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幽霊の見える眼(千夏編)

 僕、見ちゃったんです。髪の長い白い服をきた幽霊を!

 こういうのを聞くと、私はイライラする。なぜなら、私は生まれつき幽霊を見てきたから。真実を教えよう。幽霊なんぞ怖くない。見つめてたら呪われるとか、禍々しい姿をしているとか、そんなんじゃない。多分そういうのが見えた人はもっと寝た方が良い。きっと脳がバグってるだけだ。

 本物の幽霊ってのはすっごい薄くてよく目を凝らしたら見える、触れることのできない喋ることのできない人間ってだけだ。見えやすさはそれぞれ違う。これは勘だけど気づいて欲しい人ほど色が濃くなっている気がする。濃い幽霊はそこら辺の人でも目を凝らせば見えるのかもしれない。まあ、意外と日常生活に支障はないもので、私は一つも困らずに生きてきた。

「二人組になってくださーい」

 嘘、色々困っている。体育の時の二人組って本当誰が考えたんだよ。そいつは少なくとも友達はいっぱい居たのだろう。それに比べて私は…

「ねえねえ」

 呼ばれた気がして振り向くと、あまり知らない子がいた。こんな子クラスに居たっけと思いゼッケンに目を移すと、杉村と書いてあった。

「松本ちゃんね、放課後屋上に来て?」

 そう言うとどこかへ行ってしまった。足跡は、ついていなかった。

「松本さん、私と組まない?」

「あ…あぁ、うん。ありがとう」

 クラスの中であまり目立たないタイプの3人グループの1人に話しかけられた。もちろん嬉しかったのだが、そんなことより、あんなに濃い幽霊を見たことが無い。しかも話しかけられた。これまでなかった出来事に、私は一切恐怖を感じず、ただワクワクしていた。

 放課後。私は部活になんて入っていないから、終礼が終わった後は完全にフリーである。私は屋上へと向かった。野球部に肩がぶつかりながら人混みを進み、立ち入り禁止と書いてあるボロボロのロープに私は手をかけた。

「松本さん、何してるの?」

 私はドキッとして止まって動けなくなってしまった。胸の鼓動が早くなるのを感じる。

 市川先輩の声だった。困ったことがあったら学年関係なしに助けてくれる聖人みたいな人だ。私も何度か助けられたことはあるが、正直少し苦手だ。

「あ、いや別に先生に突き出そうとか、そういうわけじゃなくてね」

「先生に…言われて!ちょっと手伝いに行くだけなんで」

 嘘をついてしまった。先生を呼ばれては困る。申し訳ないけれどなんとかやり過ごしたい。

「あ、鍵閉まってるんじゃない?」

 鍵が閉まってたら屋上には行けない。先生に借りるわけにもいかないし、どうしたものか。私はひどく震えた足でロープを越え、ドアノブに手をかけた。その瞬間ガチャリと音を立てて、扉が開いた。

「あ、開いてました!」

「そっか、良かった。じゃ、これで…」

 市川先輩はそそくさと離れていった。恐る恐るドアから外に出ると、扉の上からあの少女が飛び降りてきた。

「こんにちは。名前は?」

「松本…」

「それは知ってるけど、下の名前ね。私は咲希さき。希望が咲く…みたいな?あなたは?」

「ええっと…千夏ちなつ。千回も夏が来たら流石に辛いよね…みたいな…」

 すると、咲希は笑ってくれた。

「面白い人、千回も夏来たら…って」

 涼しい風が吹く。私の髪はたなびいたのだが、彼女のはぴくりともしない。話せる上に見えるのだから、本当にいるのだと錯覚しそうになる。これは、紛れもなく私の人生にとって一番重要な出会いであったと言える。

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