1話/散りゆく朱華(7/7)
7.
実鈴が気を失った後。
辺りは消し炭で真っ黒になっていた。
隅には実鈴の両親の死体。
関緋は変化を解き、元の人間に近い姿に戻っていた。
胸にはしっかり実鈴を横抱きにしている。
彼は邪魔そうに、首に絡まった骨を払い落とす。
泰寒の腕の骨だ。
大志摩はその骨の前に跪き、黙祷する。
「敵ながら、なかなかの男であった……。
体を半分に千切られ食われようとも、最後の最後まで関緋様の首に絡み付いていた。
我らの傘下に入らなかった事が悔やまれる……。」
関緋はそれを聞いて怪訝そうだった。
「やめぬか。どんなに苦しみに耐えようとも、死んでしまえば何も遺らん。
それより、これから来る援軍にここを掃除させろ。
まだ歯向かう生き残りが居れば、子を成せる女以外は全て殺せ。」
「御意に……。
所でそのご麗人は……——、他の者に運ばせない方が良いでしょうな。」
落ち着かなそうな関緋を見て、察する大志摩。
やがて一軒家程の大きな駕籠が到着し、関緋はそれで帰路につく。
駕籠の中で2人きりになり、彼は何度も腕の中の実鈴を覗き見た。
鋭さや覇気が消え、口元が綻ぶ。
(寝顔も淑やかな事よ……。
俺は、このような女と出会いたかったのかも知れない……。)
一方、実鈴はまだ目覚めない。
その方が良いだろう。
夢から覚めた後、彼女はたった1人で辛い現実と戦わなければならないのだから。
<1話・完>




