第90話 波乱
届いたカクテルを飲んだ蓮巳は不満げにぼやく。
「なんかさー、通報したらゲームの運営って捕まらないかな。大儲けして逃げ切りとかズルくない?」
「やめとけやめとけ。消されるぞ」
「えー。何それ。白石さん、ビビっちゃってるの?」
蓮巳が茶化すように言う。
顔を曇らせた白石は、声量を落として呟く。
「俺はジャーナリストだからな。あのゲームの出来事を記事にしようしたんだ。だけどできなかった」
「どうして?」
「運営から警告メッセージが来た。あいつらは知るはずのない個人情報まで網羅していた。もし世間に暴露すれば、俺は間違いなく殺されていただろう」
「……権力に負けたってやつ?」
「残念ながらな。お前の言う通りだ。俺はビビっちまった。戦うなら俺抜きでやってくれ」
投げやりな白石の言葉を最後に静寂が訪れる。
それを破ったのは西園寺の意見だった。
「デスゲームはハイリスクな事業です。我々が手を下さずとも、いずれどこかで破綻すると思いますよ」
「破綻……って何が起こるんですか」
「好戦的なプレーヤーや関連組織による攻撃などでしょうか。理不尽な殺し合いを強いたのですから、理不尽な反撃を受けても当然だと思います」
「それで潰れてくれるのが好都合なんだがなあ……」
白石は苦笑気味にぼやく。
それに同調した三好と蓮巳が頷く。
一方で西園寺はスマートフォンの画面を三人に見せた。
「ところで変わった高額バイトを見つけたので見てください」
それは『四階建てのビルで一か月過ごす』という内容だった。
一歩も外に出ずに暮らすだけで報酬は二千万円。
その間の衣食住は保証されているという。
概要に目を通した三人は怪訝そうな顔になる。
「これって……」
「デスゲームですよね?」
「どう考えてもそうだよな」
「皆さんなら興味があると思いまして」
「西園寺さん、よくこの話の流れで提案できるよな……」
「うふふ」
西園寺は楽しそうに笑う。
それから彼女はスマートフォンを仕舞って説明を続けた。
「応募期限は今日までです。気になる方は一緒に参加しましょう」
「えっ、西園寺さん応募するの!? もう死ぬほどお金持ちなのにっ!」
「スリルのある人生を気に入っているんです」
西園寺は平然と答える。
その姿に三好は、ある種の羨ましさを感じた。
彼には芯の強さがそこにあった。
「……スリルのある人生、か」
三好はトゥルー・ライフ・クエストでの一週間を振り返る。
そして、新たなゲームへの好奇心が膨らむのを感じた。




