3話/貴方の良き妻に(1/8)
~束縛夫に略奪された鬼の妻は、唯一の希望である子供達を守る為、偽りの愛を捧げる。~
奇跡か、関緋との子供と一緒に、前の夫との子供が生まれた。
前の夫が生きる希望を残してくれたと涙して喜ぶ実鈴。
彼女は幸せそうに育児の日々を送っていた。
しかし、ある時に関緋が母子達の前に現れ、些細な喧嘩がきっかけで、前の夫との子供に手を上げてしまう。
悲しみに暮れる実鈴は、母として子供達を守る為に、偽りの妻を演じる決断をする。
1.
赤子達が生まれたその夜。
関緋は密かに大志摩を呼び出し、ある相談をしていた。
「大志摩。俺の子、クセ毛の方の事でだが……。
いや、あれは俺の子などではない……!」
怒りに震える彼を見て察する大志摩。
「『あのクセ毛の赤子の父親は奥方様の前の夫。
朱天鬼の血が流れてないのなら殺してしまえ。』
……そう仰りたいのですな?」
眉間に皺を寄せる関緋。図星の様子。
大志摩は首を振った。
「なりませぬ……。お気持ちは察しますが。
鬼はただでさえ子供が生まれにくい種族。
誰の子であっても、元気に生まれ出た者を自分の好き嫌いで殺めるなど!許されませぬぞ。」
「奴が大きくなった時、親の仇と我らに反逆するかもしれんぞ!?」
「それはその子が『自分の本当の父親を知って育ったら』の話でございます。」
「つまり……。」
悪びれるでもなく、淡々と語る大志摩。
「赤子は『2人とも関緋様の子』だという事にしてしまえば良いのです。
クセ毛の子はまだ魂の宿らぬ赤子。
自分が朱天鬼ではないと、気付きようもありませぬ。
関緋様自身も、他の家臣や周りに悟られぬよう、そのように振る舞いますよう……。」
関緋は腑に落ちなそうな顔をしていたが、首を縦に振った。
「分かった……。一族を絶やさぬようにする為なら仕方ない。
しかし、実鈴はどうする?前の夫の子だと騒ぐかもしれないぞ?」
「それは大丈夫でしょう。
そうでもすれば、自らそのクセ毛の子が殺されるきっかけを作る事になるとお分かりのはず。
……まあ、どの道こちらは殺す気など微塵もありませぬが。」
「確かに、それに関して不思議と何も言わぬ。
麗しいだけではなく、賢しい女……。
あのやたら死にたがって女々しかったのが、子供を成した瞬間、賢母に変わったか。
……ますます、手放したくなくなった。」




