正夢
その日もまた案の定、電車は遅れてきた
会議の時間になりひと通り書類に目を通すがこのプロジェクトに私はほとんど関与しておらず、内容がほとんど分からない
各々真剣な表情と姿勢である空気に負けわたしもまた眉間にシワを寄せてはみるが、とくに意味もなくシワを寄せている事がきっと皆にはバレているだろう
そうなると私は肩身が狭い
昼食の時間、今日も1人で屋上のベンチに座りハムサンドとコーヒーを並べる
すると昨日の男が隣に座った
「昨日はありがとうございました」
恥ずかしそうに男は私に昨日の礼を言うと、封筒を強引に手渡し足早に立ち去った
封筒の中には1万円のギフト券が10枚入っていた
返そうか迷ったが受け取ることにした
正夢とはこの事か
私はこのギフト券を娘の部屋のドアにテープで貼り付け、『おこづかい』と付箋をした
律子がいない今
私が年頃の娘にしてやれることは少ない
その夜私はまた夢を見た
「やった、やったぞ!」
カランコロ〜ン!
「おめでとうございます!!」
目の前には景品表がある
1等(虹) 万能券 × 10枚
2等(金) 体感券 × 3枚
3等(銀) 神力券 (1日体験) × 1枚
景品表を見て私のガッツポーズと笑顔は一気に崩れ去った
娘にハワイ旅行でもプレゼントしてやれると思ったのだが、一体こりゃ何なんだ
しかも金色が出たというのに2等ではないか
私は誰が見ても悲しそうな顔をしていたに違いない
「お兄さんやりましたね!体感券ですよ!これは本来特賞の物ですが、枚数の関係で2等になっています。効力は他のものに肩を並べます、いえそれ以上です!えーっと、こちらの箱が商品になります、おめでとうございます!」
そうして私は夢の中で体感券の入った箱を受け取った
「良ければこちらへどうぞ」
言われるがまま福引き会場であるテントの少し横に案内された
他の商品のことも少し気になったが、欲をかくとせっかくの当選まで失うことになりかねないと思い直した。
価値は分からないがそれを手に取り、ひとまず人生初の当選を喜ぶことにした