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買い物

ロウとレイが靴屋を後にした頃。

ヒナとサラはランチを終え、街でショッピングを楽しんでいた。


「さーて!せっかくだから自分のモノも買わないとねっ!」


サラはうーんと伸びをして、ヒナを振り返ってニッコリと言った。

「その1。ヒナちゃんの服!好きなの選んでよ。その2。私のアクセサリー、一緒に見てよね!

その3。美味しいコーヒーの豆、この街じゃ『ビリー珈琲店』が有名よっ!ちょっと歩くけどついて来て!

その4。それまでに見かけたお店で、日用品と夕飯の食材を確保する。分かった!?」


一気に言われてヒナは圧倒されている。

よく分からないけど……ついて行けばなんとかなるのだろう。


無言でコクコクと返事をすると

それを見たサラも満足そうにウンウンと頷いた。


「じゃ、行くわよっ!」


この人、見た目も派手だと思ったけど、性格も派手そう……

全体的にまぶしい。


ヒナはひたすら引っ張られて行くだけだ。


でも。

ーーーーーーーー羨ましいーーーーーーーーーーー


こうして強引に人を引っ張るところも。

計画性のあるところも。

そして、ちゃんとヒナの事も考えてくれているところも。


巻き込まれるのも、嫌じゃない。


ヒナは手を引かれるのも嬉しかった。



いつも会社で上司の顔色を伺っている自分。

両親の事もそうだった。

自分であれこれ発言はせず、ただ、『離れたい』と思った。

今思えば……両親に心配させまいとして、顔色を伺っていた事もある。


友達との会話でさえ、空気を読まないといけない気がして

気を使って聞いている事が多かった。

流行のファッション、メイク、音楽……

自分の好みを通す訳でもなく、ただ周りに合わせていた。


だから。今デザイナーとして

周りの流行を早く感知できるんだと思うと皮肉だな、と笑ってしまう。


もう、自分が『好き』というモノが分からない。

流行ってるか、そうでないか。

不特定多数の人間に指示されているのかどうか。

そんな事ばかり考えるようになってしまった。


だから。

自分の立ち位置が分からなくなる事がある。

私って何だろう?と。



サラはそんな私を、その場から連れ去ってくれるようだ。

『こっちだよ』と。


サラの隣は、とても居心地がいい。

それが嬉しい。


会ったばかりだというのに、気を使われないところも有り難い。

自分はどうしても身構えてしまう。

サラはそんな自分を強引に柔らかくしてくれる。


だから。

ちょっとずつ言ってみたくなるんだ。





「……あの……」


ずるずると引きずられながら、ヒナは話しかけた。


「なに?」

サラは歩みを止めない。


「……ありがとう……こうやって連れ出してくれるの、すごい嬉しい…かも」


知らない街を、1人で歩く事は

ヒナにとっては不可能だ。

臆病すぎて動きだせない。


失敗が怖いから。



サラは振り返り、また綺麗な笑顔で頷いた。

「よかった!喜んでもらえたなら嬉しいわ。さっヒナちゃん好きな服選ぶわよ!」


そう言って入ったのは。

可愛い洋服とアクセサリーが並ぶ洋品店。

この街にふさわしく、アンティーク調の品揃えだ。

ヒナの好みにクリーンヒットだ。


「……わぁ。」

ヒナは次々とハンガーにかけてある服を見る。

どれも可愛い。

胸がキュンキュンする。


ちょっと懐かしいと思った。

この感動。



サラはそんなヒナの様子を確認して

「私はアクセを選ぶわっ。ヒナちゃん服決まったら一緒に見てね!」

と、店の奥へ歩いていった。


うんうん、絶対一緒に見る!

だってこんな楽しい事、久しぶりだもん!



懐かしい感情がこみ上げる。

友達と何気ないショッピング。

あれが可愛いこれがいいと楽しんだ時間。


仕事三昧になってから、ほとんどなかった時間だ。




ヒナはひとつひとつ、丁寧に選んでいく。

その中で、ひときわ気になる服があった。


モスグリーンに、クリーム色のドットがランダムにあしらわれたノースリーブワンピース。

レトロな感じだけど、ラインは今の流行と同じ。


ヒナは迷う事なくそれを手に取った。

他の服も丁寧に見ていくが、これに勝るモノはなかった。



気に入った一着を持って、サラの所へ行く。


「あら、もう決まったの!?ヒナちゃん選ぶの早いー」

サラはヒナを見て驚く。


そして。

「一着だと足りないわよっ!レディーは毎日同じ格好できないじゃない。あと3着は選んでよ」

と付け加える。


「えぇ!?」

ヒナは仰天する。


だっていつも買物ってサイフの都合で1〜2着しか買えないんだもん……

と、考えてハッとする。


「サラさん、私お金ないし…」


ヒナは焦った。

そういや何も持ってない。

突然この世界にきて。なんとなくされるがままに付いて来ただけだ。


この国の通貨は何だろう?

カード……なんてないだろうしね。


街の雰囲気からしてそう察する。

そんな心配をよそに、サラは手を振って応える。

「気にしないの!私持ってるから。」


持ってるって……いくら?

「でも…」


尻込みするヒナを見て、その背中をバンバンと叩きながらサラは言う。

「気にしない!だってここは元の世界とは違うし。夢だと思ってればいいわ。」


そう言われればそんな気もするけど……

いや違うでしょ!それじゃイカンでしょ!


と、言えずに焦るヒナだった。


サラは気にしない。

「マジメねーヒナちゃん。私からのプレゼントだと思ってよ。それか…気になるなら、元の世界に戻れたら返してもらうとか?」

悪戯っぽくクスリと笑って、ヒナの背中を押した。



そうね、元の世界に戻れたら……

ヒナはそう思う事にして、サラに甘える事にした。


分からない時は素直に従ったほうが良い。


この世界に迷い込んで

何となく、そう学んだからだ。



その後も服とにらめっこする事数十分。

ようやく選んでサラの元に戻る。


「わーこれ可愛い!ヒナちゃんセンスある〜」

サラは楽しそうにヒナの選んだ服を見る。


センスを認められて、女子として・デザイナーとして

これほど嬉しい事はない。


「ありがとう」

素直に感謝してみた。


サラはうんうんと喜んで。

「さっ!私のアクセも一緒に見て!!今この3つで迷ってるの…」


「3つとも買ったら?」

ヒナ思わず言ってしまった。


先ほどサラに言われた事と同じような流れだ。

その事に気付いたのか、サラはプッと吹き出し。


「そうね。3つとも買っちゃう!」



そういってヒナの服も一緒にかかえ、レジへ向かった。





洋品店から出ると。サラが話してくれた。

「服もそうだけどアクセは特にね、『相性』があるの。自分がコレ!と思った物には『縁』があるのよ。」


……それは分かる気がする。

ヒナはさっき買ったワンピースを見て思う。


「そしてアクセはね、『力』を増幅させるパワーもあるのよ。」


「力?」


ヒナは首をかしげる。

『力』ーーーーーそんなキーワードをこの世界に来て何度も耳にした気がする。


サラはふふ、と笑って。

「また帰ってロウくんたちとお話しましょ。彼ならもっと詳しく教えてくれると思うわ。」



そう言って、南の方へ歩いていった。

この街はーーーーー少し小高い丘の上にあるのか、中心部から少し移動すると、坂道が続く。

下には広い草原と酪農を営む人々の家が見下ろせる。

眺めが良い街だな、とヒナは思った。

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