僕
全てを革命出来るような力が欲しかった。
平凡と呼ぶには余りに酷い家庭に育ってきたものだと自分でも思える。
だがしかし、生活自体は平凡としか言いえないものだ。
僕は自分が嫌いだ。
そして、自分の平凡な生活も嫌いだった。
世界を変えたかった。
暴力的で短気な父と、ヒステリックで情動的な母。
そんな二人を見て育った。父の機嫌が悪くなることを恐れて僕はいつも身を潜めていた。
自分はいつか捨てられるのだろうかと怯えながら生きてきた。
そうなった時にどうしようか。あぁ、友達を沢山作っておけば良いんだ。
けど、僕にはそんな魅力はない。どうしようか。
どうすることも出来ないと悟った僕は嘘をついた。
まず僕がついた嘘と馬鹿な行いを晒そう。
小学4年生の頃には幽霊が見えると嘘をついた。
好きな女の子に振り向いて貰おうとその子と仲の良い男の子を貶める噂を流した。
いじめっ子と一緒になって弱い子を影ながらいじめた。
例えば、その子の上履きを隠したり、クラスの係当番表からその子の名前を消したり。
小学5年生の時、一番仲の良かった友達は漫画を集めていた。
週間の少年誌のコミックス本。友達ともっと仲良くなりたくて一生懸命集めた。
親はうちにコミックス本に使うお金なんてない!と僕をこっぴどく叱った。
僕はそれでも集めた。でもお金が足りなくなった。
僕は親の金を盗んだ。そして漫画を買った。
親にすぐにバレた。すごく怒られて漫画も売りに出された。
それでも僕は漫画を買った。ラノベも買った。図書館で貪るように本も読んだ。
現実には無い世界に憧れたんだ。僕には遠すぎるその世界に想いを馳せながら、妄想の中で僕は凄く強くて、何かと戦ってる。傍には美しい女の子が許婚として居る。そう思い込んだ。
小学6年生では自分はお金持ちのお坊ちゃんで身を隠さねばならない存在だと嘘をついた。
幽霊を倒す家系に生まれついた僕は、皆を守るために日々戦っている。昨日、一人の仲間が死んだ。僕は本当は引き継ぎたくない自分の家を引き継いで、家の頭首として戦わねばならない。
それが嫌で堪らないのに逃げられないんだ。そう、友達に言ったのだ。
中学生から僕は、改心をしようと思った。
今まで仲良くしていたクラスの代表的な、所謂チャラチャラしたヤツらとは離れていった。
凄く緊張もしたけど、学級委員にも立候補した。僕ってば、超真面目。
こうして、自分のついた嘘もいずれ皆忘れてくれる、そう思っていた。
中学1年生の研修旅行の時だった。
なかなか薄れない噂は、他の小学校から来た友達にも広まり収集がつかなくなっていた。
僕は、中学生の友達にも嘘をついた。
やってしまった。
高校生になったからには、嘘はつかないぞ!と今度こそ決めこんだ僕は、今もこうして嘘をついている。
何故だろう。
嘘をついて困るのは自分だと、痛いほど気付いていた。
嘘をついて嘘をついて、バレそうになると嘘をまた被せて隠して。
その繰り返しが幾度となく続いた。
嘘をつく度に巧妙になる自分の嘘にほくそ笑んだりもした。
親の財布からお金を取ってもバレないようになった。
好きな漫画を買った。
勉強は嫌いだけど親がやれって言うから仕方ない。けどやらない。
テストの結果は三者面談の時以外は無駄に点数を良くしたテスト結果表の改変版:自作Ver.を渡すのだ!
男子校に進んだ僕は何故か、同じクラスの男の子を好きになってしまった。
よし、その子の気を引くために嘘をつこう!
僕は病気なんだ。あまり良くない状態なんだ。
嘘をついて、それが親にバレて、学校にもバレかけてる。
絶 体 絶 命
だけど僕は今日も元気に嘘をつく。
親にバレないように。学校にバレないように。
少しずつだけど、僕はここで僕がついた巧妙と思われる嘘と、失敗談と、いろんなものをブチ撒けようと思う。
・・・え?
本当についた嘘なのかって?
これは実話なのかって?
そんなの聞くほうがナンセンスだ!
だって僕はウソツキなんだ。
嘘はバレなきゃ自分にしか分からないもんだよ!
小説の最後をそう締めくくると、僕―――― 三代飛鳥は強がるように微笑んで、新規保存のボタンをクリックした。