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第007話 『そして俺は…料理人かよ!?』

また一月ほど空いてしまった…書いてる時間自体は大したこと無いのに…(;一_一)

朝、目が醒めると皆は既に起きだしていた。

まぁ俺が一番最後に寝てたのでそうなるのも当たり前だろうけどね。


なんだか目が覚めた時から頭がすっとしない…と言うかムカムカすると言うか、イラついてる感じがする…なんなんだろうな?コレ…

なんか変な夢でも見てたんだろうか?…可能性はありそうだ…が、目覚めたと同時に忘れてしまっている様なのでどうにも出来ない。

こういう時には顔でも洗って…む?よく考えると昨日から水を飲んでない…顔も洗いたいし喉が渇いたので水が無いかとミィーナァにジェスチャーで聞いてみる事にする。


ジェスチャーと言うかほとんどパントマイムである。

両手で水をすくう様な仕草をして、そのままングッングッ!っと水を飲んだ様な動きをしてみせる。

するとやはり察しの良いミィーナァは近くに居た集落の人間に聞いて、俺にコッチだと言う感じで手を振り集落の外れまで連れてきてくれた。



其処は森の中の泉だった、大きさは10m程の円形、驚くほど澄んだ不思議な青い色をした泉で、湧き出す水量が多いのか、その一部から小川として流れ出ていた。

ミィーナァが先に水手で掬い、匂いを嗅いだ後に飲んでみせて安全である事を伝えてくる。


ホント、言葉は通じてないけど、そこそこコミュニケーションがとれるのは助かる。

とは言え細かい事についてはやはり言葉が通じないと無理なので『勇者』について聞きたい事、薫子について聞きたいことなど色々ある聞きたい内容についての疑問は先送りになるんだけどね。



泉に手を突っ込んで水を掬い上げる…外気温は20度ちょっとと言ったところだが水温はかなり冷たく気持ちがいい。

そのまま掬い上げた水を飲んでみると乾いた体に染みこんでいくような心地よさ…しかも水のはずなのに微かに甘い香りがする気がする…不思議だけど美味しい水だった。


もう一度手を突っ込んで今度は顔に思いっきり水を叩きつけて顔を洗う。昨日は熊モドキとのバトルなど色々有ったので埃っぽくなっていたので出来れば石鹸が欲しかったが…

ミィーナァ達を視る限り…そういうものを使う文化レベルに無いようである…ホント獣と人間の中間ぐらいと言うか、食事の後に歯を磨くこともしてないようだしな…

む?…歯磨き…


そういえば昔の日本では房楊枝と言うモノを使っていたそうだが…柳が無ければ作れないよな…

なんかのTVで特殊な樹の枝を潰して繊維を残したモノで歯を磨いていたのを見た事があるが房楊枝も殆どそれと似たような物のはず…

結局は繊維が豊富な樹の枝なら何でも出来るんだろうか?試してみるかな?



近場にある樹の枝をナイフで切り落とし、その端を石で叩きつけて繊維をほぐす…んで…水の中でちと揉んでみるか…かなり硬いけどブラシっぽくはなったな…ちょっとやってみるか…

口に枝先のブラシ部分を突っ込んで磨いてみる…どうにも何時も使っている歯ブラシより硬いし、正面部分しか上手く磨けないのでかなり不便だ…歯茎も乱暴にやると傷つきそうで痛い…それでもまるっきり何もしないよりはマシ程度の感じにはなった。

今の枝だとちょっと固すぎる…他にも色々樹の種類は有るようだし、要研究だな…


横でミィーナァが歯磨きしてる姿を不思議そうに見てるが…まぁコレは教えようもないよな…


適当にブラッシングをした後うがいをして泉の外の地面に吐き出す、飲水になる所に吐き出すのはやっぱり気持ちのいいもんじゃないからね。


顔を洗っても拭くものがない…布が無いんだよな…トレーナーの内側で拭いとくか…いや、コレも昨日結構暴れたんだからかなり埃っぽくなってるはず…むぅ…何というか現代人の生活はココでは送れそうにもないな。




泉から戻りまたみんなの分の焚き火をして調理…周りに火のつけ方と焚き木について教える。


でも弓を使ったやり方は紐が無いと出来ないんだよな…革紐でもあればそれで使えるんだけど…無いものは仕方がない、棒を手で回す方式を教えるか。



弓を使わずに両手で棒を回転させ板にこすり付けるのを見せて、俺が苦労して焦げ臭くなるまで頑張ったが、手にマメ出来そうだったので近くに居た人にやらせてみたら簡単に火種が出来た…

弓でやるのよりは時間がかかってるけど全然平気そうだ…えぇ…俺、全然煙すら出なかったのに…煙出るまであっという間だったぞ…別の人にもやらせてみたけど、一番小柄なローミィですら殆ど変わらない時間で火種を付けれた…

手の大きさの問題じゃないのね…この場に一人だけ居る男が一番ひ弱って…泣ける。



ナイフがない(と言うか叩き切る様な武器しか無い)ので、俺が居ないと串焼きはチョット再現できない、仕方なく今度はマンモス肉的なぶつ切り肉の大きさで調理をする事に…

昨日渡された肉の塊の様な大きさのモノを太い生の枝に刺し、焚き火の脇にY字の太い枝を刺してその上にマンモス肉を渡して回しながらグリルする事に…『美味しく焼けました!』って感じの焼き方をしてみる。


本当ならこう言う塊の肉でも焼くときには筋切り…というよりも肉から筋を外してしまう物なんだが…そんな技術を俺は持ちあわせて居ないのでそのままだ…ミィーナァ達はみんな生で筋もしっかり噛み切ってた様だし平気だろう…俺は柔らかい所を頂くとしよう。



集落の人間やミィーナァ達がヨダレをダラダラ流しながら期待の目でこちらを見てくる中、他にも焚き火を用意させながらゆっくり火を通していく…ホントゲームの様にあんなに簡単に肉が焼けたら楽だろうなぁ…


ミィーナァに肉を回すのを指示して他の焚き火にも同じように調理法を教えていく。

ミィーナァに任せた最初の肉に火を通すのに30分ほど、火から下ろしてもう一個の肉を乗せ…火から下ろした肉にナイフを居れてミィーナァ達の人数分に切り分けてみる。

中心部まで暖かくなっているが火が通って硬くなるまでは行かないステーキで言うレアの半生状態、なかなかに上手く火を通す事が出来た…と思う。


薄く切った一枚を味見してみるが…やはり塩が無いので味的にはイマイチ味気ない…塩が無いなら森のなかをもっと詳しく散策してスパイスになるようなものとかも見つけたほうが良いだろうな。

とか思ってる間にミィーナァ達が肉を貪る様に食っている…喜んでくれているのだからまぁ良いか?


塩漬けとかできればベーコンもどきの保存食とかも作れたかも知れないのにな…


焼きあがった肉の塊を数人で貪る様に喰っている姿は流石にちょっと引く…口の周りを肉汁でベタベタにした皆は凄いいい笑顔だった…喜んでくれてるならいいか…まぁ口の周りは洗っておいて欲しいもんだが皆長い舌で口の周りをべろべろ舐めてそれで済ましてしまってる…


他の焚き火の様子も見て一時間ほど朝食に時間をかけ、その後火の始末をした…どうにも火に慣れていないようだからな…こんな凄い古代樹の森でヘタに山火事とか洒落にならんし後始末だけはしっかりとね!一応残ってた数人に教えておいた。




食事の後、集落の中をミィーナァ達を引き連れて見て回っていると、熊モドキの皮に何やらしている所に遭遇…皆で毛皮の肉の残ってる面を口に入れて…噛んでるのか?残った肉を歯で刮ぎ取ってるのか?…いや、マジで腹壊さないの?それ…


ああやって噛んだりする事で皮が硬くならないようにしてるんだろうか?…ついでに肉も食えるから一石二鳥なのかもなぁ。


ってか、気がついたら身体があちこち痒いんだが…あの敷物の毛皮ってこうやって作ってたんだったらノミとかダニとかどうしようもないよな…

虫をどうにかする方法…水で洗った所でそう簡単に居なくなるとも思えない…殺虫剤なんてのは有るはずもない…殺虫剤…そういえば燻煙殺虫剤ってあるよな…煙で(いぶ)すか?

確かタバコの煙で蚊を寄せ付けないようにするとかいう話もあったし、蜂とかを退治するときにも煙を使ってたりしたよな…ならやれるか?

あ、そうか、煙で燻せばどうせ高温になるんだからソレで虫なんかどっか行っちゃうよな!なら煙で燻すのはやってみよう。


とは言っても…洞窟の様な燃えない場所ならばそこで焚き火をして生木をくべれば煙は出るからそれで燻す事もできそうだが…こんな樹の中でソレは無理だよな…床には藁が敷き詰められてるし…



あれ?そう言えば燻煙鞣くんえんなめしと言う皮の鞣し方も有ったよな…あれって松葉でやるんだったかな?


まぁ無くても樹皮の煙で適当に燻せば鞣した事にはなるだろう…多分…


と、言うかここの人達みんな毛皮を羽織ってるだけだし…それを蔦で結わえてるだけ…本当原始人みたいだよな…火の使い方も知らなかったみたいだし…


煙を使った鞣し…試してみるかな?


皮の鞣しってのは確か金属の溶剤による鞣し、植物のタンニンによる鞣し、さっきのような噛んで鞣す方法、燻煙で鞣す方法などが在ったはず…タンニン鞣しは時間さえ有ればココでも出来ないことは無いはずだけど、二年も三年も待てないからなぁ…

簡易で出来るミョウバン水での鞣しってのも有るらしいけど…それこそミョウバンがないし、たしかソレにも塩を使うんだよな、やっぱり煙しかないかな。




まぁついでに薫製とかも作れないかなぁ…まだ肉がかなり余ってんだよねぇ…生肉が…


あの熊モドキの肉…集落の人の分も合わせてもまだ半分も減ってない…


この辺りの気温はそれ程寒くも無い…20度前後の気温の様だし、肉を包んでた葉に殺菌効果とかありそうな感じの葉だったからまだ保つのかも知れないけど…ヤワな都会人は速攻腹とか壊しそうだがらね…


薫製だと桜のチップとかが有名だけど…桜もこの森では見当たら無かった。


まぁ適当な樹で鞣しも燻しもイケる…としておこうか。



また焚き火の準備、素材集めを皆に手伝ってもらい試してみる事にした。


ミィーナァに毛皮の加工もやりたいとジェスチャーで伝えておく…まぁ完全には伝わってないようだけど、貸してくれみたいな感じで伝わったようだ。



焚き火の上に直接火が当たらない高さ…より高めの位置に1m四方の大きさの枠を組み、彼女らが肉を包んでいた葉を大量に並べる。

あの葉が保存性を高めると言う生活の知恵から使っていたものならば殺菌成分などが有るだろうし鞣すのには向いてるだろうと思ったからだ。

あとはこの上に肉の塊を置いて薫製にするのだ。


その外側に更に50cm高さに2m四方の枠を組んでその上に熊モドキの皮を毛の面を上にして掛ける、(やぐら)って感じだ。



熊モドキの皮は胴体部分だけの様だが、それでも3~4m四方のサイズがある…本当ならもっと大きいサイズで皮を取れたんだろうが…切れ味の良い刃物が無いなら仕方ないのかもしれないな。


皮に付いていた脂や肉片などはショートソードで刮ぎ取った、口でやるより早いし、コレは彼女達が背負っている様なゴツい武器でもやれそうだった。




枠に皮を載せた事で肉の辺りは煙で充満するし温度も上がるのだろう…後は煙を出しながら火を絶やさない事だな…


最初は肉も有ったので食い物に期待して周りをうろちょろしてる集落の人が大勢いたのだが、一時間しても食べない事に疑問を持ち、さらに一時間もしたら皆飽きたのか何処かに消えた…まぁ普段の生活に必要な事をして居るんだろう…多分。


ずっとこうやってると正直眠くなってくる…でも火を絶やすと燻製も出来ずにただ時間を無駄にしただけになる…

監視に来ている俺を睨んでる事の多いヤハトゥと単語だけの異界語レッスンをしながら時間を潰す事数時間…


肉は朝のマンモス肉っぽい調理のものとは違う風味の物に仕上がった。朝の肉はジューシーだったがコレは水分を飛ばしたこともありかなり外側はガッチガチである。でも保存性を考えたらこっちの方がいいよね?


最初睨みつけてきていたヤハトゥが不思議そうに肉を見ているのでナイフで出来たものの外側を薄切りにして渡してやる。

薄切りにしたことでケチられてるとでも思ったのだろう、ちょっと不服そうな感じで肉を受け取ったヤハトゥだったが、肉を口にしたところ驚いた様な表情でこちらを見返してきた。

昨日や今日の朝に食べた肉とまた違った食感や味に驚いている…薄いのに噛みごたえのある肉にガシガシと噛み付いている…他の人にも切り分けてやったが皆一様に噛み切りにくい肉と格闘している…

俺も食ってみるが…うん…スモーク臭がしっかりする肉だ…そして硬い…ジャーキー程…いやそれ以上に硬い…

日本で売ってるジャーキーって下処理でかなり柔らかくなるようにしてるからそんなに硬くないけど、本来はこんな感じのガッチガチなんだろうな…うん…

(魚のジャーキーっていうか鮭トバなんかはホントに木みたいにガッチガチだからな…あ、日干で作る物もジャーキーなんだから鮭トバはそのままジャーキーか!)

まるで靴底を噛んでるような気分だ…ん…でも時間をかけて噛み続けてれば一応は食えるかな?…保存性を高めたかったんだからコレでいいはずだ…失敗だったとは思いたくない。


あ、これ味付けしてから薄切りで燻製にしてたらスモークジャーキーと言えるものに成ってたな…ジャーキーにしたほうが水分を飛ばせるし保存性が良くなったよな?…ブロックで作ったのは間違いだったかも…むぅ…

む?味付けしてないジャーキー……………ペット用のジャーキーってこんな味なのかなぁ?



ちなみに塩を手に入れようとしなかったワケじゃないんだ…

朝、食事が終わった後にミィーナァにジェスチャーで『しょっぱい物』を聞いてみようと努力したんだけど…教えてもらえたのはメチャクチャ苦い実、酸っぱい実等であってしょっぱい物は知らない様だった…

そりゃ幾らジェスチャーで伝えようとしても『口に含んでインパクトのある物』としか認識しないよな…

塩…無いだろうなぁ…こんなメチャクチャ成長に時間の掛かってる樹が沢山ある森なんだもの、元々海だったとしても岩塩とかが採れる様な場所じゃないだろう。


塩の替わりにあの酸っぱい実を幾つか持ってきてある…外側の硬い部分には向かないけど、中の柔らかい所に果汁をかけて食べたらもうちょっといい味になるかもしれないな。


出来た燻製はあの生肉を包んであった葉っぱで包んで、辺りで見かけた細くて長い葉を組んで作ったカゴに実と一緒に入れておいた。



毛皮の方は…うん、燻された臭いが付いているが…虫さえ付かなきゃいいんだ!

やはり風変わりに仕上がった毛皮に周りの意見を聞きたかったが今はミィーナァしか居ない。

昨日はしつこく付き纏ってたヤハトゥはどうした!?…長時間の待ち時間に飽きて寝てるし…


肉が出来上がらないので集落のみんなは居なくなっちゃったしね…


数人で何日も皮をくちゃくちゃ噛んでたら肉も腐るし、こんな大型の毛皮は彼女らには作れなかったろう事を思えば…うん多分驚いてくれるはずさ!



横でミィーナァはまだ肉にかじりついてガジガジやりながらこっちを見てるけど…驚いてる風ではない…やっぱり毛皮とかどうでも良いのか?肉か?肉なのか?俺の存在意義は料理でしか無いのか??



目でミィーナァを責める様に見つめると


『アッガィイ、グッタァ!』


ミィーナァが『美味い』と『変わってる』に当たる単語で俺に肉の感想を伝えてくる。

うん、そういう事はしっかり伝わってるよ?表情だけでもね、めっちゃいい笑顔してるもんな…

勇者とか呼ばれてたはずなのに…やはり俺の存在意義は料理人な様である。


こう言う感想は聞けても、俺が一番聞きたい『勇者について』も『薫子について』もまだ全然話で来てないんだよね…

俺がミィーナァ達と思い通りに会話出来るようになるのはまだまだ先の事のようである…


食事の感想以外はね…だって彼女らどうやら『美味い』と『不味い』ぐらいしか単語知らないみたいなんだもの…そりゃ顔見たら一発で判るよ…



それでも彼女らと同じものを食えない以上は自分で調理しないと行けないんだからサバイバルだと思えばいいか…

俺は料理人じゃない、コレは一応サバイバルなんだ!!

サバイバルなら食料の確保は大問題だ!うん!!だから俺は間違っちゃいない!

そう思って割り切ろうと思うんだが…やっぱり思っちゃうんだよねぇ…


はぁ……ほんとどうしてこうなった。

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