表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

マッチングアプリに咲く

作者: 森の ゆう
掲載日:2025/11/04

アプリを消した。

もう恋など、スマホ経由では絶対しないと誓った。

――昨日までは。


「タカシさん、アプリ辞めたんですか?もったいないですよ」

市役所の後輩・ミナミが言う。

「新しいアプリ、すごいですよ。“リアル連動型マッチ”っていって、GPSで近くにいる人と即マッチング!」


……それ、もうナンパじゃないのか?


だがミナミの勧めで、俺はまたダウンロードしてしまった。

アプリ名は「LoveLink+」。

起動画面には“あなたの半径500メートルに運命がいる”と輝いている。

うさんくさいにも程がある。


登録して5分。

ピコン、と通知が鳴った。

【あなたの運命の相手が、すぐ近くにいます】


画面に表示された距離――“12メートル”。

……近い。

職場か?それとも市役所前のカフェか?


おそるおそる顔を上げると、

向かいの席にミナミがスマホを見ながら笑っていた。


「タカシさん、もしかして……マッチしました?」

「……お前か!」


まさかの職場マッチ。

昼休みが急に気まずくなる魔法だ。


しかし、話してみると意外に盛り上がる。

「理想のタイプは?」

「家にWi-Fiがある人です」

「……現実的だな」


笑いながら、俺は少しだけドキッとした。

今度こそ“運命”なのかもしれない――そう思い始めたその瞬間。


【新しいマッチがあります(2件)】


……は? まだ会話中なんだが。


通知を開くと、1人目は「近くのパン屋で働く・ゆか」。

そしてもう1人は――「職場の上司・田中(47)」。


田中課長!?

しかもプロフィール文にこうある。


「仕事も恋も、真面目に向き合いたい」


いや、向き合われたくない!


翌日。

田中課長からメールが届いた。

件名:【業務連絡】

本文:


「昨日はアプリでお世話になりました。職場でもよろしくお願いします。」


なんの業務連絡だ。


ミナミは爆笑。

「タカシさん、人気ですね〜!近距離恋愛どころか職場内ラブネット!」

俺は頭を抱えた。

AIはまたしても、恋ではなく混乱をもたらしたのだ。


だが、その日の帰り。

スマホが再び震えた。

【“ミナミ”からメッセージが届きました】


「課長は忘れてください。私は、近くにいてくれる人がいいです。」


……。

アプリ越しでも、心臓が少し跳ねた。

俺は返信した。


「じゃあ、今度リアルでカフェでも行く?」


【マッチング成立♡】


――ついに、アプリで“咲いた”瞬間だった。

(しかし、そのカフェの席には、またしてもAI広告の“運命診断”が待ち構えていることを、このときの俺はまだ知らない。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ