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家を出て15分。

最初はちょっとした住宅街のような雰囲気が、中心部に近づくにつれて賑わいを増してきた。

気づけば色々なお店が並び、人々が楽しそうに行き交う。


ヒナはサラとはぐれないよう、手をつなぎながら歩いている。


「とりあえずは腹ごしらえね。美味しいランチを楽しんで、それから買い物!」

そういってサラは立ち止まる。

目の前にあるお店はーーーーー


「ここ、この間オープンしたところなの。ずっと行ってみたかったんだー」


無邪気に話しかけてくるサラの隣で、

ヒナは立ちすくんだ。


「………パヴォーネ………」


ヒナの様子がおかしい事に気付いたサラは

おーい、とヒナの目の前で手を降ってみる。


「あれ?ヒナちゃんこのお店知ってるの?

私最初この字読めなくて。周りの人に聞いちゃった」


てへ、とサラが笑っているがヒナは見ていない。

目線は目の前のお店に釘付けのままーーー


「同じ…お店……⁈」



ついこの間。

キホさんとランチしたお店。


外見こそ街並みに溶け込んでいるから違うものの、イタリアンレストラン風の雰囲気、そして看板はーーーヒナの見覚えのあるそれだった。



中に入ると、赤と白のギンガムチェックのテーブルクロスが目に入る。


同じだ、とヒナは思った。


ウェイターに通されて二人で席に着く。

メニューを見て、公用語が英語である事を認識する。


英語は得意ではないが、多少は読めるはず。


サラと相談してメニューを決めて注文する。


待っている間に、サラがすかさず聞いてくる。

「さっき同じお店って言ってたけど、他にもあるの?このお店。」


ヒナはグラスの水をちびちび飲みながらボソボソと答える。


「…元の世界で…会社の近くにあった。」


そう、あのお店も最近オープンしたところだった。


単なる偶然?



思ったより早く料理が運ばれてきた。

サーモンほうれん草のトマトクリームソースパスタ、マルガリータピッツァ、小エビのカクテルサラダ。


パスタは以前、キホさんと食べた時に頼んだモノと同じメニューだ。




ヒナにはどうしても何かあるように思えてならなかった。


「他にも…探せばあるのかな。共通点。」


サラはふーん、とうなずいて何か考えているようだった。


「……ねぇ、サラさんは知らないの?元の世界と同じ所」


「うーん今のところ思いつかないなぁ。…

あっそれはそうと、ヒナちゃんていくつ?」


「に、25です。」


「えぇぇぇ⁈」


サラは手に持っていたフォークを落としてしまった。

ウェイターが気づいて素早く新しいものと交換してくれる。


サラはすみません、と挨拶だけして

ヒナの目をじっと見た。


「……同い年………」


ぽそっと言われたセリフを理解するのに、ヒナは数秒止まっていた。


「え……?」


ヒナも言葉を理解して固まる。


同い年。


まさか。こんな美人と。


「やだーごめんなさい!てっきり年下かと……なんかエラソーにしてしまったわ…」

サラが頬に両手をあて、困った顔をした。


「いや…こちらこそ…年上だと思っていたのでつい……」

ヒナの顔が引きつる。


この輝きで同い年ときたもんだ。

これはビックリ。

そしてますます自分が情けなくなった。


私には色気もへったくれもありませんからねぇ……


とほほ、と心で呟いて。

これはついでに確認しなければとヒナは切り出した。



「じゃ、じゃぁ…他のみんなは?」


異世界に来た動揺で気にしてなかったけど。

ちょっと落ち着いたら気になってくる。


「カイトとロウは一つ上。レイは同い年。」


ヒナは愕然としてしまった。

あんなにまぶしい人達が

自分と変わらないとは。


今まで私は何をやってきたんだろうか。

仕事に熱中するあまり、自分の事なんて無頓着で。

テキトーな服着てメイクもスッピンだし

三度の食事すらテキトー。


みんなもっとしっかりしてる気がする。

ただの気後れだろうか。


いやでもサラは洗濯に食事と掃除…テキパキこなしている。

普通、そんなモンなんじゃないだろうか。

みんなちゃんと『いい大人』なんだよね。


「…固まってるけど…大丈夫?」

サラに心配されているのを感じて、ヒナは取り繕った。


「あはは、大丈夫ダイジョウブ。ちょっと衝撃的事実だったけど」


そうよねー、と納得してるサラを前にして

ヒナは急いで目の前のパスタを食した。




***




同時刻。

同じアリアの街。

中心部より少し南に位置する所。


「……で。確かにここなんだろーな。」

レイが訝しげに尋ねる。


「どうかな。皆が触れたがらないタブーについて話せる人物なんて、そう簡単に会えるとは思ってないけどね。」



この街へ来て数日。

それなりに紛れてさりげなく情報収集をしていたのだが。

近所の人たちとの何気無い会話の中に、ロウには度々ひっかかるモノがあった。

サラを連れて歩いていると、必ず言われる言葉がある。


「夕刻、夜に女性は出歩いてはいけないよ」


ごく普通の話ではあるのだが。それにしても皆、揃いも揃って同じフレーズ。

そして緊張感が言葉に漂う。


レイは「気にするような台詞ではない」とスルーしていたのだが。

ロウには何故か気になった。

その言葉だけ、発する時の空気が変わるのだ。


でも理由は誰も言わない。

『当たり前の事じゃないか』と、濁して会話は途切れる。


(当たり前の理由ではない『何か』がきっとあるはずだ)

ロウはそう思って、根気よく色々な人と話をしていたのだが。

ようやく、1人の人物が浮き上がった。


革靴家の主人。アラン・ベンジャミンーーーーーー


彼に作ってもらった靴は、一生履ける。

ここ一番の靴は彼に作ってもらうべき。

街の人ならもちろんの事、

遠く離れた所からも、資産家の人たちが

わざわざ彼に靴を仕立ててもらう為にやってくるという。


色々な人と関わる事の多い彼だからこそ、

何か知っていると言われるのだろう。



「とにかく。聞いてみないことにはね。」

ロウはそう告げて、小さな建物のドアをコンコンとノックした。


「はい。」

ドアを開けて、少し小柄な男性が出て来た。


資産家がこぞって仕立てたがるという、評判の店のはずだが。

そんな豪華な雰囲気は微塵もない。


ごく普通のーーーー昔からある、年期の入った小さな店。


そしてドアから出て来た人も、違和感のないごく普通の『おじさん』だった。

白いヒゲが延び放題という印象。

ヒゲと同じ色した白髪の髪は、きれいに整えられて帽子の中に納められていた。



「あの……ここの亭主さんでしょうか。」


「そうじゃよ。ワシはアラン・ベンジャミンだ。何かようか?」

しわがれた声で小さく応える。

おじさん、よりおじいさんだな。とレイは思った。



「ちょっとお尋ねしたい事があるのですが。中へ入っても?」

ロウの問いに、ベンジャミンは眉毛をピクリと動かしただけだった。


「……靴の話じゃなさそうだな。」


ロウもその様子にニッコリと笑顔で返す。

「えぇ。まぁそんなトコです。」


フン、と鼻を鳴らして亭主はドアを開けて無言で奥へ案内した。



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