第31話 思惑
「ただいまですー。皆さん、残念ながら水はありませんでした。」
「そうですかまあ仕方ありませんね。とりあえず今ある水で凌ぎましょう。」
「あれ?他の皆さんは?」
辺りを見回してもグルーム以外誰もいなかった。
「ああ、あちらでマリシュンの作った土のドームの中で休んでいます。寝てしまったかもしれませんね。」
「そうですか……じゃあオルニアさんも休んで来てください。」
「いや、俺が見張りをやろう。お前が休んでこい。」
「いえ、僕はグルームさんに天神語を教えてもらいたいので見張りをやります。勉強がひと段落したら呼びに行きます。」
オルニアはしかめっ面をしたがわかったと言ってくれた。
たぶん俺のことを働きすぎだと思っているのだろう。
「では、天神語習得の続きをしましょう。」
「はい!よろしくお願いします!」
ーーー
「はい、じゃあ今日はこの辺で終わりにしましょうかね。」
「ふぅ……やっと終わったー。いやー難しいですね天神語は。」
「そう言いつつも上達してるシルバーさんはすごいですよ。」
「そういえばグルームさんは何言語話せるんですか?」
「そうですねぇ……しっかり話せるとしたら人神語、天神語、魔神語、悪神語くらいですね。」
すげえ! そんなに話せるのか……
まぁ王子様の家庭教師もやってるってことはそれくらい話せて当然なのか……?
「それにしてもシルバーさんを見ているとインペルド様の小さい頃を思い出しますね。」
俺らそんなに似てないけどなぁ……
「どこが似てるんですか?」
「いえ、昔はインペルド様も勉強熱心だったんですけどね……」
気のせいだろうか、グルームが少し暗い顔をした。
「だったんですけど……ってどういうことですか?」
「そうですねぇ……まぁ、シルバー様になら言ってもいいかもしれませんね。」
なんだろう……そんなに暗い話なのだろうか。
「私はインペルド様がちょうどシルバーさんと同じ歳の6歳の頃に執事兼、家庭教師として配属晴れました。その頃は彼も勉強熱心だったんですけどね……」
なにがあったんだろうか……
「なにがあったんですか……?」
「インペルド様が10歳になった時、彼のお父様、アルガルベ・モール・ミハイリル様に言われてしまったんです……
『お前はもういらない、国王になれると思って今までやって来たんだろうが、お前などに国を任せられぬ』と……」
実の父親にか……それは酷いな、俺でも耐えきれない。
「元々ミハイリル王国は長男に国を継がせるのではなく、能力によって兄弟の中から選ばれる風習がありました。しかし、インペルド様は正妻の子ではありませんでした。だから選ばれなかったのです。」
なるほど、インペルドにも国王になれるチャンスはあったわけなんだな。
だけど、正妻の子ではないという理由から国王にならないと言われた。
「私はそこで終わったと思いました。私は国王の執事になれるとばかり思って今までインペルド様を育てて来ました。」
なるほどなぁ……酷い話だが、わからなくもない。
「しかしインペルド様は私の汚い心を見透かしたように言って来たんです。
『お前は俺に期待していたのだろうが、期待を裏切ってしまってすまん。しかし、必ず王になってみせよう。』」
インペルド、かっこいいぜ!
「今この国は王のせいでアノラ王国と比べて衰退しています。ですから誰かが国を変えなければならないんです。」
「でも、国王にはなれないんですよね?」
そこでグルームの目つきが変わった。
「我々が国を取れるには一つしかありません。」
ん? いや、まさか……な。
「我々は国王が変わり、戦力をつけたのち、国王を殺します。つまり……クーデターです。」




