2話/御子守(みごもり) (1/8)
~束縛夫に略奪された鬼の妻は、唯一の希望である子供達を守る為、偽りの愛を捧げる。~
前の夫を殺され、根城に連れて行かれた実鈴。
張本人である関緋は彼女深く心を奪われてしまい、どうにか接点を持とうとする。
しかし当然ながら実鈴は夫の仇と猛反発。
関緋は否定された焦りから理性を失い、愚かにも強行手段に出てしまうのだった。
1.
人間達で賑わう京の都から遥か北西に、雄大な山々がある。
種類豊かな草木が生い茂り、移り変わる四季がその美しさに彩を添える。
大江山——。
そのとある場所に、朽ちた城がある。
昔、人間が使っていた城であるが、今は鬼が巣食っている。
その鬼とは朱天鬼達だ。
最上階の薄暗い広間。
虎のような目が数個光っている。
人間には何も見えず不便であろう。
しかし、鬼は夜目が利くので、暗闇はさほど問題でない。
この場にいるのは、実鈴を攫ったあの関緋の側近・大志摩と、他2人。
1人は腰からナタを下げた、山賊のような女鬼。
若く妖艶な体付きで、長く白い髪の頭頂部に蝶々のような髷を作っている。
もう1人は、派手な瓢箪模様の着物を着崩し、女装した男鬼。
口紅や角紅などの化粧をしており、細身の女と見間違えそうだ。
3人とも関緋の重臣だ。戦で共に戦ったり、重役を任されたりする。
先程まで他の家臣も集まって軍議をしていたのだが、解散後、2人が大志摩を呼び止めたのだ。
「それで大志摩、本当なのか?!
関緋は自らの意志で、その女を連れ帰ったと!?」
苛立った様子の女鬼。
「左様だ。『白妙』。」
白妙はそれ聞き、あまりの怒りに黙り込む。
それを茶化す女装の鬼。
「おぉ〜怖い怖い。
これでもし、かの者が関緋様の御子でも孕んだ日には、白妙殿は嫉妬で憤死してしまうだろう!
“女の役”を下ろされる前は、関緋様の愛人だったからねえ。」
ナタを抜いて斬り付ける白妙。
男はせせら笑い、天井の梁に跳んで逃げる。
「大事な所を切り落としてやろうか?!『タオヤメ』!貴様もそれが本望だろう!」
「必要ないよぉ〜。
“股の根”ありきで関緋様をお慕いしたいからぁ~。」
「フン……。嫉妬で狂いそうなのは貴様もだろうに。
“諸事情”で結ばれないのはお互い様だ……!」
ずっと黙っていた大志摩。痺れを切らし、咳払いする。
「兎に角!!
くれぐれも感情に流されて早まらないようにな、お前達!
……産みに関して苦しみの多い鬼にとって、個人の好き嫌いを挟む余地はない。
全て関緋様にお任せするのだ。いいな?」
不服そうに頷く白妙とタオヤメ。
「でぇ、その関緋様は何処に?」
「女鬼用の牢に向かった。
……それ以上は儂に聞くな。」
大志摩はさっさと踵を返した。
ここまでの登場人物
『白妙』
・関緋の元妻候補。特殊な病で髪が白い。
『タオヤメ』
・謎の多い、男色の男。関緋に強い想いがあるようだが、関緋には相手にされない。
『大志摩』
・家老のような存在。髭のせいで年寄りに見えるが、関緋と同い年。
関緋が深く信頼している。




