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新世界より  作者: 紒戯
僕が僕であるために
3/3

僕の運命と嘘

 父さんが出した結果は想像通りだった。

 夜、父さんに勉強をしないで漫画を読んでいたことを怒られている最中に、高校受験を自分の思い通りにしたいと思っている母がその話を持ってきたことは言うまでもない。

 父さんは僕に7Aレベル――――つまり、平均よりちょっと上の都立の美術系学校なら行っても良い、但し、地元の超馬鹿な美術系学校やら平均クラスの普通高を受けることは許してはくれない。と言う。

 まじ、支離滅裂じゃないか!

 何なんだよ、なんで音楽だったら何処の学校でも良いクセに、美術だと頭が良い所じゃないといけないんだよ!

 煙草で医療系専門学校中退させられた馬鹿親父に何が分かるんだよ!ハゲちまえ!


 そう心の中で毒づきながら、僕は勉強をする気なんて一切なかった。当たり前だろう。僕は勉強が嫌いなんだ!むしろ、嫌い嫌い言いながら平均点取ってる僕を褒めてくれよ!って言いたくなる。


 12月になって、父さんと母さん、姉さん(うちは4人家族なんだ。姉さんは国立の高校に通っている3歳上の姉でとても出来が良い。僕のように中学生の時、素行が良くて生徒会長までやったって訳じゃなくて超チャラかったけども、頭は良いんだよなぁ)が話し合った結果、僕は塾に行かされることになった。まじだるい。


 12月から初っ端の塾は、休んでやった。自分で父さんの声まねして、インフルエンザにかかってしまいまして~って言い訳して休んだ。ざまぁ。僕は塾なんざ行きたくないんだよ!

 流石に1月になると、塾に行き始めたけどね。僕ってエラいでしょう?

 すると僕の成績はみるみるうちに上がっていった。母さんと父さんは喜んだけど、僕は気持ちが沈むだけだった。これなら、倍率の高いあの7Aの美術学校にも受かるかも!と浮かれ始めた。


 正直に言うと、僕は高校自体行きたくなかった。

 投稿活動をちゃっちゃと始めて、高校に行かないで漫画を描きたかった。

 漫画を描いてるのを見つかると、原稿を裂かれたり道具を捨てられたりするので描くことができなく、投稿も出来なかったが。

 だから、浮かれ始めた両親を尻目に、僕のテンションはすっごい下がっていった。

 理想と現実の差だよコレが!


 結局、僕は都立の美術高校に落ちた。

 最終的にすべり止めで受けた私立の男子校に通うことになった。このすべり止めだって、母さんは受けさせてくれる気すらなかった。私立はお金がかかるから行ける筈がない!って。じゃあ、都立はもっとレベルの低い堅実な所受けさせろよ!と憤りを感じる。何なんだよ、自分で受けろ、って言ってる癖に落ちた時のことは考えないのかよ。自分勝手すぎんだろ。

 遠まわしにそう伝えたら「あんたがもっと勉強すればいいだけの話でしょう!?なんで勉強しないの!」って。


 だ か ら 僕 は 勉 強 が 嫌 い な ん だ っ つ ー の !



 心の中で叫びながら、いよいよ受験という段になって塾の先生から薦められた馬鹿男子校の特進クラスなら多少の金額の免除があると知り、そこを受けさせてくれと頼んだ。まぁ、僕もそこに行くことになるとは思っていなかったんだけどね。僕の人生のミス1。


 僕の年から都立高校の授業料が無料化になった。

僕は私立だから関係ない。毎月2万とちょっとの学費を納めていく。


 僕が高校に行くようになってから母さんはお金が無い。とよく言うようになった。

 正直、僕はこんな学校やめたかった。

 平均レベルの特進科に、超馬鹿なレベルの普通科。特進科と普通科は校舎も別で、その溝は深まるばかりである。

 友達はクラスの人だけ。普通科のクラスの友達も出来たけど、いずれ仲が悪くなった。

 同じ漫画の絵を描く趣味のヤツが普通科に居て、そいつとも仲良くなった。けどそいつはけろっとした顔で自分は将来漫画の専門学校に行くんだと言う。


 お金持ちは良いですね!自分なんか学費の補助金貰ってる所為でG-MARCH以上の大学に受からなければお金を返さないといけないのに!お前は!親の臑かじって専門学校ですか!あぁそうですか!僕も嫌いな勉強なんかしないで推薦で専門学校に行けたらどんなに良いでしょう!


 そんな事を思いながら絵ばっかり描いていた。せめてものあてつけにそいつよりは絵が上手く居たかった。

 しかし、そんな事をしていたら1年生の3学期に成績が落ちてしまった。

 両親に物凄く叱られた。そんなもので対抗心を燃やしているんじゃない。何無駄なことをしてるんだ!と。


 何が無駄なことか!僕は憤慨した。


 親は子供を選べないけど、子供も親を選べないとは良く言ったものだ。

 何が嬉しくてこんな喧嘩の絶えないバイオレンスな家に留まらなければならないのか。

 僕は大学進学と共に家を出ることを画策した。

 正直に言うと大学にすら行きたくない。

 こんな事になったのも全部、父さんのあの無茶振りの所為じゃないか!

 そう思うと怒りがふつふつと煮え滾ってくるのが分かる。

 僕の運命は父さんのその時の気分で決まっているのだ。




 惨めな気分になった僕は藍坊主のコイントスを聞きながら両親が寝静まった後に狂ったように絵を描いた。

 さぁさそろそろ、壊そうぜ?右しか向けない世界。

 その歌詞を頭の中で反芻しながら、世界を革命したいと切に願う。

 僕の世界を、僕を取り巻く世界を変えてくれ。



 他力本願なのは、僕がウソツキで、変わろうとしても自分の本質ごとは変われなかったからさ。と自嘲気味にコイントスを聞きながら僕は苦笑する男の子の絵を描いた。







 無気力感に苛まれながら三代飛鳥は、やがて訪れるであろう朝と今日のこれからの授業、いつの時間なら寝れるだろうか、と考えを廻らすのだった。

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