ぬか喜び
夢の中で私は、見知らぬ道路を歩いていた
ふと前を見ると少し膨らんだ封筒が落ちている
私は辺りを見渡すとそれを拾いあげ、恥ずかしながら心踊らせた
封筒の中を覗き込んでみると、幸か不幸かそれは現金ではなく、取り出してみると10枚1束の福引き券であった
「残念でした、またどうぞ」
声がするほうを見ると、コンビニで見かけた若者が福引きを終え、立ち去るのが見えた
「お兄さん、福引き券をお持ちですね。こちらへどうぞ」
お兄さんとは私のことだろうか、いやきっとそうだろう
どうせ当たるわけがない、不思議と今回はそんな気はしなかった
福引き券を目の前の人に渡すと、商品が何かも分からないままに私はガラガラを回した
何回まわしたのかは定かではないが、気が付くとそこには白い玉がいくつか落ちていて、数えると9つであった
立ち去ろうとする私にその人は声をかけた
「お兄さん、あと一回引けますよ」
「いや、もういいですよ」
苦笑いでそう答える私にその人は不思議なことを言ったのを覚えている
「どうせ夢なんですからもう少し夢を持ってくださいよ」
それもそうだな、と思いもう一度ガラガラに手をかけた
カコン という音と共に、なんと、そこには、金の玉が転がっていたのだ
年甲斐もなく私は
「やった、やったぞ!」
と声をもらした
そこで目が覚めた
私が右手で小さくガッツポーズとっていることに気がついたのは、しばらく呆然と時間を過ごした後のことだった
気づくとまた深いため息をひとつこぼし、私は会社に行く支度を始めるのであった