第四話:虐めと貴族と7帝と。
アリサ『ふわぁ~おはよ。』
アリサがリビングに入ると蓮が片付けをしていた。
蓮『今日は学院に行くから皆を起こしてきてくれアリサ。』
アリサ『了~解。』
――アリエ・広場――
俺は破壊の目でコテージを吹き飛ばす。
クロ『話しには聞いていたが、その目凄まじいな。』
蓮『まぁ、その分魔力消費も激しいけどな。
だから、みんながコレを使えたとしても、魔力が足んなくて使えないな。』
サラ『どれくらい足りないんですか?』
蓮『分かりやすく言うと、
最上級が1消費だとすると、
創造が1500。
破壊が1000だ。』
サラ『ほぇ~!
でも破壊の方が少ないんですね!!』
蓮『あぁ、無から有を造り出すのは神の所業だからな。』
クロ『オマエは神以上だろ。』
蓮『わかんね。』
アリサ『そこで、わからないって…………。』
蓮『とにかく、クードリガに行くぞ。』
アリサ以外はアリエの門に向かう。
クロ『どうしたんだ?
行かないのか?』
アリサ『いくよ?』
サラ『なら早く行きましょうよ~』
蓮『全員俺に掴まれ。』
マリ以外が喜んで掴まる。
マリは、動かないままだ。
はぁ…………。
と、ため息を吐き、蓮はある魔法を使う。
蓮(【念話】)
蓮《マリ…………。
聞こえてるだろ?
なんでマリが学院に行きたくないかは知らない。
だからな?
俺になんで行きたくないかを話してくれないか?
今なら心で念じるだけで俺に伝わるから。》
マリは首を横に振る。
マリ《コレを知ったらいくら蓮でも私を嫌いになるよ。
だから、嫌だ。》
蓮《わかった。
無理にとは聞かない。
でも、もうちょっと俺を頼ってくれよ…………。》
マリ《じゃあ、学院についたらずっと耳を澄ましてして…………。
なんでか分かるから…………。》
蓮《サンキュー。
とにかく、掴まれ。
行くぞ。》
マリも蓮に掴まる。
蓮『いくか…………。
【天使の六翼】!!』
蓮の背中に翼が六枚出現する。
クロ『なっなんだ?
これは……………………?』
サラ『綺麗です……。』
蓮『【風の膜】!
じゃあ、行くぞ!!』
そういってトップスピード。
アリサ『落ちないから力抜いても平気だよ?』
サラ『あっ本当です……!』
――クードリガ――
蓮『あれがクードリガか…………。
でかくないか?』
さっきのアリエは普通の農村。
眼前にあるクードリガは壁に囲まれた城下町(?)
アリサ『私たちもこっちに来たばかりの頃はびっくりしてたよ…………。』
マリ『私は今でも慣れないよ~』
アリサ『まぁ、初めてクードリガを上から見たよ…………。』
ん?クロがガクガク震えてる?
蓮『どうした?クロ?
具合でも悪いのか?』
クロ『……………………いんだ…………。』
蓮『聞こえない。』
クロ『私は!高い所が!恐いんだぁー!!
笑いたいなら笑え!』
クロが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
蓮『なんで?なんで笑うんだ?』
クロ『だって…………。
変じゃないか?
その…………性格と合ってないとか。』
顔を真っ赤にして俯くクロ。
正直に言います。
サイコーです。
俺はクロの頭を撫でる。
蓮『俺は…………俺は可愛いと思うぞ。
ギャップってヤツ?』
クロ『レン…………。』
クロがうっとりと俺を見つめる。
だがーーーーーーー
アリサ『ストーップ!
時間がないから学院に急ごう!』
ごもっとも。
――クードリガ・メインストリート――
蓮『うわっ!
すげぇ人混みだな~。』
クロ『当たり前だ。
このクードリガは商業都市だからな。』
隣のクロが答える。
蓮『商業都市?
普通の都市とどう違うんだ?』
クロ『普通の都市は物を売る場合、税金が掛かる。
だが、ここは税金がかからないんだ。
つまり、安く買い物が出来る。
安く、良いものを求めて、人が集まるわけだ。』
蓮『へぇ~。』
アリサ『買い物は後、後!!
早く学院行こう!』
蓮、クロ『はぁ~い。』
――エストランデ魔法学院――
蓮『…………。』
なんだよ…………。
コレ…………。
でかすぎだろっ!?
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
って効果音がつくくらいデカイ学院。
ってゆーか城。
校門だけでもかなりデカイ。
アリサ『さ、入りましょう。』
一行は学校の中へ。
――学院・大広間――
蓮『オイ。
この視線どうにか出来ねぇ?』
蓮たちは幾人もの生徒に見られていた。
蓮(みんなカワイイからなぁ……………………。
でもなんで女子も?
まさか、百合か?)
と、女子が蓮たちを見ている訳がわからなかった。
だが、
ある一団を見たときに違和感を感じる。
蓮(ーーーーーーーッ!?)
なんだ?
悪意を感じる?
しかも、俺やアリサに向けられた物じゃないな…………。
誰だ…………?
蓮は意識を集中させる。
すると、
……………………マリ!?
なんでだ?
なんでマリなんだ?
そういえば、マリは学校に来たくないと言っていたな……。
この悪意と関係があるのか?
すると、一団から一人の男が出てくる。
男『やぁ、久しぶりだな。
アリサ、クロ。』
アリサやクロには優しく話す男。
男『……………と、クズか。
まだ、アリサやクロの周りをうろついていたのか?
いい加減に気付けよ。
クズはクズ同士仲良くしてろよ?
僕は優しいから、“死ね”とは言わないが邪魔だから消えてくんないかなぁ?』
男はマリに近付いて言う。
マリにしか聞こえない様に。
マリは最早泣きそうだ。
ふぅん…………。
そうゆう事ね。
蓮『なぁ、アリサ、コイツ誰?』
男『あぁ、スマナイね。
自己紹介が遅れたね。
僕はステッド=マルクス。
三大貴族のマルクス家さ。』
うん。
名前聞けたからいいや。
マルクス『君らは?』
だが、蓮は聞こえて無い様に、無視して話を進める。
マリを抱きしめながら。
マルクスは再び囁く様に言う。
マルクス『あぁ、そうゆうことか、お前はクズの男か。
ハハハハハ。
お笑いだな。
よかったなぁクズ。
生ゴミ処理場の男が引き取ってくれてさ。』
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーーぶつっ
蓮『マリが生ゴミだって言いたいのか?』
蓮が囁く。
マルクス『あぁ。そうさ。
この魔法学院はエリートの通う学院なんだ。
下級魔法すら何発も唱えられないヤツは生ゴミだろ。』
そろそろいいかな?
俺は唱えておいた二つの魔法を解除する。
蓮『だってさー。
学院の諸君。』
マルクス『は?
僕の声はお前たちにしか聞こえない声量で喋っているから聞こえないぞ。』
アリサとクロが近付いてくる。
クロはプルプル震えている。
マリには耳栓をしておいた。
クロ『今、聞こえていたことは本当なのか?蓮。』
蓮『あぁ。』
クロがマルクスを殴る。
クロ『お前が消えろぉ!!!』
アリサは先程からなにかブツブツ言っていたが、
アリサ『よくも!よくも友達を!くらえ!
【雷の槍】《イカズチノヤリ》!』
雷の棒がマルクスに当たる。
マルクス『ぐっ!?
どう……ゆう……つもりだ?』
マルクスが呻く様に言う。
蓮『それは俺から説明しよう。
俺は途中から
【防音結界】ってヤツを使った。
コレは範囲内の周りの音を聞こえなくする。という結界だ。
さらに、クズ野郎、あっ…………ごめん名前忘れちった。
まぁいい。
そんで、クズ野郎の声を皆様に聞いていただこうと二つ目の魔法を使った。
【ボイスループ】
って魔法を使った。
効果は知ってるよなぁ?
先生とか集会ん時につかってるだろ?
すきなポイントまで声を運べるヤツだよ。』
ハハハハハ!
マルクスが真っ青になる。
マルクスざまぁ!
マルクス『くくく!
ひゃーっひゃひゃ!』
マルクスが狂ったように笑い出す。
蓮『何が可笑しい?』
マルクスは笑うのを止め、妖しい笑みを浮かべる。
マルクス『わからないのか?
君“たち”は三大貴族に逆らった。
絞首刑だよ絞首刑!!』
蓮『別に捕まらなきゃよくね?』
マルクス『は?』
蓮『いや、だから、捕まえに来る奴をぶっ飛ばせばよくね?
で~マルクスのお家も潰してやるよ。』
と、蓮はマルクス以上に妖しい笑みを浮かべる。
マルクス『君にできるわけないだろ?
国に逆らう気か?』
蓮『なんか、話がでかくなったから要点だけ話すと、今回は既にアリサやクロが制裁を下したが、次は無いと思え。』
後半はいつの間にか出せた、殺気を出して言う。
蓮『マリ…………もう平気か?』
腕の中のマリに問うときに、蓮の表情が一転して、心配顔になる。
マリ『うん!』
マリは笑顔で答える。
蓮『よし!じゃあギルド行くか!』
アリサ『あっごめん!
私たちは――と言っても、皆はわからないけど、私は最後の授業受けてくる!』
アリサが笑顔で言う。
マリ『どういう事?』
クロ『このままレンについていく為には学籍は邪魔ということだ。』
アリサが肯定の意を示すように頷く。
マリ『そういう事か~
クロちゃんは?』
クロ『私も当然辞める。
親は放任主義っぽいから特になにも言わないだろう。
マリは大丈夫なのか?』
クロ言葉を聞いてマリが固まる。
マリ『………………ハッ!
お父さん忘れてた…………。』
蓮が急にパシン!と手を打った。
蓮『なぁ、もしかしてマリの親父さんて………………アレ?』
蓮がロビーの一角を指差す。
そこには、中年男性がマルクスを『教育的体罰!』と叫びながら、フルボッコにしていた。
……………………。
教育的体罰ってなに?
マリ『お、お父さん!
それ以上は駄目だって!!』
アリサ『こんにちはハワード先生。』
クロ『ハワード先生、マルクスはもう意識がないぞ?』
ハワード『止めるなマリ!!
俺はコイツを許しちゃおけん!』
だが、蓮が静かに告げる。
蓮『なに勘違いしてやがる……………………。
親が学院に居てもわからないのか?』
再び殺気を出す蓮。
ハワード『…………………。』
さっきまでうるさかったハワードが静かになる。
蓮『何か言うことは?
なければ、俺は行くが。』
ハワード『待て…………。
お前はマリを連れていくつもりらしいな。』
ハワードが幽鬼のように立ち上がる。
蓮『ついてくるか来ないかは、マリの自由だがな。』
ハワード『なら、俺と勝負しろ。
お前がマリにふさわしいかテストしてやる。』
蓮『内容は?』
ハワード『一対一の決闘だ。』
マリ『お父さん………………。
……………………負けるよ?』
ハワード『負けないな……。
まぁいい、俺にもしも、勝ったら7帝が1人、[雷帝]として、ギルドマスターにお前を推薦しておこう。』
7帝か…………。
確か、ギルド最強の7人だったか?
マリ『お父さん……雷帝だったの!?』
ハワード『言って無かったか?』
マリ『初耳だよっ!
まぁ、レン君には及ばないけどねぇ~。』
クロ『確かに。』
アリサ『うんうん。』
ハワード『そんなにコイツは強いのか?』
そして、ハワードの雰囲気が柔らかいモノから鋭いモノになる。
ハワード『楽しみだ。
さぁ、校庭に移動するぞ。』
――校庭――
校庭には雷帝の戦いを大勢の生徒が見に来ていた。
口々に「どれくらい強いのかな?」などと言っている。
その校庭の中心で蓮とハワードの二人は睨み合い、静かに戦いの開始を待っていた。
リーンゴーンリーンゴーン
鐘の音が合図となった。
ハワード『いくぞ…………。
せめて、一分持ちこたえーーーーーーーくっ!?』
全て喋り終えるのを待たずに、蓮が攻撃を仕掛けたが、遠距離からの中級【サンダースピア】はかわされてしまった。
ハワード『お前も雷属性か…。
雷じゃ俺には――うぉ!?』
再び【サンダースピア】を放つ蓮。
蓮『なぁ……………………。
戦いの時にお喋りするのか?
余裕だな。』
ハワード『子供相手にはちょうどいい。』
蓮『ナメんな。
【雷竜の咆哮】
《ライリュウノホウコウ》』
ハワード『挑発するだけの事はある。上級を詠唱破棄か……。
たが、それだけだな。
【雷竜の咆哮】』
同じ魔法同士がぶつかり激しい音を立てて消滅する。
ハワード『こんなもんか……。
このレベルじゃマリをまかせるわけにはいかないな…………。
本気で行くぞ。
【身体強化―雷―】』
バチッ!!
という音を残しハワードが消える。
ハワード『どこを見ている?』
蓮『あっち。』
誰もいない空間を見つめて蓮が答える。
ハワード『なめてるのか?』
蓮『ああ。』
ハワード『貴様…………!。』
流石にハワードも怒る。
ハワード『消し炭にしてやるよ…………。
【雷神の裁き】!!』
蓮『それ本気?
【雷天泰双2】
《ライテンタイソウツー》』
蓮が消える。
【雷神の裁き】は誰も居ない空間に落ちる。
ハワード『な…………!?』
蓮『なぁ、どこ見てんの?』
ハワード『なんだ?
その術は…………。』
蓮『奥義?』
ハワード『そんな術は見たことも聞いたこともない………。』
だろーね。
ありがとう。某魔法先生。
まだ、技借ります…………!
と、蓮は密かに感謝していた。
フィニッシュといくか!
蓮『まだまだ。』
そう言って蓮は一瞬でハワードの懐に飛び込む。
ハワード『早い…………ッ!』
蓮『【雷の矢】
5000矢固定。
【風の矢】
5000矢固定。』
空中に、【雷の矢】、【風の矢】という、下級魔法を停滞させる。
この間、一秒にも満たない。
蓮『食らえ!
【風雷華崩拳】
《フウライカホウケン》』
蓮の右ストレートがハワードの鳩尾に決まる。
どずん!
ガッ、ゴッ、ドザァァァ。
ハワードは派手に吹き飛ぶ。
観客は驚きで声がでない。
ハワードはピクリとも動かない。
蓮『やべ!?
やりすぎたか?』
マリ『おと~さぁ~ん!
来世で会おうね~!』
ハワード『酷いっ!?』
ハワードは先程と違い、柔らかい雰囲気を纏っていた。
アリサ『まぁ、蓮にケンカ売ってそれだけで済む方がラッキーですよ。』
ハワード『それだけって…………。
一応、内臓ぐちゃぐちゃなんだが……………………。』
蓮『すみません。
初めての技だったので、加減出来ませんでした。』
ハワード『初めて!?』
蓮『えぇ。あの場で創りました。
まぁ、とりあえず…………。
【天使の聖域】』
パァッ!とハワードの周りが光る。
ハワード『こりゃあなんだ!?傷が治っていくぞ!?
これは……………水か?』
治癒です…………。
蓮『秘密です。』
ハワード『お前さっき雷、風も使っていたよな?
何属性持ってるんだ?』
全属性です…………。
蓮『秘密です。』
ハワード『秘密の多いヤツだな。』
蓮『いい男は秘密が多いんですよ。ーーーーーーーっと。』
ガキィィィン!!
と、金属同士がぶつかる音が響く。
女が蓮に斬りかかって来た。
ハワード『エル!?
早くその剣をしまえ!』
アリサ『エル!?
どうしたの!?』
エルっつうんだ。
この女。
まさか、連続戦闘?
ボスラッシュですかね?
蓮『早く剣を退けてくれないかな?』
エル『…………。』
無視か?オイ。
ハワード『おい!エル!
剣を降ろせと言っている!』
エル『降ろさない。』
ハワード『降ろせ!水帝ッ!』
蓮『…………。
水帝か…………。
なら、いいか。
ハワード、退け。』
ハワード『…………?ああ。』
蓮『なぁ、水帝。
ほんとに退かない?』
エル『退かない。』
蓮『ちっさい体でよくやるよ。』
エル『ちっさいいうな。』
いや、まじで。
身長150センチ位なのに大剣とかアリ?
蓮『ちびっこに手ぇ出す気は無いしなぁ。
てか、なんで斬りかかって来たの?』
エル『ちびっこ言うな。
強かったから戦ってみたい。』
蓮『一撃で終わらせるけどいい?』
エル『やってみ。』
蓮『(破壊の目発動。)
パキィィィン!
ハイ。終わり。』
破壊の目で剣を消してみた。
エル『剣が!?』
ハワード『…………は?』
蓮『さっ。ギルド行くか!
ハワード、紹介してくれんだろ?』
ハワード『あ、ああ。
今は幸い7帝の内4人がいるからな。
あと何回か戦うかもな。』
蓮『7帝、暇人じゃん。
あと、何回戦おうと次からは、一撃で終わらせる。』
ハワード『一応、俺ら最強の人たちだったんだけど…………。』
蓮『俺の方が強いんだからしょうがない。』
アリサ『ずるくない?』
クロ『な。』
後の二人も頷いている。
蓮『うっさい!
早く行くぞ!』
アリサ『あははは!』
クロ『怒るな怒るな。』
マリ『お父さん!蓮君待たせないでね!』
サラ『早く行きましょう!』
エル『早くする。』
ハワード『みんな酷くないか?
しかも、エルまで…………。』
最早、大人の威厳は欠片も無いハワードであった。
――ギルドエストランデ支部――
ハワード『ここだ。』
蓮『普通に購買だろ。』
ローザ『ハワードさんの言っている事は本当ですよ。
ようこそギルドエストランデ支部へレン君。』
蓮『ローザか!』
ハワード『お前ら知り合い?』
ローザ『奥で残りの2帝が御待ちです。
レン君、奥へどうぞ。』
待ってるとか…………。
また、戦闘か…………。
ローザ『皆さんはここでお待ちください。
この先はSランク以上の方のみ入れます。』
俺は?
アリサ『ローザ!
どうゆう事!?』
アリサが吠える。
ローザ『規則ですから。』
ローザは冷淡に答える。
クロ『駄目だ。
ローザが仕事モードのときは何を言っても聞かないだろう。』
アリサ『…………。
わかったわ。』
サラ『レンさん!
行ってらっしゃいです!』
マリ『じゃ~ね~。』
蓮『行ってくる。
サラはアリサが見てやってくれ。』
アリサ『了解よ。
サラ、行きましょうか。』
サラ『私はそんな子供じゃありません~!』
サラはアリサに引きずられていった。
クロ『私たちも行こうか。』
マリ『そうだね~。』
クロとマリはアリサたちとは逆方向に歩いて行った。
エル『早く入る。』
蓮『待っててくれたのかサンキュー。』
さて、鬼が出るか蛇がでるか…………。
――ギルド奥――
エル『入って。』
?
なんで暖簾なんだ?
蓮『失礼します。』
蓮はそう言って暖簾をくぐる。
くぐった瞬間に何者かが殴り掛かってくる。
またか…………。
蓮『【ウインド・ハンマー】』
風で作った槌が何者かを潰す。
すると、部屋の隅からハワードが何者かに声を掛ける。
ハワード『な?言ったろ?リン。
瞬殺されるって…………。』
ん?リン?
蓮『女ぁぁぁぁ!?
やっちまった!
痛くねぇか!?』
?『平気だよ?
それ、風で作った分身だから。』
ハワードの隣から声がする。
蓮『なんだ分身か…………。
暗かったから気が付かなかった。
ま、それは置いといて!
で?用件は?』
?『お前には“帝”になってもらう。』
暗闇から高圧的な声がした。
蓮『7帝は全員埋まってるだろう?』
?『ふん…………。
やはり、無知な事ほど面倒な事は無い。』
ハワード『おい!フール!
レンが知らなくても当然だ!
コレはSS級以上しか知らされてない秘匿事項だ!』
ハワードがフールを叱るが、蓮は馬鹿にされて黙っているほどいい子ではない。
蓮『いいよ。ハワード。
無知は罪とでも言いたげだなフールさんよ?』
フール『わかってるじゃないか。』
蓮『なら…………。俺が何属性か知ってるか?
“無知は罪”なんだろう?』
フール『お前は3属性だ。
それ以上はない。』
蓮『なぜそう思う。』
フール『3属性持ちですら化物なのに、それ以上など人間から大きく外れているからだ。
何か間違ってるか?』
蓮『全部だ。』
フール『なに?
貴様、気でも狂ったか?』
蓮『この部屋少し暗いな。
【ライト】』
まぁ、コレは周囲を明るくする、光の下級だ。
フール『4属性だと!?
しかもレア属性だと!?』
エル『眩しい…………。』
エルが手で光を防ぎながら言う。
蓮『あっわりぃ。
【ブラック・カーテン】』
コレは対象者の周囲の明暗を操る闇の下級だ。
ハワード『レア属性2つ持ち!?』
エル『もう大丈夫。』
フールはあんぐり口をあけてこちらを見ている。
いい気味だな。
蓮『あとなんかあったか?』
ハワード『あとは、火。』
蓮『【フレイム】』
炎を手から出現させる。
ハワード『土。』
蓮『【ストーンアロー】』
ハワードに向けて石の矢を打つが、避けられ、エルに炎の剣で切られて消滅する。
ハワード『結局、全属性か…………。
ハァ…………。』
蓮『無知は罪だもんなぁ?
フールさんよぉ?』
フール『…………。』
フールからの返事はない。
リン『あははは!
フール気絶してる~!』
蓮『ざまぁみろ。
俺をなめてっからだ!』
フールは別に蓮をなめていた訳ではなく、世界の常識を語ったまでなのだが。
蓮『んで?ハワード。
この後どうするんだ?』
ハワード『さっきの話しに戻るが、レンには新設される帝になってもらいたい。』
蓮『帝を新設するのか?』
ハワード『あぁ。
これと言うのも、最近、魔物の活発化が見られあまりいい状況では無いと、ステイルが言ってな。
あぁ、ステイルっていうのは、国王だ。
で、ステイルが、
誰か強い者を名前は自由に決めて良いから捜して来い。
って言ったからだな。』
蓮『国王適当だな。』
日本だったら確実に政権交代だな。
ハワード『まぁ、“適当に”がモットーだからなヤツは。』
蓮『さっきも思ったが、随分と国王と仲が良いみたいだな。』
ハワード『あぁ。
学院時代からの親友だからな。
ステイルは身分を偽っていてな、卒業まで知らなかったな…………。』
蓮『へぇー。
じゃあ、話を戻すけど、
つまり、俺を新しい帝に推薦したくて、その帝は新しく作られる帝なんだな?』
ハワード『ああ。
概ねそれで合ってる。
足りない事は帝の責務として、
・帝会議に出ること。
・ギルドの仕事をすること。
主に魔物の討伐だな。
・マリをよろしく頼む。
この3つだ。』
蓮『最後のは関係ないけど、言われなくても絶対に他の三人も一緒に護る。
帝の仕事はそれだけか?』
ハワード『頼むぞ…………。
仕事はそれだけだ。』
蓮『なら名前は“全帝”ってしといてくれ。』
ハワード『名前は全属性から来てるのか?』
頷く蓮。
エル『じゃあ、私が一緒に行く。』
リン『ズルい!僕だよ!』
静かに喋るエルに対し机を叩き反抗するリン。
僕ッ子ですか…………。
ありがとうございます。
ってか、“どこ”に“誰”と一緒に行くんだ?
ハワード『もう一個あった!
帝にはルールがあってな、帝はツーマンセルだ。
要は、帝は他の帝と一緒に行動しなきゃいけないんだ。』
蓮『まじ?』
ハワード『大真面目だ。』
二人はまだ誰が一緒に行動するかで争っていた。
ハワード『さらにもう1つ。
帝に選ばれた者、また帝が選んだ者は学院を卒業しなくてもよい。』
蓮『ラッキーだな。』
さて、ロリ'sはどうなったかな?
リン『僕だよ!』
エル『私。』
リン『ぼ~く!』
エル『私。』
こりゃあ終わりそうにないな。
蓮『二人ともちょっといいか?俺の故郷には、じゃんけんっていう勝負があるんだがやるか?』
エル『仕方ない。』
リン『やるやる~!』
蓮によるじゃんけん指導が始まった。
蓮『いいか?
じゃんけんっていうのはな…………』
――数分後――
蓮の腕には微笑んでいる(様に見える。)エルと、あからさまに落ち込んでいるリンがぶら下がっていた。
蓮『そろそろ元気だせよ。』
リン『無理だよぉ~』
そこに蓮の腕に更に強く掴まりながらのエルのひと言。
エル『勝者の…………余裕。』
蓮(意味がわからない。)
が、
リン『くぅぅぅぅぅぅっ!!』
リンには伝わった様でぶら下がるのを辞めて地団駄を踏んでいた。
蓮『次は何をするんだ?
まだ学院やってるからみんなが来ないんだけど。』
エル『学院の視察。………………………………帝の仕事。』
まじ?
――魔法訓練館――
蓮(体育館か何かと勘違いしそうだ。
大きさは天と地程の差があるけど。)
ガチャ!!
魔法訓練館の入口扉を開ける。
リン『こんにちは~
帝の学院視察でーす!!』
蓮(軽っ!?)
ちなみに二人は既に降りている。
すると、女の人がダッシュで走ってくる。
蓮(教師か?)
リン『こんにちはガーネット先生。』
蓮(!?!?)
蓮『ガーネット!?………………あっ………すいません。』
蓮は最初、ガーネットという名前に驚き大声を出してしまったが、ガーネット先生含め全生徒の視線を感じ、謝った。
クロ『何をしているのだ?母上?』
蓮『やっぱクロのお母さんか…………。』
クロ『なっ!?レン!?
レンは話し合いがあったんじゃないのか?』
蓮『終わったよ。』
ガーネット先生『クロの知り合いだったのか…………。
私はスフィア=ガーネットという。
君は?』
蓮『あのことはどこまで言っていい?』
蓮は帝の二人に聞く。
エル『全部。』
リン『レンが承諾したから、もう決定だよ~!』
蓮『おっけー。
俺の名は龍牙蓮だ。
ついさっきから新しい八人目の帝になった。
名を“全帝”と言う。』
スフィア『何だと?
君が八人目の帝だと?』
ふざけるのはやめてくれ
という顔で蓮を見るスフィア。
スフィアが冗談だと思うのも当たり前だ。
この国では永らく“帝は7人”という決まりがあった。
教科書でもそうなっている。
リン『う~~~~ん。
これ以上はらちがあかないね。
何かいい手ない?エル?』
エル『戦えばいい。』
蓮&リン『…………なんで?』
エル『実力でわからせる。』
蓮『え゛。』
エル『構えて。……………………始め。』
やるしかないか…………!
蓮『全員今すぐに離れろ!』
クロ『ど、どうしたんだ!?』
リン『全帝の力わからせてあげるよっ!』
エル『逆巻け…………
【アクアトルネード】』
水の竜巻が巻き起こる。
蓮(短縮詠唱……!)
リン『切り刻め!
【ウインドカッター】!』
風の刃が飛んでくる。
蓮(こっちも短縮詠唱か……!)
本気でやらないと不味い…………。
なら…………。
蓮『落としてやるよ!
【重力の網】!』
二人の魔法が重力に叩き落とされる。
エル『特殊属性…………?』
リン『聞いた感じだと[重力]だね!
「我が望は風の終極!」
【ウインドパラディン】!』
風の鎧がリンを包み、その手に風の槍を作り出す。
蓮(最上級!?
流石帝って事か。)
エル『「荒れ狂う炎よ…………その力を持ってして我が望みに応えよ」
【インフェルノフレイム】』
炎の爆発が背後から蓮を襲う。
前からはリンの投げた槍。
槍は投げられた後、分裂している。
蓮(ッ!これは避けられないな。
しょうがない…………。)
リン『これで!』
エル『おしまい。』
激しい爆発が蓮を襲う。
リンの風がエルの炎を更に激しく燃え上がらせる。
リン『あっ…………。
やり過ぎちゃった…………。』
クロ『レーーンッ!』
しかし、
爆煙のなかから風の刃が飛ぶ。
エル『ーーーーーーーッ!?』
リン『!?』
不意打ちに油断しきっていた二人は術をもろにくらう。
爆煙の中から蓮が飄々と出てくる。
蓮『あっぶね~、ちょっと油断してたぜ。』
エル『何故、無事!?』
エルが驚く(様に見える。)
リン『なにボ~っとしてるの!
エル、次の攻撃だよ!?』
蓮『油断してた代わりに二人にちょっとだけ本気でやってやるよ。』
リン『今までは遊びって事?』
エル『舐めるな…………。』
リンとエルが再び臨戦体勢になる。
蓮『行くぞ!
【紅蓮の剣撃】
《グレンノケンゲキ》』
【紅蓮の剣撃】でエルやリンの周りに火属性の剣が出現する。
蓮『どうせなら喰らっとけよ!
降り注げ!』
剣が一斉にエルやリンに襲い掛かる。
エル&リン『!!!???』
エル『【ウォーターシールド】!』
リン『【ウインドシールド】!』
二人は水と風の盾を出現させる。
蓮(創造の目発動。
形状ハンドカン
種類は適当に。
個数2つ。)
蓮の手に2丁拳銃が現れる。
エル『それ……なに………?』
リン『びっくり~!』
蓮『【光と闇の咆哮】』
蓮が構えた双銃から、右は光のレーザーが打ち出され、左は闇のレーザーが打ち出された。
エル『くっ……!
【ウォーターシールド】!』
水の盾を出して光のレーザーを防ぐエル。
が、
パキャァァァン!!
水の盾は貫通され、闇のレーザーが迫る。
リン『僕を忘れちゃヤダよ!
【トルネードランス】!』
闇のレーザーはリンの魔法によって防がれる。
リン『案外光や闇って簡単に防げるんだね!!』
蓮『そりゃ防げる位に加減したからな。』
エル『え…………?』
蓮は双銃をしまう。
代わりにコインを取り出す。
それを親指で弾くように手に乗せる。
蓮『なぁ、レールガンって知ってるか?』
リン『レールガン?初めて聞くよ。』
蓮『避けろよ。
【超電磁砲】!
《レールガン》』
地面を削りながらレールガンは進む。
エル『【フレイムファング】』
リン『【トルネードウォール】!』
エルは炎の狼を出し、リンは竜巻の壁を発生させた。
ガァァァァァァッ!
炎狼が吠える。
しかし、レールガンは炎狼を消し飛ばし進む。
ギィィィィィィン!
勢いはそのままに次は竜巻の壁に当たる。
だが、次第に竜巻を維持出来なくなってきたのか、リンの額に汗が浮かぶ。
だが、健闘虚しく突破されてしまう。
レールガンが二人に迫る。
リンは恐怖から目を瞑っている。
蓮『オイオイ、リン。
7帝が目ぇ瞑っちゃダメでしょ。
(破壊の目発動。)』
二人の目の前で、
レールガンが消滅する。
エル『!?なに…今の……?』
リンはまだ目を瞑っている。
リン『あれっ!?魔法は?』
エル『消えた。』
リン『え~っ!?
それ、見たかった…………。』
蓮『リンが目を瞑っちゃうのが悪いんだろ?』
リン『違うよ~!
あんな魔法撃つレンがわるいんだよ~?』
蓮『何故に!?』
3人は笑っていた。
授業中だということも忘れて。
蓮『あれ?
何でみんな固まってんの?』
ガーネット先生を初め学院の生徒はみな口をあんぐり開けながら固まっていた。
リン『帝の闘いをみたら大体こんな感じになるよ~?』
と蓮に飛び付き腕にぶら下がるリンが言う。
蓮『ふ~ん。』
エル『……ずるい。……』
エルは前から首に腕を絡めてぶら下がる。
蓮『あれ?クロどこ行った?
スフィア先生どこに行ったか知ってますか?』
スフィア『申し訳ありませんがわかりません。』
スフィア先生が先程とは違い敬語と固い顔で答える。
蓮『敬語なんて止めてください。
スフィア先生の方が歳上なんですから。』
スフィア『いえ。
帝の方に偉そうにするなど…………』
蓮『はぁ…………。
なぁ、エルにリン、“帝”ってどれくらい偉いんだ?』
リン『えっ!?
蓮知らないの!?』
蓮『当たり前の事なのか?』
エル『知らない人は居ない。』
蓮『まじで?』
蓮(やっべぇ!
なんて言い訳しよう!?)
クロ『知らないのには事情がある。』
そこにはクロ、アリサ、マリ、サラがいた。
蓮(!?どっから出てきた?)
クロ『レンは田舎者でな、世間知らずなんだよ。』
アリサ『そうそう。』
スフィア『ほう……田舎からか…………。』
蓮(二人ともサンキュー!)
蓮は上手く誤魔化してくれた二人に感謝した。
リン『いくら田舎者でも知らないなんて事は無いと思うんだけど…………。
まぁいっか!!レン強いし!』
蓮(よかった…………。
リンが能天気で…………。)
リン『帝って言うのはね~……………………
~帝~
帝というのはギルド最高峰の8人、8帝の事を指す。
8帝とは、
火の[炎帝]
水の[水帝]
土の[土帝]
風の[風帝]
雷の[雷帝]
全の[全帝]
の八人である。
なお、帝は最近まで7帝であったが、国王が魔物の活発化を理由に1人増やし、8帝になった。
基本的に帝には強ければなれるので、エルやリン、蓮の様に十代もいれば、フールやハワードといった大人も所属している。
所属、というのは8帝は学業の全面免除、公共料金の無償化など、多岐にわたり国から援助されている替わりに、8帝のの指揮権はギルドのトップのギルドマスターを越えて、国王が所持しているからである。
学業の全面免除は帝だけでなく帝が選定した者たちも学生であれば免除される。
8帝の国内における権利だが、国王の次に偉く、三大貴族などはゆうにとり潰せる位に高い。
8帝は帝の仕事以外にギルドの仕事もこなさなくてはならない。
帝は常に二人一組で動く。
リン『以上!!!!』
蓮『サンキュー!リン!』
エル『常識…………。』
アリサ『そうだね……。』
サラ『私でさえ知ってました…………。』
蓮『うっせ!!』
マリ『まぁまぁ、みんな落ち着いてね~、そんなことよりどの帝様が同行するのかな?』
アリサ&クロ&サラ
『『『あ(ハッ)!?』』』
蓮『エル。自己紹介しとけ。』
エル『は~い…………。』
エル『エル=ルーフェン……………………水帝。』
アリサ『エル様ですか。』
他のクロ、マリ、サラの三人はハワードが蓮に再戦を申し込んだため、全員そっちに行っていた。
エル『タメ口でいい。』
アリサ『だっ駄目ですよ!』
エル『タメ口で…………。』
アリサ『帝の方にタメ口でなんて…………。』
エル『レンにも敬語…………?』
アリサ『いえいえ、レンは別です!』
エル『私にもタメ口で…………。』
アリサ『…………………………………………わかった。
これからよろしくエル。』
エル『レンのことも…………ね。』
アリサ『じゃあレンに言いに行くわよ。』
エル『驚かない…………??』
アリサ『流石に五人目は…………。』
そう言って二人は歩き出した。
――所変わって蓮たち――
二人は数分前から闘技場で闘っていた。
ハワード『おらぁ!!』
雷を纏ったパンチが蓮に迫る。
蓮『ふっ!』
パシン!!
ガッゴッ!!
蓮は左手で拳を弾き、土の造形魔法【クレイワーク】で土の拳を2つ作りハワードに当てた。
ハワード『ガハッ……………………やるな!
だが!【スパーククロー】』
ハワードの手から雷の爪が飛ぶ。
蓮『【神白の雷】!』
《シンビャクノイカズチ》
蓮の手からは淡く光る雷が放出される。
二つの魔法は衝突し激しい音を立てて消滅する。
ハワード『よし!
【雷神の…………』
蓮『【雷天泰双2】!』
ハワードは隙が出来たと思い、上級を詠唱破棄しようとしたが、蓮の声に遮られる。
ハワード『ッチ!
【身体強化―雷―】!』
ハワードが身体強化を使う。
ハワード『食らえ!!
【サンダースピア】!
【雷竜の咆哮】!
【ライトニングボルテージ】!』
雷の槍、雷のレーザー、雷の大球を一度に発動させる。
蓮『さすがだな…………だが!甘い!』
ハワード『は?』
蓮『【サウザンド・テンペスター】!
【クレイウォール】!
【常夜の吹雪】!
火と光以外の5属性だ!!』
蓮は風と雷の混合魔法と土の造形魔法に闇と水の混合魔法を使った。
ハワードを囲うように土の壁ができる。
ハワードの魔法の3つは蓮の
【常夜の吹雪】を消しただけで消滅した。
ハワード『強すぎだっ!だが!身体強化ならかわせるぞ!』
そう言いながらハワードは土の壁を登る。
だが、登りきったところで顔をしかめる。
ハワード『速すぎだろ………』
蓮『はろ~。じゃ、みんな来たから終わらせるぞ!
紅桜!
【神光炎武】!』
蓮は光と炎を身に纏う。
そのまま一閃。
決着。
ハワード『ガハッ!』
蓮が峰で殴ったためハワードは土の壁から落ちていった。
そのまま蓮はアリサたちの元へ。
ハワードの下に風のクッションを作るのも忘れずに行った。
蓮『エル、自己紹介出来たか?』
エル『ばっちし…………。』
エルは蓮にピースしながら答えた。
マリ『流石レンさん、強いですね!』
クロ『あぁ、だが、最後の一閃は急激にスピードが落ちなかったか?』
蓮『あぁ。
あの時使ったのは【神光炎武】っていう身体強化なんだが、あれはスピードが落ちるが代わりに攻撃力が上がるんだよ。』
クロ『そうだったのか。』
蓮『今の組み合わせは火と光だが、組み合わせ次第では他のも出来るぞ。』
アリサ『例えば?』
蓮『【雷天泰双】だな。
コレは雷の身体強化で、自身を雷に変化させるんだ。』
ハワード『なるほど。
だからあんなに速いのか。』
マリ『どこから出てきたのお父さん!?』
サラ『それにボロボロじゃないですか!』
蓮『あ、スマン治すの忘れてた。【天使の聖域】っとこれで大丈夫だろ?』
ハワード『あぁ。
って!そんなことより後幾つ身体強化はあるんだ?』
蓮『さぁ?
だいたいが【雷天泰双】で充分だからな…………』
ハワード『さぁ?って…………。
自分の魔法だろ?』
マリ『レンくんはそれでいいんだよ~』
ハワード『は?』
マリ『い・い・の!!』
ハワード『はい!』
アリサ『スゴいね…………。
帝を圧倒してるよ……マリ…………。』
蓮『マリが同行するのを認めてくれるか?』
マリ『同行じゃなくて結こムグッムグッッッ!』
蓮『しーっ!』
マリの口を押さえる蓮。
ハワード『?まぁいい…………同行の件だが許可しよう。
お前に任すのが一番安全そうだからな。』
マリ『やった……!』
蓮『良かったな!』
そう言ってマリの頭を撫でる蓮。
クロ『くぅ~!母上!私もついていくからな!』
スフィア『なに…………?』
こちらでも説得が始まったようだ。
スフィア『どういうつもりだ?お前に帝様のパートナーが務まるわけ無いだろう?』
クロ『……………………確かに、私じゃレンの足手まといになるのは目に見えている。
……………………だが、そんなことは関係ない!私がレンと居たいんだ!レンもそれを歓迎してくれたんだ!だから……………………母上っ!貴女に何て言われようと私はレンについていく!』
スフィア『クロが居ることで帝様はクロを守ろうとするだろう。
だが、帝様と互角の相手の時にクロを守ろうとすれば当然、隙が出来る。
どうなるか………………………
わかるな?』
クロ『…………。』
顔を俯かせるクロ。
蓮『オイオイ………
そこは「レンは最強だから問題無い!」って言う所だろクロ。』
だが、レンはクロたちの所まで来て言った。
クロ『たがっ!私たちのせいでレンが死んでしまったらと思うと……!』
クロは今にも泣きそうな顔で叫ぶ。
だがーーーーーーー
蓮『クロ良いことを教えてやるよ。
クロは俺が帝と何割の力で闘ってたと思う?』
クロ『十割ではないのか?』
クロは涙目になりながら当たり前の様に言う。
蓮『一割も出してねぇよ?』
ハワード『なにぃぃぃ!?』
エル『嘘…………!?』
リン『またまた見栄はっちゃってぇ~』
蓮『そうだ。スフィア先生。
俺と賭けをしませんか?』
蓮が何かを思いついた様にスフィアに提案する。
スフィア『賭け……ですか?』
蓮『ああ。ルールはいたって簡単で、俺が一分以内にあっちにいるエルを除く3帝を倒す。
倒せれば俺の勝ち。
倒せなければ俺の負け。
簡単だろう?』
スフィア『ですが…………!』
蓮『俺が勝ったら、クロを同行させる。
負けたら、クロを諦め、帝権限で何でも希望を叶えよう。』
スフィア『ですがやはり…!』
まだ渋るスフィア。
だが、3帝が黙っているハズもなかった。
フール『スフィアと言ったか?
その勝負受けてもらおう。』
ハワード『そうだな…………!ここまでこけにされてはな!』
リン『見返してやる!』
蓮『だとさ。』
スフィア『………………………………………わかりました。』
蓮『じゃあ、移動するぞ。』
――グラウンド――
蓮『いつでも始めていいぞ。』
ハワード『こちらもだ。』
蓮たちはあの後すぐにグラウンドに移動していた。
スフィア『ですが、本当にいいのですか?
一対三では勝ち目が無いのでは?』
蓮『そうおもいます?
まぁ、見てて下さい。』
蓮は微笑を浮かべながら、ハワードたち3帝の元へ。
そして、3帝の前に来て一言。
蓮『何割で戦って欲しい?』
ハワード『なめてんのか?』
蓮『一割以下に負けてるしな。
ちなみに、エル、リンのコンビは油断してて二割出したな。』
ハワードが崩れ落ちる。
「幼女コンビに負けたのか…」と呟いている。
そんな中フールが口を開く。
フール『上限はいくつだ?』
蓮『五割だな。』
フール『なら五割だせ。』
蓮『いいんだな?地獄を見ても?』
ハワード『はっ!地獄がなんだ!』
フール『望むところだ……』
リン『やっつけるよ!』
ハワード『そう言えば何故、エルは参加しないんだ?』
蓮『さっき、念話で参加したくないってさ。負けるから。』
その言葉に3帝はエルを見る。
ハワード『俺たちが勝てないと思うか?』
エル『負ける。』
エル、即答。
フール『随分な自信だな水帝。』
ハワード『そろそろ始めるぞ。学院も授業があるし……な。』
蓮『3……2……1……0』
さぁ、ミッションスタートだ。
スフィア『今から一分だ!』
まず、蓮は殺気を解放する。
今までとは比べ物のならない量を。
蓮『ーーーー』
蓮が何かを呟いた後、スボンのポケットに片手を突っ込んだ。
ハワード『なめてん……………………』
ヒュッ!!
風を切る音が聞こえて喋るのをやめる。
リン『へへ……レン……や……るね……』
リンはそう言った後、地面に倒れる。
ハワード『なに!?』
フール『は…………?』
蓮『さて、リンには寝てもらったから、野郎共にはご要望通り地獄を見て貰うかね……!
クククッ……!』
ゾクッゾクッ
ハワード『…………ガタガタ。』
フール『…………………。』
ここまでで15秒。
蓮『ショータイムだ!』
フール『【魔の破撃】』
フールから闇の衝撃波がでる。
ハワード『【貫きの光弾】!』
ハワードからはサッカーボール位の弾が繰り出される。
蓮『甘い甘い。
【黒棺】《クロヒツギ》』
【黒棺】は闇のオリジナル魔法で対象を黒い立方体の中に閉じ込め、ダメージを与える魔法。
蓮は黒い棺を2つ出して魔法を呑み込む。
スフィア『残り30秒!』
スフィアが残りの時間を告げる。
蓮『やっべ……!
(時間がねぇな。なら!)
雷風神剣
召喚!』
蓮の手に雷と風の双剣が召喚される。
蓮『行くぞ!』
蓮はフールに走る。
ハワード『あいつ双剣も使えんのかよ!?』
フール『
【カオス・インパクト】』
バカァァァァン!!!
ドーーーーン!!!
蓮の周りで闇が圧縮され、爆発する。
だが、蓮はそれを高速で移動し全てかわしていた。
そして、フールの目の前へ。
フール『くっ……!
【身体強……………………』
フールは【身体強化―闇―】を使おうとしたが、蓮に腹を蹴られ吹き飛ぶ。
蓮(瞬動!)
蓮は瞬動を使い、フールに肉迫する。
フール『!?』
蓮『奥義!狂気乱舞!』
ガガガガガガガガ!!!!!!
蓮は峰でフールに乱舞を叩き込む。
フール『ガハァッ!!
つ……強い………な……!』
蓮は地面に倒れ、気絶するフールに笑顔で近付いていく。
蓮『【夢食い】』
そして、ハワードの所に行く。
ハワード『今何した?』
蓮『悪夢見せてきた。』
ハワード『ご愁傷様……フール。』
スフィア『後15秒!』
蓮『時間ねぇし…………。
ハァ…………。
ハワード、一瞬で終わらせるからよく見とけよ?
桜花斬月
…………召喚!!』
蓮の手に桜色の刀が召喚された。
アリサ『綺麗な剣~!』
アリサが桜花斬月の美しさに感嘆の声を上げる。
クロ『あれは剣ではないぞ。
あれは刀という東皇街という町の武器だ。
一度見たことがあるだろう?
レンの紅桜も刀だ。』
クロがアリサの間違いを正す。
蓮『秘奥義一の刄――――
春夏秋冬――――――春
《シュンカシュウトウ―ハル》』
ふっ。と蓮の姿が消える。
ハワード『どこだ!?』
ハワードはキョロキョロと辺りを見回す。
フワッ…………。
そんなハワードに暖かい風がかかる。
蓮『春は暖かい季節…………。そんな暖かみの中で倒れろ………。』
どこからか蓮の声がした後…………………ハワードが倒れた。
みんな『『!?』』
アリサ『えっ?、今何が起きたの?』
クロ『エル、見えたか?』
エル『全然…………。』
蓮『だろうな。
スフィア時間は?』
エル以外『!!??』
スフィア『残り3秒………。』
蓮『つまり……だ。
賭けは俺の勝ちだな。』
クロは蓮に飛び付き、笑顔で言った。
クロ『なら、私はついていってもいいんだな!!』
蓮『あぁ。一緒に行こう!』
対する蓮も笑顔だったーー。
そこにスフィアが出てきて、
スフィア『…………。帝様。
クロを……クロをよろしくお願いします。』
蓮『わかっています。
全帝の名にかけて誓います。』
ハワード『おい!
なんか俺んときと反応ちがくねぇか!?』
蓮『うっせぇなぁ。
焼くぞ?』
ハワード『すんません!』
と、土下座するハワード。
アハハハとみんなが笑う。
その日の夜…………。
蓮たちは町の宿に居た。
蓮『アリサ、エルに説明頼む。』
アリサ『任せて!』
~~~~数分後~~~~
説明が終わったのかエルがトコトコ歩いてきた。
そして、そのまま蓮の腕の中にダイブする。
エル『流石レン…………。』
蓮『俺が凄いんじゃないよ。
それと、俺がエルの剣、破壊しちゃったから何か創ってあげるよ。
何がいい?』
エル『レンのオススメ……。』
蓮『なら、コレかな?
水旋華!』
蓮の手には全体が青い西洋剣があった。
見るもの全てをのみ込むような気がする。そんな青。
エル『なにコレ…………?』
蓮『この剣は“魔法剣”で、
効果は、
水の魔法の威力を上げる。
水の魔法の消費魔力を抑える。
使用者への火の魔法のダメージを少なくする。
この3つだ。』
サラ『魔法剣ってなんですか?』
クロ『魔法剣とは、その武器自体が発動体でさらになんらかの効果を剣自体に宿している剣の事だ。』
蓮『賢いなクロ。』
蓮はそう言ってクロの頭を撫でる。
マリ『私が説明すればよかった………。』
蓮『さらに錆びない、刃こぼれしないという魔法を掛けておいた。』
エル『ありがと…………。』
蓮『そう言えば次の目的地が決まったぞ。』
アリサ『どこ?』
蓮『さっきクロが話していた、刀を作っている町―――――――――東皇街だ!』
エル『遠いよ…………?』
サラ『大丈夫です!』
クロ『まさか…………。
また飛ぶのか?』
蓮『それが一番早いからな。
といっても、流石にこの人数は掴まれないな。
空とぶ絨毯でも作るか?』