第91話 終劇
作業着を着た二人の男が、リヤカーを押しながら森を徘徊する。
リヤカーには大量のゴミと死体が載せられていた。
マスクを着けた二人は悪臭に顔を顰めつつ進む。
しばらくは黙々と作業をしていたが、突如として一方の男が怒鳴った。
「何が"初心者歓迎の簡単なお掃除"だ。滅茶苦茶じゃねえかよ!」
男は帽子を地面に叩きつけた。
それを見たもう一方の男がなだめにかかる。
「カリカリすんなって。清掃バイトで時給五万だぜ? 訳アリなのはわかってたことだろ」
「そりゃそうだけどさぁ……」
「別に時間制限もないんだ。ゆっくり働いて大儲けすればいいさ」
「確かに! お前天才かよ」
「今頃気付いたのか」
周辺一帯には、同じ作業着の人々が点在していた。
彼らはゴミ袋やリヤカーを使って清掃作業を進めている。
血や臓物の臭いに嘔吐する者もいたが、ほとんどが粛々と仕事を行っていた。
二人の男は退屈そうな顔で雑談する。
「そういえば、指示役の人から聞いた?」
「何をだよ」
「あの人も雇われのバイトなんだってさ」
「それがどうした」
「指示役の上の人もバイトらしい。その上も、その上も、その上も……ここで仕事してる奴は全員高額バイトに釣られた人間なんだ」
二人の間に奇妙な沈黙が訪れる。
少ししてから会話は再開した。
「配信の回線とかVRの調整だけじゃなくて、バイトの面接もバイトって聞いた。面接官を採用したのもまた別のバイトかもなー」
「何だそれ、不気味だな。責任者は金を撒いて正体を隠してるのか」
「そういうことだよな。まあでも金さえ払ってくれたら問題ないよ。誰の陰謀とかどうでもいい」
持論を述べる男の背後で「ぴぎょっ」と声が発せられるのを聞いた。
彼はクスクスと笑う。
相方が悪ふざけでもしていると思ったのだ。
「雀の鳴き真似か?」
振り返った男は凍り付く。
リヤカーに載せた死体が起き上がり、相方の首を素手でへし折っていた。
その死体は半壊したゴーグルを着けていた。
全身が血みどろで肉が裂けて骨も一部露出しているが、爛々と輝く目は死と無縁の力強さを宿している。
リヤカーから転がり落ちた死体はむくりと立ち上がる。
乱れた銀髪をガシガシを掻いた後、呆然とする男を見て笑った。
叫ぼうとした男の口を木の槍が貫いた。
この作品は完結しました。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
新作も始めたのでよければそちらも読んでいただけると幸いです。




