3話/貴方の良き妻に(4/8)
4.
戦から帰り、関緋はある場所へ向かう。
重臣だけが入れる部屋。
とびきり厚い岩で防音をしており、内密な話し合いで使われる。
「お待ちしていましたぁ♡」
中ではタオヤメがニコニコ顔で待っていた。
やたら腰や四肢をクネリと動かす。見開いた目が獲物を狙う目で怖い。
彼は気に入った男は、大体こんな感じで対応する。
一方、やりにくそうな関緋。
常にタオヤメと離れた距離を保つ。
鬼は雌が極端に少ない。
よって、いわゆる人間の若衆のように男が同じ男を女に見立てて妥協し、用を済ませる事も珍しくなかった。
勿論、恋愛感情を持つ者も中にはいる。
少なくとも関緋はその指向ではない。
2人は石の椅子に腰掛ける。
離れた距離を保って座る関緋。
タオヤメは机に頬杖してクネクネする。
「あいも変わらず、今日も素晴らしい戦いぶりでございました……!
僕、目を奪われすぎて、思わずメチャメチャに壊されたいってゾクゾクして……——。」
関緋は席を立った。
「……やっぱやめた。
大志摩に聞く。」
具合が悪そうに踵を返す。
「あぁん!」と、残念そうに自分の親指を吸うタオヤメ。
丁度、大志摩が部屋に入って来る。
関緋はすかさず尋ねる。
「大志摩。
その……女を泣かせてしまった後、どうすれば仲直りできる?」
「え?……ええ。先日の奥方様との件ですか。
一番は私めなどではなく、女の白妙に聞ければ良いのですが……。
女の事は同じ女の意見が参考になるものです。」
「白妙は……駄目だ。
一度、俺から拒絶して泣かしてしまった身だ。
実鈴のように、きっとまた泣かせてしまう。」
「それで、仕方なく女の格好をしたタオヤメを呼んでみたが、やはり違った、と言う訳ですか……。」
「そうですなぁ……」と、腕を組む大志摩。
「母親であれば、子供に手を上げた相手を恨まないのは難しい事でございます。
それに、奥方様と喧嘩した勢いで子を成した件もあります。
ほぼ不可能と言ってよいかと……。」
「そんな……!」
「せめて奥方様の気が晴れるまで頭を下げ続けるか、お世継ぎを作る仕事だけに留めて奥方様との関わりを諦めるか……。」
『諦める』の言葉に、悲痛な顔になる関緋。
「駄目だ……!
あのような女は2度と手に入らない!
容姿も、性格も、子の扱い方も……俺にとって、絶対なのだ……。」
戦場ではどの鬼も恐る鬼王。
そんな男が1人の女に苦しみ悶える。
タオヤメはそんな彼を見て、羽扇子で顔を隠す。
(関緋様が僕のような男に興味がないのは重々承知だ……。
でも、こんな自ら女の足を舐めるような姿は……――、実に不愉快だ。)
彼の瞳は曇っていた。




