第30話 オルニアとシルバー
三階層目になると、魔物が増えてきた。
「う、うわぁぁぁー!」
「サミュエルさん!危ない!グルームさん援護を!」
「わかりました!」
「オラァ!『火炎爆風』!」
魔物を爆炎が包む。
ふぅ……一件落着だな。
「グルームさん、ちょっと来てください。この魔物、見たことありますか?」
「いえ、ありませんねぇ。ひょっとすると迷宮特有の生物かもしれませんね。」
「なるほど……」
迷宮特有の生物か……
しかし、これはめんどくさいことになったなぁ……
誰かしらが知っている生物だと倒しやすいんだがな。
「なぁ、シルバーもう一日中動きっぱなしだ。そろそろ休憩してもいいんじゃないか?」
「ええ、それもそうですね。じゃあ僕は飲み水を探してくるのでみなさんは休憩していてください。」
「まて、シルバー。1人で行動するのは危険だ。俺が付いて行こう。」
「あ、ありがとうございますオルニアさん。」
ーーー
みんなと別れて水を探し始めて20分はたっただろうか……
未だに飲めそうな水はおろか水すら見つかってない。
「オルニアさん、この階には飲み水はなさそうですね。一旦帰りましょう。」
「ああ。」
オルニアはいつも通り何も喋らない。
ここは一か八か話しかけてみるか!
「オルニアさーん何か話してくださいよー。」
「え!?ああ、すまん気を遣わせてしまって。何か話したいことでもあるのか?」
あ、さてはこの人コミュ障だな!?
まぁでも前世でコミュ障だった俺が人のことは言えないが……
「いえ、オルニアさんはこの迷宮攻略したらどうするんですか?一説によれば多額の富を得られるとか言われてますが……」
「俺はインペルド様に奴隷から救っていただいた。だから俺は一生あの人について行くつもりだ。」
「そうですか……」
なんだ、辞めるのかと思ったが違うのか。
「お前はどうするんだ?」
「僕ですか!?僕は特に決めていませんね。家族といれればそれでいっかなってかんじです。」
「そうか……まぁ聞き流す程度で聞いてくれて構わないが。ミハイリル王国の隣の国、アノラ王国があってな。その首都セマリアにはアノラ王国王立学校というところがある。そこでは高度な魔術や剣術その他色々なことが学べる。行ってみるのもありかもしれないな。」
「なるほど……アノラ王国……ですか?」
「なんだ?嫌なのか?お前でも嫌なことがあるんだな。」
「いえ、嫌とかそうではなくてですね。ミハイリル王国にはないのかと思いまして。」
「ああ、ミハイリル王国には王立学校はないんだ。それに今人大陸で最も大きい国がアノラ王国だ。そこの王立学校を卒業したとなればどこに行ったって良い待遇がされるだろう。」
なるほど……今より高度な魔術に剣術その他のことも色々学べるのは嬉しいな。
「それは良いですね。是非とも行ってみたいものです。」
するとオルニアに頭を撫でられた。
兄という存在がいた訳ではないが、兄がいたらこんな感じなのだろうとオルニアと接してると思う時がある。
俺もこんな感じの兄になりたいな。
ボソボソっとオルニアが呟いた。
「お前は俺の弟みたいなもんだ。俺と同じ人生は歩んで欲しくない……」
「ん?なんですか?」
「いや、なんでもない独り言だ。さぁ、先を急ごう。」
「そうですね。」
ーーーオルニア視点ーーー
奴隷であった俺はミハイリル王国第七王子インペルド様に奴隷から救っていただいた。
奴隷だった頃はいつもいろんな奴にバカにされていた。
何処へも行けない。
しかし一度だけ奴隷の檻から逃げ出したことがあった。
外の空気は格別だった。
俺はその時だけ一瞬だったが自由になれたのだ。
しかしそんな自由もつかの間、すぐに奴隷商人たちが追ってきた。
捕まった……
捕まってしまったら罰が待っていた。
痛い……痛い……
それからというもの、俺は生きる道を失った。
ある日奴隷商人の1人が言った……
「お前、前に脱走したみてぇじゃねえか!
ヒャッハッハ!笑えるぜ!お前の頰にある奴隷の印が消えない限り永遠にお前は奴隷なのによ!」
そうか……この印か……
その印は自分の両親がつけたものだった。
俺は……親に捨てられたのか……
そして俺はまた、絶望した。
だがそんなある日奴隷市場にインペルド様がやってきた。
しかし当時の俺はどうでもよかった。
奴隷から解放されるなんて思ってもいなかったからだ。
しかしどういうことだろうか。
インペルド様は俺の檻に一直線に向かって来たのだ。
「おい、お前、名前は?」
「ーーーー・ーーー」
最低な親につけられた名前など名乗りたくもなかった。
「よし、決めた。こいつを買う。」
そして俺は買われた。
「今日から俺がお前のご主人様だ!そしてお前は今日から自由だ。」
「じ……ゆう……だと?」
始めは言ってる意味がわからなかった。
すると頰の奴隷の印が消えたのだ。
「お前は今日からオルニア・ノームトルだ!そしてお前は俺の配下になれ!」
インペルド様は俺に自由を与えてくれたのだ。
そして今、インペルド様と一緒に迷宮に入っている。
仲間と新たな仲間シルバー・ヴォルクと。
シルバーは賢い。
とても6歳とは思えないほどだ。
しかしそれ故に、少し考えずに行動してしまうことがあるようだ。
あいつは俺を慕ってくれている。
俺もあいつを弟のように思っている。
だからこそあいつにはいろんなことを知って欲しいと思っている。




