女は蜘蛛が苦手らしい。
「わ、わかったよ!ほら行くぞシルバー!」
こうして俺はサミュエルと道を探すことになった。




