4話/枯れる揺り籠(6/12)
6.
黒朱……いや、噂の『朱黒』の住処。
実鈴は蜘蛛の巣に縛られたまま、裸にされていた。
色白の肌に長い髪が絡み、胸元や尻を隠す。
「ハァ……。やっぱり天鬼の女はイイ……。
香りも舌触りも全く違う。
女の人鬼とは比べ物にならん……。」
黒朱……いや、朱黒は彼女の後ろから抱き付くようにして立ち、彼女の下腹部の下辺りを指で撫でていた。
実鈴は声を出さないように、歯を食い縛って険しい顔だ。
朱黒は舌で彼女の耳の淵から耳たぶを舐めてくすぐる。
「流石、夫がいるだけある。
恥じらいで泣き喚かない辺り、こんなのは慣れっこか……?」
「お黙りなさい……!
ンッッッ……!!」
「声出していんだぜ?
今晩からお前は、俺の妻だからな……。
朱天鬼から分離させられた我が一族を繁栄させるのに協力して貰うぞ。」
元実は何も出来ない自分を呪いながら、ずっと母への辱めを見せられてた。
何をされているのか細かい部分まで分からずとも、夫でない者が女を裸にするのは悪しき事だと察した。
「母上……。ごめんなさぃ。僕のせいで……!」
「が、んじつ……目を閉じていなさ……いっ……!」
朱黒は彼女の尻を掴む。
「そんなに悪者として見て欲しく無いなあ。
お前らは関緋に苦労させられているんだろ?
俺の所に来れば、あんな馬鹿を相手に、『色目を使って子供を守る』事もない。」
実鈴は耳を疑う。
(それを知っているのは、白妙様や大志摩様、鴇羽だけ!
信頼出来る方だけのはず!まさかその中の誰かが内通者に?!
……いや、3人ともそんな方じゃない!)
「待って!どうしてそれを?!」
「言ったろ。親切な奴からだよ。
お陰で何でも知ってるぞ?
実鈴、お前の最初の夫、朱華の大将が関緋に殺されている事……。
もう1人の子供(緋寒)はそいつとの子だろうって。」
「!!!!
止めて!!子供の前では言わないで……!!」
「そりゃ関緋を夫に認める訳ないよなあ?!
奴が憎いんだから……!」
もう遅かった。
元実は朱黒の言葉を頭の中で何度も再生していた。
(何だって……?
母上が父上を恨んでいるなら、その父上との子である僕をどう思っているの?
母上は本当は緋寒だけが好きで、僕の事は…………。)
元実は彼女が緋寒を見る時の表情を思い出す。
自分に向ける表情とは何かが違うと感じる事があった。
元実は寂しさや罪悪感に襲われ、涙を流した。
敢えて母に感謝を述べる。
「そうか……。やっぱり。
母上……嫌いな僕を愛そうと頑張ってくれてたんだね。ありがとう。……ごめん。」
「違うわ、元実!!貴方を心から愛してる!!緋寒と同じくらい……。」
実鈴は直ぐに否定した。いきんで糸の拘束を外そうとする。
「もういいよ……!!我慢しないで……!
口でそう言っても、心の奥では僕が怖いんでしょ?!
父上に似てるから……!!」
「違う!貴方は……!」
その時、近くの壁から直径30センチ程の岩がゴロンと落ちた。
そこからずるりと、“子供”が滑り降りる。




