最終話/忌み子は父を抱く(7/9)
7.
気が付けば部屋の外が騒がしくなっていた。
扉を破壊し、元実が押し入る。
後に続く大志摩、白妙、赤鐘、他十数名。
元実は牙を剥いて緋寒を睨みつける。
その怒った姿は癇癪を起した時の関緋そっくりだった。
だが、緋寒は兄に微笑みかける。怒りに少しも恐れを見せない。
「悪いな。兄上……。
早いもの勝ちというやつだ。」
「貴様ぁっっっ!!!」
そのまま緋寒に飛び掛かるかと思いきや、火にくべられた関緋の首を引っ掴んで吊し上げる。
関緋はまだ生焼けで原型があった。
元実は手が熱いのも気に留めず、父の首を思い切り締め、吠え散らかす。
「何を死んでる!!目を覚ませクズ野郎っっっ!!!!
こんなので済ませると思うなよっっっ!!!
てめえはなぶり殺しにするつもりだったんだ!ジワジワいたぶって、泣き叫ばせて……!
そうでなければ母上と俺の怒りは収まらんっっっ!!!!」
力が入り過ぎて、関緋の首が折れる。
元実は関緋を床に叩きつけ、その顔を踏みにじった。
少し落ち着くと、家臣に命じる。
「……後でコイツを山に捨てろ。
死体は獣や雑魚妖怪に食わせる……。
死んでいるならもう捨て置くしかあるまい。」
「御意に……」と、大志摩は関緋を少し憐れむような顔で返事した。
元実は緋寒に向き直る。
「いいか緋寒……。お前は一つ過ちを犯した。
酒呑童子の父上を殺すという事は、酒呑童子の称号を継ぐという事だ……!
そして決まりでは、酒呑童子が朱天鬼の族長となって皆を率いる事になっている。」
緋寒は踵を返す。
「どう見ても俺には向いておらん。縛られるのは嫌いでな。
『族長』は兄上がやればよい。」
「勝手な!
私に残るのは半端な肩書!
力の証明である酒呑童子の称号がなければ、鬼達はまとまらぬ……!
『情けない長』と、謀反を起こされるだろう……!」
「自信が無いのか?
大丈夫だ。兄上の強さは俺が良く知っている。
俺が父上に勝てたのは、幼い頃から兄上という強敵がいてくれたからだ。
……感謝する。」
緋寒は「では」と、瓦礫を伝って天井に跳ぶ。
「緋寒!!」
追おうとする元実。
しかし、それを家臣達が引き止めた。
大志摩を始めとする全員が彼に跪いた。
若い鬼が言う。
「元実様!
関緋様が族長として機能しなくなってから、代わりに朱天鬼や他の赤鬼をまとめ上げていたのは貴方です!
お陰で朱天鬼は関緋様の頃よりも内政で整い、とても豊かになりました。
酒呑童子の名だけを継げなかったとしても、変わらず貴方を族長としてお慕いする心は変わりませぬ……。
仮に称号を理由に謀反を起こす者がおりましたら我らが許しませぬ。
そのまま誇りを持ってください……。」
「そうだ!」と、賛同する鬼達。
丁度その時、人間の軍が攻めて来たという知らせも入る。
元実はかつて母が言った言葉を思い出す。
『良い方達に恵まれましたね。
貴方ならきっと、良い長になれますよ。
自分を信じてお進みなさい……。』
迷った末に彼は頷いた。
「分かった……。
我に続け!!」
「御意に……。我が鬼王。」
朱天鬼達は鬼王に導かれ戦に赴く。




