姐さん
女子「もう、我慢できないの。」
彼氏「いやいやいやいや、早すぎるだろ! まだこんな時間だぜ?」
女子「うん…分かってる。でも、でもね。悪いのは貴方なのよ。ケーキなんて買って来るから。……すごく、美味しそうじゃない。」
彼氏「ダイエット、してるんだろ?」
女子「……うん」
………
彼氏「食べるのか?」
女子「食べる!」
彼氏「おいおい、即答だなぁ。そんなことしてると、太るぞ」
女子「ふ、太ったりなんかしないもん。」
彼氏「確証はあるのか?」
女子「あ、あるわよ。それぐらい。
ふんだ。
バカにしないでよね
女子「人間っていう生き物は、まずヨコに成長するの。そして、ヨコに成長することに充分満足したら、今度はタテに伸びるの。そうやって大人になっていくのよ」
彼氏「ほう」
女子「赤ちゃんを見てみるとそのことがよくわかるわ。一人残らずみ~んなカワイイおデブちゃんでしょ。
彼氏「確かに……」
女子「要するに、まだ未成年なわたしはケーキを食べても良いのよ!」
彼氏「なるほど。なるほど。そうだよな、良いよな。じゃあどんどん食べるが良い……
って、あれ? 何か違う気がする」
女子「! そんなことないない! 気のせいだよ。気のせい。気のせい、気のせい、昨日のせい、なんちって」
彼氏「……っ。ダメだぞ、ダメだ。ここでうぜぇと突っ込みを入れたら負けだ。あえてオレは何も言わないぞ。」
女子「聞こえてるよ」
彼氏「はっ!」
女子「……むぐ?」
彼氏「……そうだ。ケーキ。食べないならオレが食……は? 既に無い!?」
女子「むぐむぐ……」
…………
彼氏「………旨いか?」
女子「絶妙ね」
彼氏「そうか……それはよかった。」
彼氏「やっぱ、女ってのはお菓子に目がないよな。何で?」
女子「………」
彼氏「おーい?」
女子「………パンツ……見せてあげよっか?」
!
彼氏「……ばっ! いきなり何言ってるんだよ!?」
女子「……ふうん。驚くんだあ」
彼氏「当たり前だろ! ……まったく」
女子「でも。ちょっと嬉しそうだった」
……
彼氏「それは……」
女子「男だもんね」
彼氏「………」
女子「まっ、そゆことだよ。女にも男にも、抗いがたいものってあるんだね。……はぐっ」
彼氏「二個目突入っすか!?」
女子「むー」
彼氏「……まったく。幸せそうな顔しやがって……」
女子「……そう……言え……ば、しあわせって。言う字はね……」
彼氏「うん、分かった。落ち着け。クリームが散る。だからまずはソレ全部食って、その後でゆっくり話そうか」
女子「・・・」
彼氏「・・・」
女子「ん、よし! でね、幸せっていう字はね」
彼氏「ふんふん」
女子「幸せなんだ!」
バァーン!
……………………
彼氏「うん。そうだな。同感だ。オレもそう思うよ。でもな、もしよかったらでいいんだが、説明を求めてもいいかな? あまりにも高度な話題にオレの脳の能力がNO! と呪いの言葉をのたまっているんだ」
女子「ウオッホン。なんか大変な事になってるみたいだから、取り返しがつかなくなる前に私が説明してしんぜよう」
彼氏「はぁ……」
女子「ん?」
彼氏「いや、何でもない」
女子「ま、いいわ。つまりね、幸せの反対は幸せなのよ!」
…………
女子「……え……えっと………幸って字を思い浮かべてみて。」
彼氏「ふん。……で?」
女子「真ん中の二本線はまあ、傾いてないとする。そしたら……逆さにしても、鏡に映しても幸って字は変わらないのよ!」
彼氏「………おお! そうだ、つまり、点対照であり線対照にもなっているということだな!」
<幸>を逆さにしても<幸>。
なるほどな…………
?
彼氏「幸の反対は辛じゃないのか?」
女子「そう、それ! そう思うよね。でもブッブー、残念ハズレ。」
彼氏「何で?」
女子「だって、<辛>を逆さにしたら、……何かよく分かんない字になるけど、<幸>を逆さにしたら、<幸>でしょ?」
彼氏「う~ん。じゃあ、幸の反対は何になるんだ?」
女子「幸よ」
彼氏「あのなあ……」
女子「強いて言うなら <死> かな」
彼氏「………」
女子「生きてる限りは、幸せだよ。ホラ、私たちって生き物じゃない。だから……生きていれば、それで幸せなんじゃないかな」
彼氏「生きてる限り幸せ、か………」
女子「わたしは今、幸せを通り越して贅沢三昧なんだよ」
彼氏「………ケーキか?」
女子「ううん、違う。君が………いるからだよ」
彼氏「……お前」
女子「………」
彼氏「……好きだ!」
女子「……好き!!」
ギュッ
パフッ
女子「ん………」
彼氏「……」
チュッ
…………ガチャ
女子彼氏「「!」」
バタッバタバタタッ
男の子「……姉ちゃん? 何してるの?」
男の子二「この人、誰?」
女子「コラァ! ノックくらいしなさいよ! ……えっと、こいつらは私の親戚の子たち」
彼氏「へ、へぇ。そ、そうなんだ。カワイイ子たちだなぁ! ハハハ。よろしくね」
兄弟「……どうも」
女子「で? 何の用?」
兄「いいな、弟」
弟「うん、兄さん」
兄「五円ってあるじゃん」
―――――略―――――
兄弟「……だからね、姉ちゃん。お年玉はお札がいいな」
女子「お前たち……なにもそこまでしなくても……」
兄弟「お姉ちゃん!」(満面の笑み)
女子「ああ。もう、分かった。ホラ」
兄弟「ありが……ん? 何……コレ?」
女子「五百円玉よ。お札じゃないって? いいの。お年玉なんだから玉じゃなきゃ。
兄「でも、五百円は………」
女子「いい? お前たち。いくつもの大切なものを、その時々によって一番大切にするのが女の子なのよ」
彼氏「え? それってどういう……」
女子「じゃ、お姉ちゃんたち忙しいからまたね。行きましょ」
彼氏「お、おう……」
兄弟「………」
兄弟「……はぁ」