第85話 完全無欠
三好の行動に気付いた鱧は嬉しそうな顔になった。
彼は気さくに話しかける。
「おっ、ミヨシンやん。何する気なん?」
「……お前を殺す」
「ははは。おもろいやん」
真顔で笑う鱧が黒い矢を飛ばす。
矢は三好の肩に命中するも砕けて霧散した。
『スキル【魔法中和】により、ダメージを無効化しました。代償としてMPの最大値が0で固定されています』
矢が連続で三好に当たるが、やはり彼は無傷のままだった。
予想外の結果に鱧は首を傾げる。
「あ? 何それ」
「魔王を倒して大量にスキルが手に入ったんだよ。お前じゃ俺は殺せない」
「へえ、随分と大口叩くやんか。一人で何もできひん無能のくせに」
鱧は罵倒を口にしつつ、様々な魔法を投げ放った。
しかし、黒い矢と同様に三好を死に至らしめることはなかった。
魔法ではない攻撃スキルも混ぜるが結果は変わらない。
三好は一歩ずつ前に進む。
そんな彼にアテナが通達した。
『スキル【幽体】【物理耐性】【防御術】他多数の重複効果により、あらゆるダメージが約九十八パーセントカットされています。僅かなダメージも自動回復で治るのでご安心ください。現時点の三好様のステータスならば、システム的な死亡を迎えることはないでしょう』
「アテナのチョイスのおかげだな」
『私はあなたのオーダーに応えただけです。あなた自身の選択が無敵を実現しました』
会話中も鱧は容赦なく攻撃を繰り返していた。
本来ならば致死量のダメージがスキルで封じられて徒労と化す。
当初は余裕ぶった態度だった鱧も苛立ちを見せ始めていた。
「おいおい、ふざけんなや。そんなのズルやろ。こっちの攻撃は三桁ダメージやで? 最終形態の魔王でも瞬殺やのに……」
ある程度近付いたところで三好が雷撃を打ち込んだ。
攻撃に夢中だった鱧は回避が遅れ、痺れて動けなくなる。
雷撃の副次的な状態異常だった。
ゴーグルがもたらす効果に鱧は大いに焦る。
三好は鱧の前に立って彼を見下ろす。
鱧はどうにか命乞いしようとしていたが、呂律が回らず上手く喋ることができなかった。
『現在の三好様は、各種スキルの代償で攻撃力がゼロです。ただし、一つだけ相手を殺害できるスキルがあります』
「それは何だ?」
『特殊攻撃スキルの【怨撃】です。一分以内に受けた攻撃を触れた相手に与えることができます』
「この状況にぴったりだな」
三好は躊躇なく鱧に手を伸ばし、首筋に指を当てた。
その状態で淡々と告げる。
「お前はやりすぎた。悪いが死んでくれ」
スキル【怨撃】が発動した。
蓄積された攻撃の記録が一挙に鱧を襲う。
到底耐えられないダメージが彼のHPを一瞬で枯渇させ、ゴーグルが死の投薬を開始した。
絶大な苦痛に鱧が断末魔を上げる。
「うおげゃっ!?」
鱧は血を流しながらのたうち回る。
口から赤い泡を噴いた末、彼は十秒ほどで動かなくなった。




