5話/タオヤメ(1/9)
※タイトルの通り5話はタオヤメの出番が多くなっており、同時に、彼がゲイなので、それに関する描写を若干含みます。
しかし、ゲイキャラ単体を見せてるだけで、過剰なBL要素や、ゲイ同士の直接的な性行為描写などはありません。(作者も苦手なので)
1.
城の地下にある温泉。
天鬼の子供2人が汗を流していた。
緋寒と元実である。
「いいなあ。兄上は体大きくて。
俺はいつまで経っても筋肉が付かないや。」
「甘えるな。体が小さくても強い鬼は強い。
少しは頭を使ってみろ。」
雑談しながら髪や体を洗い、岩の湯船に入る。
ふと奥を見ると、湯煙の中に別の人影が。
細身で色白。
スラリとした首筋に流れる汗を手の平で拭う、艶っぽい仕草。
「兄上、母上じゃない女の人がいるぞ。」
「え?
変だな。
女の人鬼は1人じゃこんな所に入れないし……。」
話していると、人影は静かに立ち上がった。
子供達の方を向く。
子供達は母以外の綺麗な女性に純粋に興味があったので、ちょっと期待する。
……しかし、“あるもの”を見た瞬間、真顔になった。
細身の体型ながら、しっかりとした腹筋や二頭筋、そして何かと目立つ下腹部の“アレ”。
「違あう!!こ、コイツは『タオヤメ』だあああっ!!!!」
叫ぶ元実。
緋寒は真顔で固まっている。
「あれま!これは可愛い、御子様方。
僕に見惚れちゃった?
もっと、近くでお見せしちゃうよお〜。」
タオヤメはくねりくねりと腰を振りながらやって来る。
瞬きせずに子供達をジロジロ見て、笑顔の口元が引きつっているのが怖い。
それと描写するのが非常に辛いが、やっぱり“アレ”も揺れる。
「折角だからあん、……“男の体についてお勉強”しようか……?」
獲物を見つけた肉食獣の目。
元実は緋寒の手を引いて全力で逃げた。
「退避!!退避!!退避!!全軍退避いぃっっっ!!!
どんな手を使ってでも自分の身を守れぇっっっ!!」
子供達は僅か数秒で風呂場から消えた。
タオヤメは寂しそうに溜息を吐く。
「緋寒様はともかく、元実様もやっぱり素質無しか……。」
タオヤメは湯から上がって脱衣場に向かう。
桶に張った水に自分の姿を映し、浴衣を羽織って化粧を始める。
髪を拭いてよく梳かし、紺色の口紅と爪紅をする。
日頃から言動や行動が残念で、いい男に見境がない彼だが、繊細な筆使いで静かに化粧をするその姿は誰もが見惚れる事だろう。
実際、整った顔立ちをしている。
同じく脱衣場に、大志摩が手拭いと桶を持って入って来る。
「成る程、あの子供達の混乱具合はタオヤメの仕業か。
勝手に男を好むように教え込むと、関緋様がお怒りになるぞ。」
「時に大志摩……関緋様は何処に?」
「奥方様の所だ。それ以上は聞いてくれるなよ。」
と大志摩は背を向け、入浴に備えて着物を脱ぎ始める。
タオヤメは唇に筆先を押し付けたまま手を止める。
細めた、切先のような鋭い目。
「ねえ、関緋様は何故奥方様に執着するんだろうねえ……?」
「ん?女が好きな性分なら、あのような御麗人がいれば自然と頭の角が引っ込むだろう?
……まあ、お前にはピンと来ない感覚だと思うが。」
「いやさ。今でこそ奥方様は大人しくなったけれども、ここに来たばかりの頃は関緋様を拒絶してばかりだった。
そして、その頃の関緋様といえば奥方様と喧嘩する度、オロオロ悩んでばかり。
……本当、あの方らしくない。」
タオヤメの声がやや低くなる。
「あんなに面倒なら、奥方様を諦めて他の女を探せばいいのにって思ったね。僕は。
酒呑童子の身分なら、女の人鬼で囲ったり、他の一族からまた攫って来るなんて造作もないし。」
「それがな、前にも言っていた気がするが『2度と手に入らない、絶対の存在』なのだそうだ。」
「…………。
それは『朱天鬼よりも大事』なのかね……?」
大志摩は手を止めて、振り返る。
「最近の関緋様に不満があるのは、お前だけじゃなく他の者もだ。
儂もそこは擁護せん。
しかし、それはこの間の朱黒を討った事で再び酒呑童子の名に相応しい力を示した。
鬼の闘志までは腐ってはおらん。やる時はやるお方だ。」
「そうだね……。
……僕もそう思うよ。」
彼は微笑み、唇からはみ出してしまった口紅を紙で拭き取る。
タオヤメは着物の帯を締めると、暖簾を潜って脱衣場を出た。
「子種の粉を付けられなかった雌花だが、一つ花でも実を成して、その種から花を咲かせて見せヨォか……。」
役者口調で独り言を呟き、何処かへ消えていった。




