第89話 克服
話題に恐ろしさを感じたのか、白石は慌てて別の話を振る。
「そうだ、三好は賞金を使ったか? 贅沢話を聞かせてくれよ」
「えっと……そうですね……」
三好は思い出しながら語る。
彼は高級マンションの一室を購入した事やブランド服を買い漁った事、散々貢いだ彼女に振られてしまったことを告白する。
それらを聞いた白石は大笑いしてビールを一気飲みした。
「ぶわっはっはっはっは! 若者らしい無駄遣いだな! いいじゃねえか!」
「まあそれでも残金の方が多いんですけどね……」
「そりゃそうだ。俺達は億万長者として一生気楽にやっていけるぜ」
「白石さんは何に使いました?」
「俺はあれだよ、競馬とか宝くじとかパチンコだ。株も始めたが、儲かってるのか正直分からん」
そこで三好の酒が到着した。
改めて乾杯をしたところで話は次第に盛り上がっていく。
酒が空になれば追加で注文し、揚げ物や肉料理、海鮮料理がテーブルに増えていった。
三人とも金銭的にまったく困っていないので躊躇いが無かった。
西園寺は聞き手に回り、二人の会話に楽しそうに相槌を打つ。
何杯か酒を飲んで酔いが回ってきた三好は、赤くなった顔で周囲を見回す。
「あれ、そういえば星原さんは来てないんですか?」
「なんだ。まさか惚れてるのか」
「いや!? 違いますって」
「星原さんは欠席です。急用が入ってしまったそうです」
「なるほど……じゃあ参加者はあと一人ですね」
その時、個室の扉が勢いよく開かれた。
駆け足で入ってきたのは巫女のプレーヤーである蓮巳だった。
蓮巳は申し訳なさそうに言う。
「遅れてすみませーん!」
「気にすんな。ほら、座って注文しな。腹減ってるだろ?」
「やった! いただきまーす!」
蓮巳は西園寺の隣に座ると、さっそくメニュー表を見始めた。
そんな彼女に三好が尋ねる。
「ゾンビ化の症状はもう大丈夫ですか?」
「全然平気! あっ、ゾンビメイクとかした方がよかった?」
「いや、怖いから困るけど……」
引いている三好を見て、蓮巳は「冗談だって」と笑う。
ゲーム終盤でゾンビ化した蓮巳だが、彼女は奇跡的に生還していた。
街の片隅に倒れていたところを星原が発見し、回復魔法で治療を施したのである。
ゲーム中は意識が混濁していたものの、現在では回復して社会復帰を果たしていた。
叔父の死で負った心の傷はまだ癒えていなかったが、蓮巳は気丈に振る舞って乗り越えようとしている。




