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朱華の鬼母子は父を討つ  作者: 参望
4話/枯れる揺り籠
35/67

4話/枯れる揺り籠(9/12)

9.

 朱黒は関緋の腹違いの弟。そして忌むべき存在だった。

 関緋は父親に疎まれて相手にされなかったのに対し、朱黒は家でも戦でも優遇された。

 同じ父親から精を分けた子供でありながらこの差。

 理由は朱黒の母が関緋の父に寵愛されていた事。

 もう一つは朱黒は生まれた時から強い妖力を持ち、戦いの才に恵まれていた事だ。

 父親も強い子供は存在を認めるらしく、朱黒を愛でた。


 反対に関緋は、体格の割に妖力が弱く、朱黒の影に隠れて育った。

 

 弟が兄より目立つ。それで終わるならまだ良い。

 あろう事か、朱黒は優良なフリをしながら、関緋を心身ともに痛め付けたのだ。

 例えばワザとぶつかって、こんな事を言った。

『そこに居たのですか兄上!

 その無駄に大きな体ですから、気付いてもいいものですが……、何故でしょう?

 あ、そうか。父上が兄上の事を全く話さないから、僕ったら「兄弟なんていない」んだと勘違いしちゃった!

 おっと、父上だけじゃない。

 貴方の母上も兄上の存在を否定してましたっけ。アハハ!』


 朱黒は子供と思えぬ、邪な笑みを向ける。

 勿論、関緋は怒りに任せて彼にぶつかったが、毎回返り討ちにされてしまうのだった。


 そうして関緋は屈辱の幼少期を過ごし、弟や家族への怒りを力に変えて育った。

 朱黒とは丁度数年前に決闘し、正式に一族から追い出す事に成功した。


 だが、悪夢はまたこうして現れた。

 実鈴を奪われる事は、過去の屈辱を逆撫でされるのと同等だった。

 

 


 朱黒と関緋は正面からぶつかり合った。

 牙を見せ合って吠え、闘犬のように首を狙って絡み合う。

 互いの妖術の火が体の周りから噴き出し、辺りは炎が渦巻く海に変わった。


「実鈴を、ガエゼっっっ!!!!」

 関緋は怒りで言葉を忘れかけ、咆哮混じりになる。


 瞬く間にガチンガチンと、激しく噛んで空振りする音が響く。

 歯から火花が出る程の速さと強さだ。

 そして、関緋の噛み付きや組み付きを全部かわす朱黒。

 必死に実鈴に追い縋る関緋をせせり笑う。

「昔からお前の弱点はそこだ!

 感情を揺さぶられて癇癪を起こすと、このように一直線!

 行動が手に取るように分かる!」

 からかうように手に握った実鈴を高く上げて見せつける。


 愚直に彼女だけを見て両手を伸ばす関緋。

 その隙だらけの腹へ、鎌のような爪を突き刺す朱黒。

「ゴブッ!!」

 血を吐く関緋。

 それでも朱黒に掴みかかって、彼女に手を伸ばす。

 朱黒の手が腹の奥にどんどん突き刺さり、血が鉄砲水のように流れても、前に進むのをやめない。

 自己回復が出来る鬼とはいえ、内臓が深く傷付けばただでは済まない。


「実鈴っっっ……!!」


 化け物の彼と目が合う実鈴。

(なんて不安そうな目……。1人で置いていかれる子供のような……。)


 朱黒は関緋の腹に蹴りを入れ、鎌の手を引き抜く。

 流れ出す血の洪水。

 流石に失血でふらつき、腹を押さえて膝を突く関緋。


 そんな彼を鎌で何度も斬っていたぶる朱黒。

「やる気あんのかぁ?!

 女にうつつを抜かして弱くなったってのは本当のようだな!

 俺を負かして追放した時は、その勢いに少々感心したものだが。」




 その時、関緋の意識は朦朧としていた。

 走馬灯か、様々な景色が脳裏に見える。

 彼は幼い子供の姿になっていた。

  



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