屋上にて(千夏編)
「あなた、幽霊なのよね」
うちの高校と同じ制服。この学校で死んだのだろうか。こんなにも気付いて欲しかったのはなぜだろうか。
「そう、幽霊。暇で暇で仕方がなくて、片っ端から声をかけてたら千夏ちゃん。あなたに出会った」
咲希ちゃんは元気だけど、どこか寂しい空気を纏っていて、不思議な感じがした。私にしか見えないし、話せない。不思議な関係。
「…ねえ!友達に…なってくれる?」
勇気を出した。高校生になった時からだろうか。人との接し方が下手になって、いわゆるコミュ障みたいになってしまった。そのまま1年半も経ってしまった。友達は居ない。でも、私しか触れられない彼女なら、寂しそうな彼女なら、友達になれるかもしれないと思った。私は最低なのかもしれない。なぜなら、彼女が頷くことは目に見えていたから。本当は、勇気なんて出していないのかもしれない。
「だめ。私とあなたはどこまで行っても友達になれないよ」
「なんで…」
「幽霊は忘れてしまう。きっと私が死んだのは何十年も前で、多分あなた以外にも誰かと会ってる。1ヶ月もすれば、あなたのことはすべて忘れてしまう。だから、ごめんなさい。確かに、何も考えずあなたを呼んだ私が悪かった」
咲希は目を合わせてくれなかった。すごく、言いづらそうにしていた。校庭で、野球を練習する人たちの声がここまで届く。また、私の髪だけが揺れる。私は、深く息をお腹に押し込んだ。
「それでも良い。私はあなたと友達になりたい。全部忘れても、また会いに行く。だから、友達になってください」
勇気を出した。嫌いな自分はこれで終わり。私は、ここで押せるような人間でありたかったから。そして、自分が咲希の立場なら、こう言って欲しいと思った。なんなら、私の場合、きっと屋上すら出ることができていないだろう。
「本当に…良いの?」
「うん。じゃ、また来るね」
「うん…うん!またね!」
今の私なら、何でも出来る気がする。少しソワソワしながら扉を開け、音を立てないようにゆっくりと閉めて、跳ねるように帰った。




