第002話 『そして俺は・・・歩き出す』
なんだかんだでコミケの準備やらで忙しくなってます…いや、小説関係ないジャンルなんだがねw
ホントは昨日UPするつもりで居たのにすっかり忘れてた(;´∀`)
いくら叫んでもあの世界の最後に聞いた天の声の返答は無い…
目の前、今いる山の麓には広大な大森林…どう見渡しても街などはどこにも見当たらない…
これだけの樹が生い茂っている世界ならば昔見た3Dハリウッド映画のように樹自体を家とした街などが在ってもおかしくはないだろう。
『少なくともこの施設と武器、日本語を書いて残した奴が居たのは間違いないんだ…人が居たのは間違いない』
あのメモには『召喚』とあった…召喚…つまり俺を呼び出したと言うなら少なくとも『呼び出したヤツ』も居るはずだ。
人を探してこの世界の事を知らないといけない…本当にこの世界に薫子が居るのか…それを調べないといけない!
あの天の声が俺の幻聴だったのか…幻聴じゃなかったら俺がこの姿のままこんな世界に辿り着いた意味が判らない!
薫子を探す…そのためにはまずはココを出て人を探さないといけないのだが…これだけの森林なら人よりも先に動物に遭遇するはずだ。
それがウサギやキツネ程度の動物なら良いがイノシシや熊、ソレよりも大きな猛獣だって居る可能性はある。
そう、さっきのメモには『生き抜け』と書いてあったのだ…つまり…
『俺の存在を脅かす敵は存在してるって事だよなぁ…』
さっきの空に浮いてた謎の飛行物体…というか飛行生物も全体像が霞んで見えない程度の遠距離であのシルエット…
少なくとも数十メートル程度の大きさは有るはずだ…いや、もっとか?
地上から見上げたジャンボジェットの高度より間違いなく遠い距離でジャンボジェットよりも遥かに存在感があったぞ…それ百メートルどころじゃない大きさってことだろ!?…肉食でない事を祈るしかないな…そんなデッカイ奴がこの森林まで餌を求めて突っ込んで…来ないよな?
そんな巨体なら人間程度のちっぽけな餌を求めたりしないよな?もっと大型のもっと目立つ大型動物を狙うよな?…イキナリそんなのに食らいつかれたら何も判らないままにまたデッドエンドだ…それは流石に嫌だ。
現状、自分の味方になってくれる人間は一人として居ないのに、どうしてか生存を脅かす敵の存在は判るとか…ホント嫌になるな…
ため息をつき、振り返ってさっきの武器の並んでいた所にもどる。
猛獣が出てきた時に牽制出来るようなものを考えてみる…武器があるから猛獣だって簡単に倒せる?…絶対にそんなはずは無い。
ソレこそハンティング用のライフル等があるなら話は別だろう。
初速が音速を超え一点に集中される馬鹿げた貫通力…それが引き金を引くだけで誰でもソレを発揮できるのだからホント凄い発明だよ、銃ってのは。
どんな大型の熊だってライフルで眉間を撃ち抜けば一撃必倒…ソレこそTレックスの様な十メートルを越えるようなバケモノが現れなければ十分に戦える武器だろう。
そんな馬鹿げた大きさの恐竜が出てきたって対戦車ライフル等の軍が使うような兵器を使えば対抗できてしまうのだろう…
銃は銃口を相手に向かって構えて撃つだけ…誰でも出来る、ソレこそアメリカだったら五歳児でも銃を親からプレゼントされるという話だしその為のカラフルなプラスチック製のライフルまで有るというからホントあっちは商魂逞しい、そんな子供用ライフルでも殺傷性は十二分にあるというから驚きだ…つまり肉体的なレベル関係なく誰でも使える凄い武器ってことだ。
だが今俺の目の前にある武器は…飛び道具では弓しか無い。
この弓は弓道で使うような弓ではなく何故か全体が金属で出来ている、弦の部分までが金属のワイヤーのようなもので出来てるいるのだ、セットのとして使う矢筒に入っているの矢も同じように全体が金属で出来た矢だ。
確かに技術のあるものが放てば鎧を容易く貫通する能力があるんだろうし、狩人ならば鹿等を仕留めることも出来るだろうが…その技術が俺にはない。
その時点で間違いなく弓は排除、使えない道具を持ち歩くとか今の現状ではありえない。
この付近の安全を確認できた後に練習して使えるようになってからならばソレもありえるだろうけど、今持っていくのは無しだ。
ある程度の距離…相手の攻撃を食らわないでこちらが攻撃を当てる事を考えると…槍が一番良いはずだ。
空手家に対して剣道三倍段なんて言うが、その剣道も槍や薙刀の間合いでは分が悪いと言うからな…長い武器を使えばより有利に戦えると言う事だろう…だが…
ここに立てかけられている槍を持ってみる…長さは2.5mほど、映画で見た古代の戦争の槍はコレより余程長かったことを考えると槍としてはそんなに長い部類には入らないんだろうけど…コレは全体が金属製である。
直径3cm程の竿にそのままショートソードが付いてるようなデザイン…強力な武器なんだろうけど…試しに構えてみると穂先が尋常じゃなく重い…と言うより全体が重い。
どのぐらい重いか…直径3cmの鉄の棒って完全にバーベルのシャフトだぞ?バーベルのシャフトは180cmで約10kg…この槍では更に60センチ程柄が長く、その先にショートソードみたいな大きさの刃が付いてるんだぜ?
全体的な重量は…15kgぐらいだろうか…ありえないだろこの槍…どんなマッチョが使うんだよ!一応俺も鍛えてるから持つだけは平気で持てるけど、コレを振り回して武器にするとか絶対にありえないだろ!
振っても思った通りに動かすことも出来ない…機敏な野生動物にコレで攻撃を当てられるとは絶対に思えない。
ソレにこんな重いものを持ってたらちょっと歩いただけでも十分疲れるぞ…それこそ猛獣に襲われたら対応する前に疲れた俺が攻撃食らってそのまま噛み殺されるだろ…
せめて日本の槍みたいな木製の柄に細長い刃が付いてる物なら大した重さもないだろうし取り回しもこんなものより数段楽だろうに…っていうかコレ…完全に嫌がらせだよな!?
『他にある長物がコレしか無いって…』
ポールアックス…竿の先にデッカイ斧が付いてる…コレ…持ち上げるだけで重労働どころの話じゃないぞ?しかも柄の太さもさっきの槍より二回り程太いとか…
横にあるデッカイ斧も同じだけの刃がついてるけど…これだけで人一人分以上の重さが有るぞ…無理すれば持てない訳じゃないけど…どうやってコレを振り回すんだよ!
それ以前にコレを持って移動するとかどんな苦行だよ!?
『ってか、こんな武器を用意されたって事は…召喚された勇者とやらはこんな無茶な武器を平気で使える化け物しか来ないのが通常なのかよ?じゃあ俺メチャクチャヘナチョコじゃねぇか…』
コレでも一般人とは比べ物にならないスペックの肉体だと言えるハズの体を持ってるのにソレが無意味って…
こんなとんでも無い武器、あの世界のトップのボディビルダーでも裸足で逃げ出すような『体に悪いと判っててステロイドを異常使用してますが何か?』的なマジで人間の規格から外れた化け物じゃないと使えないだろ…このポールアックスを振り回そうとしたらどう考えても自分の方が振り回されるぞ。
『無用の長物』って言うけど、ホントこれらはソレだ…
飛び道具は使えない、長物も使えない…他に扱えそうなのは…拳に付ける爪…
いや、無いわ、それこそ間合いが長いほうが有利なのにわざわざ獣と同じような間合いの短い武器使うとか…
某有名RPGでも爪は拳法家の武器だろ?鍛えてても別に拳法とかやってる訳じゃないからな、こんなのは使おうと思っても使えんわ。
『やっぱり…普通に剣を使うしか無いか』
ココにある剣は二本、短めのショートソードとか言われそうな物とあからさまに幅が広く重そうなブロードソード…と言うかどう考えてもそのレベルじゃないよな?斬馬刀か?馬ってかRPGに出てくる竜でも相手に出来そうだ…どう見ても重さでたたっ斬るって感じの武器だ。
試しに持ち上げてみるが20kgは軽くあるだろ…こんなの振ったら腰が壊れるわ!ホントこのレベルだと完全にゲーム武器だとしか思えない…コレも斧も大して違いがねぇよ!!常人以上に鍛えてる俺でも使えねとかマジで無いわ!!
となればやはりショートソード…形としては片手でしか持てない様な短い持ち手に50cm程の両刃が真っ直ぐ伸びて先の方で細くなる…刃で斬ったり先で突いたり出来る形の剣だ。
昔の映画で古代ローマの剣闘士が使ってたような剣…グラディウスとか言ったっけか?試しに持ってみると…コレは全然重くない、精々2、3kgってところか…コレならどうにか扱えそうだ!
『ふ~ん……フッ!!』
ちょっと振ってみる…フュン!っという小気味いい風切り音がする…
試しに型も判らないので適当に色々連続して振ってみるが体に無理がかかってる感じもしないでそれなりの速度で振り続けられそうだ。
この程度の重さなら武器に振り回されることもないしセントバーナード位の大きさの獣ならどうにか撃退できるんじゃないだろうか?
コレとセットになっていた鞘には細くて短い鎖が付いている…コレをベルトに結べば腰に下げられるな…ちょっとベルトをゆるめて其処に鞘を結びつける…剣を鞘に挿してみて具合を確かめてみるが大した問題は無さそうだ。
『この剣なら出来れば盾も欲しいところだよな…後は鎧とか有ればよかったんだろうけど…』
昔見た映画ではこの剣と丸い盾をセットで使っていた。盾で攻撃を受けて剣で突き刺す!
確かすごい大きな虎とかも相手に戦っていたはずだからそのセットが有ればかなり優位に戦えるはずなんだが…武器しか辺りには見当たらないのでは仕方がない。
他にも色々見当たるんだが…どう見ても何かの武器ではなくパーツでしか無い…
今ココに残ってる武器やパーツは…全部金属製…って事はまさか腐り落ちて風化したとか?
ん?木とか革とか風化するのにどれだけの年月が必要なんだ?少なくとも10年20年じゃ風化なんかしないだろ…
『この武器…一体何年ココに置いてあったんだよ!?』
大体建物の中にあったんだ…それでも風化?えっと…風がなくても風化するのか…?ココは風も水も光すらもなかった場所だったんだぞ?
エジブトの遺跡の中で木の船とか見つかってるんだから建物の中にあったなら数千年とか風化しないものなんじゃないのか?
俺が住んでた世界では知らない何かがこの世界にはあるのか?…まぁそれでもおかしくはないだろうな、あんな訳の判らないものが空を飛んでたり浮いてたりする世界だ。
どうやら食料や水もココには無い様だし、夜はここを拠点として使用するにしても食料と水の確保だけはしなければ数日の内に餓死…しなくても体のスペックが落ちて辺りを探索してる内に獣に狩られて死ぬのがオチだ。
辺りは森林なんだ、水分と栄養を補給できるような果実類は多分あるだろうし、水は蔦なんかが有ればソレを斬れば飲める水が手に入るはずだ。
そうだ、別に獣を狩らなくても良いんだから、見つからないように果物を採集する!今の目標はソレで行こう!
下の森林に行って果実と水をどうにかする!
それだけならどうにか出来そうな気がしてきた!
今俺の居るのは草木も生えない岩だらけの山の洞窟、そこから急激な坂を下って行った数百メートル先に森林がある。
そして…見渡せる範囲には空の化け物を除けば何らかの獣は見当たらない。
登って戻ってくる時には多少時間がかかるかもしれないけど、俺の存在を脅かす物が見当たらないこのルートをちょっと行って帰ってくるだけだ。
『イケるさ!そんぐらい余裕だろ!余裕だよな?…余裕…かな?』
正直一人で異世界…しかも生命の危機も確実にある…思いっきり不安で何時もよりも多い独り言で誤魔化そうとしてるんだが…ごまかせるもんじゃ無いよな。
『よし!行く!!!行ってやんぞぉ~!!』
そうだ今一歩を踏み出さなきゃ薫子がこの世界に居たとしても判らないままココで餓死だ。
なら何が何でもここから出て行って人を探す!薫子を探す!ソレをしなきゃこの世界に来た意味が無い。
無茶な世界だろうがなんだろうが行ってやるさ!俺は薫子を取り戻すんだ!!
『そりゃああああああ!!!』
俺は気合一発!洞窟を一気に駈け出した!
『グオオオオオオォォッ!!!!』
下り坂に駈け出した途端に真後ろから大気を劈くとんでも無いボリュウムの音が!?
なんだ?!と思い、下り坂を駆け下りながら後ろを振り向くと…其処には先ほど俺が出てきた洞窟の穴の上に熊の様な巨大な獣が大きな口を開けて吠えている姿があった!
『ちょ!?なんだそりゃあぁ~~~っ!!!』
洞窟の入口よりデカイ!なんてバケモノが居やがるんだよ!?この世界に辿り着き、第一歩…ってこの時点で既に日本では絶対に出会わないバケモノだろ!?
あれか?コレは俺の独り言を聞きつけてシメシメと餌が出てくるのを待ってたって訳ですか!?
まだ洞窟から10mほどしか離れていない…洞窟に戻ってあの奥の壁の辺りまでいけばこのバケモノをどうにか出来ると思う…のだが…
『止まんねぇ~!!!』
一旦駈け出してしまったこの下り坂が思った以上に急で止まろうにも止まれない!この坂じゃ洞窟に戻ろうにもそう簡単には戻れそうにない!
コレは…何が何でも森林まで追いつかれないように全速力で走り森のなかに隠れるしかねぇ!!…っていうか隠れる場所があるか判らんが…それでも止まれないなら其処まで走るしかねぇ!!
『くっそおぉ~~~死んで堪るかぁ~~!!!』
こうして俺は…新しい世界での第一歩を踏み出したのであった…死ななければ二歩目も踏めるけど…コレ…二歩目踏めるのかぁ?