第88話 収入源
店員が来たので三好は飲み物の注文をする。
その横では、白石が豪快にビールを呷っていた。
「改めて考えても、俺達よく生き残れたよな」
「確かにそうですよね。俺も何度か死にかけましたし……」
「特にナイトメアモード以降が大変でした。何か一つでも判断を誤れば、あえなく全滅していたかもしれません」
「そうだよっ! マジで終盤がキツかったんだよなあ。樹木の化け物は無限に湧いてくるし、隕石の雨が降りまくるし、空飛ぶ魔王城がレーザーを飛ばしてくるし……」
ジョッキを片手に白石が愚痴る。
よほど鬱憤が溜まっていたのか、彼の言葉が途切れることはない。
他の二人が聞いていないにも関わらず延々と喋っていた。
自分の世界に入ってしまった白石を放置し、三好は西園寺に話題を振る。
「あの難易度、明らかにクリアさせる気なかったですよね?」
「さあ、どうでしょう。実際に我々は生還できたので、適切な調整だったとも言えます。運営も視聴者を楽しませるために苦心していたのだと思いますよ」
「視聴者?」
三好は首を傾げる。
すると西園寺がスマートフォンを取り出した。
彼女は手際よく操作し、表示された画面を三好に見せる。
「先日、ディープウェブでこちらのサイトを見つけました。少しご覧になってください」
スマートフォンには、三好がゾンビの魔王を倒す場面が映し出されていた。
画面の下部に設けられたコメント欄は大いに盛り上がっている。
我に返った白石も途中から画面に注目し、眉間に皺を寄せた。
「おいおい、見覚えがあるぞ」
「これってまさか……」
「お察しの通り、トゥルー・ライフ・クエストです。あのゲームはディープウェブで配信されていました」
西園寺はあっさりと新事実を明かした。
彼女は画面を操作してサイトの別ページを開く。
「サイトの年間会員費だけで数万ドル、動画の視聴や配信への参加、投げ銭機能にはその数倍の料金がかかります。今回のトゥルー・ライフ・クエストは延べ数百万人が視聴していたので、私達への賞金を加味しても運営は莫大な利益を得ていますね」
「馬鹿げた価格設定だな……そんなのに大金を払う奴がいるのかよ」
「本物のデスゲームですからね。興味を抱く人間がいても不思議ではありません。何より再生数が物語っています」
驚く二人に対し、西園寺は平然と語る。
彼女はそれを当然のものとして理解し受け入れていた。
「運営は他にも様々なデスゲームを開催していますよ。試聴してみますか」
「や、やめておきます」
「俺も遠慮しておく……」
三好と白石は顔を引き攣らせながら首を振った。




