表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/91

第9話 散財と満喫

 鎌倉は雑貨商の前で足を止めた。

 地面に敷かれた布の上には、ペットボトルのジュースや水、クッキータイプの栄養食、缶詰、スナック菓子、飴やグミ等、多種多様な飲食物が並ぶ。

 それらを一通り見た鎌倉は呆れ顔になる。


「まるでコンビニだな。世界観を守らねえのか」


『一週間で劣化しない飲食物を選定した結果、このようなラインナップになっています。世界観を損なっている点は今後の課題とさせていただきます』


「俺はこの感じで大歓迎だがな。便利で美味いもんが一番だろ」


 鎌倉は片っ端から商品を掴み取り、コートのポケットに押し込んでいく。

 彼は飲食物の他にも酒と煙草も掴み取っていた。

 はち切れそうなポケットを一瞥し、鎌倉は舌打ちする。


「持ち切れねえな。なあ、親父。鞄とかも売ってるか」


「中古の革製ならあるよ」


「良いな、それもくれ」


 鎌倉は残りの商品を手当たり次第に鞄へと放り込む。

 ゴーグルを介した自動決済により、彼のゲーム内の所持金ゴールドが一気に減っていく。

 数値の変動に気付きながらも、鎌倉は一向に気にしない。

 使った分はまた盗めばいいと考えていた。


 そうしてすべての飲食物を買い占めた鎌倉は、端に置かれた曲刀に注目する。

 すぐさまゲームデータがウィンドウで表示された。



【サーベル】

攻撃力6。

刃が緩やかに曲がった剣。

斬撃に特化した武器。



 鎌倉はサーベルを握る。

 軽く傾けて確認した後、彼は満足そうに微笑む。


「へえ、オモチャだが造形は悪くねえな」


「お目が高いな。そいつも買ってくかい?」


「ああ、貰おう」


「まいどありっ! 今日はもう店じまいだな」


 上機嫌な雑貨商に見送られて、鎌倉は再び歩き出した。

 買ったばかりのスナック菓子を頬張りつつ、サーベルを腰のベルトに吊るす。

 いつでも引き抜けることを確かめて彼は頷いた。

 そんな鎌倉にアテナが尋ねる。


『武器を購入したということは、やはり他プレーヤーを殺害するのですか?』


「違えよ。こいつは護身用だ。火の粉を払う備えはいるだろうが」


 鎌倉は眉間に皺を寄せる。

 スナック菓子を楽しみつつも、彼の意識は警戒を怠っていない。

 視線は常に周囲に向けられており、第三者に襲われても対応できるよう注意していた。


「なあ、この街に何か娯楽はねえのかよ」


『闘技場で賭け試合があります』


「賭け試合で儲けることも可能か?」


『はい、可能です』


「良いねえ、最高じゃねえか」


 スナック菓子の袋を投げ捨てた鎌倉は、アテナの道案内で闘技場に向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ