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新しい物語がはじまります。
第一章は全15話の短めです。
キーマンは「Diana」です。
日々のストレスやモヤモヤを少しでも忘れられる、そんな時間になれば・・・。
読んでくださるかたにとって、ほんのひとときの癒しや刺激になれば幸いです。
よろしくお願いします。
ここは、高台にそびえる壮麗な城の大広間。
金装飾が煌めく天井には幾重ものシャンデリアが輝き、壁には歴代の王たちの肖像画が並んでいる。
磨き抜かれた大理石の床は、シャンデリアの光を反射して宝石のような煌めきを放ち、奏でられる管弦の旋律に合わせて、貴族たちの衣擦れが優雅に響いていた。
今日は、フォンベルク国の姫君が成人を迎える祝いの宴。
各地から名門の貴族が招かれ、華やかなドレスと祝福の笑顔で満ちた会場は、栄華と熱気に包まれている。
そんな中、ひときわ洗練された空気をまとって一人の男が颯爽と姿を現した。
すらりとした長身、彫刻のように整った顔立ち。
この国では稀な漆黒の髪をさらりと風に揺らし、優しげな眼差しは深い紫を湛えている。
歩を進めるたびに周囲の空気がわずかに揺れる。
その瞬間、会場にいた令嬢たちの視線が一斉に彼へと注がれた。
パートナーを置き去りにしてまでも、我先にと彼のもとへ駆け寄る。
「エリアス様! 本日はご参列くださったのですね!」
「エリアス様、どうか私と一曲、踊ってくださいませ!」
「エリアス様!ほんのひとときで構いません、お話を・・・!」
「エリアス様、お願いです!せめて私の名だけでもお呼びいただけたら・・!」
「エリアス様、今宵のご予定は空いていらっしゃいますか!?」
エリアスと呼ばれるその男の周囲には、あっという間に色とりどりのドレスが花咲くように集い、美しい令嬢たちの熱気に包まれる。
「こんばんは、ご令嬢の皆様。本日も、なんと華やかで美しい」
やや高めの美声で微笑みかければ、その一言で令嬢たちは頬を染め、息を呑む。
「本日は、我が国の姫君、サーシャ・フォンベルク王女のご成人をお祝いに参りました。皆様ともお話ししたいところですが、まずは姫君へご挨拶を」
そうにっこりと微笑むだけで、数人が感極まり胸を押さえ、その場に崩れ落ちた。
さすがに王女のもとへ向かう彼の歩みを邪魔する者はおらず、令嬢たちは左右に道を開けて静かに見送る。
その間を、エリアスはゆったりとした足取りで歩き出した。
一人ひとりに目を向けて微笑みかけながら、長い脚で高台の王族席へと向かう。
階段を数段上がった先には、赤髪の姫が凛として座っていた。
サーシャ・フォンベルク王女殿下。
優雅で、そして確かな意思をその翡翠の瞳に宿した女性だ。
エリアスは片膝をつき、深く一礼して言葉を紡ぐ。
「サーシャ姫、本日はご成人、誠におめでとうございます。晴れの席にて、こうしてご挨拶の栄を賜りましたこと、身に余る光栄に存じます」
「エリー・・・・エリアス、やっと来たな。待ちくたびれたぞ」
姫がにやりと笑うと、エリアスもまた唇の端を上げた。
「少々、出るのに手間取りまして・・・・・」
「またか。本当にあやつらには呆れるな」
「いつものことです。そんなことより、まだダンスは踊れますか?」
「ああ、もちろん。エリアスのために一枠、ちゃんと空けてある」
エリアスはそっと手を差し出す。
「では、サーシャ姫。私と一曲踊っていただけますか?」
姫は優雅に立ち上がり、何のためらいもなく彼の手に自らの手を重ねる。
二人がダンスフロアへと降り立つと、そこにいた者たちは皆、その光景に見とれて言葉を失った。
華やかに、気高く、ただ美しい。
サーシャ姫とエリアス。
その姿は、まるで絵画から抜け出したような、美と気品の象徴だった。