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寂しさは非現実を呼び寄せる(松島編)

 次の日、母は本当に学校に行かせてくれなかった。不貞腐れた僕は意地でも自分の部屋を出ないと決め、読まなかった本やもう使うことのない教科書の入った箱を引っ張り出し、扉の前にどしんと落とした。ゲームをすれば、少し寂しさを紛らわすことができたけれど、充電切れが迫ると充電コードを慌てて挿し、適当に映画を観たりした。孤独はいつも自分を現実に近い所に引き寄せてきた。プリントを渡しに誰かが来る。なんてことはない。知っていたのに出雲が来てくれることをどこかで願っていた。

「ここ、ご飯置いとくね。食べてね」

 きっと、母としても僕が部屋に篭るのは好都合なのだろう。性格上、こういうニートみたいな暮らしは嫌いなはずなのに、止めるような素振りを全く見せない。僕は、母があまり好きではない。畳みかけるような言葉のマシンガンや、全ての行動に意味を持たせようとして心の底が見え見えになっている所がどうしても好きになれなかった。だが、僕は母と似ている。いつも自分のした行動は間違っていなかったと慰めようとしてしまう。

 長い時間というのはいけない。自然と考える時間が増えてしまう。出雲に会いたい。いつしか、能力などどうでも良くなっていた。

 僕はベッドに身を預け、天井を睨んだ。一人でいることに限界を感じ、扉の前の重い箱に手をかけた時、僕は何かに蹴り飛ばされる感触を覚えた。

「え?松島?」

 そこには便器に座りながらパンをかじる出雲の姿があった。学校の少し大きいトイレで他3つの倍ほどある。

「なんでこんな所に?」

「いやいやいや!そっちこそ!突然目の前に来て。瞬間移動か?」

「そうみたい。一人でいるのが寂しくなったからかな。それよりお前、便所飯って…」

「…何だか居ずらいんだよ、あの教室。周りの声がよく聞こえて俺のこと話してんのかなって、それと休み時間俺の席無いし。声かけるのも気まずいし」

「で、結果便所飯と…」

 出雲は小さく頷いた。僕にも気持ちは分かる。半分くらいは。全く元気のないその姿に、自分の元気も取られるような気がした。

「大丈夫もう少ししたらまた学校行くから。とりあえずさ、ここ出よう。俺の能力なら多分いけるから」

 また、出雲は小さく頷いた。目が痒そうな素振りを少ししている。ここには触れないでやった方が良いのだろう。さて、どこに行こうか。どうせなら広い場所が良いな。そう思った時、また蹴飛ばされるような感触があった。

「これ、屋上か。すごいな」

 ドサッと音がしたので見てみると、腰をおさえる出雲の姿があった。

「ちょっと、もうそろそろ昼休み終わるんだけど…」

「ああごめんごめん!戻ろっか」

 結局すぐ戻ってしまった。そういえばさっき何か物音が聞こえたな。屋上に鳥の巣でもあるのだろうか。

「…ありがとう松島。元気出た」

「こちらこそ」

 ぎこちない返事が、余計に気まずくさせてしまった。僕は出雲に別れを告げ、部屋に戻った。扉を開け、リビングへと降りた。

「母さん、能力が出た」

「何だった?」

 母は大して動揺もせず、スープの湯気で曇ったメガネを外しながら聞いてきた。

「瞬間移動…なのかな」

「え、おじいちゃんのやつだ。だから…ひいおじいちゃんか」

 ひいおじいちゃんなんて知ってるはずもなく、ただポカンとした。

「明日から学校行きな。瞬間移動の能力が出るってことは、大分無理させちゃったかもね。人を傷つけることなんて多分ないから、大丈夫だよ」

 明日から学校行きな。この言葉に救われた気がした。僕は大きく頷き、リビングのドアをそっと閉めた。

これで松島編は終了になります。

次回からは千夏編。霊の見える少女の話となります。

ひとまず、ここまで見て頂きありがとうございました!

続きも是非!

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