秘密の取り扱い方(松島編)
親友に秘密を明かされた時、どう対応するのが正解なのだろうか。僕には全く分からない。
「能力…ん?お前に?」
時が止まる様な感じがする。隣のカラオケ部屋からアニソンを盛大に歌っているのが聞こえてくる。
「遠くの物に干渉出来るって感じかな。例えば10m先のドアノブを開けられる…みたいな?」
「それは…スゴイネ」
何が何だかサッパリで、情報の整理ができない。正直、出雲はここまでやって嘘をつくような奴ではない。しかし能力というあまりにもファンタジーな話に頭が追いつかなくなった。
「まぁ、ちょっとそっちの席のさ、奥の方行ってみてよ」
言われるがままに移動をすると、出雲は深く息を飲み込んだ。
「見てて、松島」
出雲は少し苦しそうな顔をしながら手を前に伸ばす。はたから見れば前に向かって伸びをしている様な感じ。だが、出雲の手は僕の肩を捉えた。見た目は全く届いてない。それなのに、僕の肩の上には確かに手のひらがある。
「す…すごっ」
「そのお前の鞄から単語帳でも取って見せようか」
そう、澄まし顔で言ったは良いものの、かなり苦戦しながら鞄を開け、単語帳が宙に浮き、カラオケの真っ黒な机へと放り出された。
「はぁ…はぁ…ちょっとドリンクバー行ってくる」
そう言って出雲は部屋を出て行った。単語帳を触ってみると、少し汗がついていた。僕はそっとお手ふきで綺麗にした。そしてすぐに出雲ははぁはぁ言いながら帰ってきた。そして息を荒くして取ってきたウーロン茶をほとんど飲んでしまった。
「でさ、本題はこっからなんだけど。話に追いつけてる?」
「全然。君は能力を持ってる。それはもう信じるしかないのだけれど、あまりに非現実的すぎて」
「どうやら遺伝みたいでさ。母方の家系の人はみんな何か能力を持っていたらしい」
遺伝で能力…なんだか漫画の主人公みたいじゃないか。僕は、非現実に憧れてきたし、いつか異世界転生でもしたものならば、その世界の覇権を取れるとか思っているような奴だ。この世界では頑張れていないだけだ。魔法と剣とモンスターの世界なら僕はどんな努力だってできると。
「良いなぁ…能力があるとか、特別な人間みたいなさ…」
「あ、それなんだけどさ。本題ね。お前もだったんだよ。松島。家系的にうちと親戚だったみたいでさ。つまりお前も能力を持ってるはずなんだよ」
その瞬間、僕は非現実の一部となった訳だ。




