第83話 大物狩り
ゾンビの残党を避けつつ、三好は城を飛び出した。
そこには街を蹂躙し終えた魔王がいた。
門前には志村が倒れている。
志村は全身から血を流し、ぴくりとも動かない。
皮膚は青黒く変色していた。
死体を見た三好は悔しげに顔を歪める。
「間に合わなかった……HPが0になったんだ」
「ゾンビ化した魔王には勝てなかったようですね。ナイトメアモードは攻撃力だけ上がっているので仕方ありません」
三人の頭上から笑い声がした。
城のバルコニーから物部が見下ろしている。
彼女は目を見開いて叫んだ。
「はっはっは! ざまあみろっ! お前達も殺してやる!」
魔王が突進を始めた。
三好達を轢き潰そうとしている。
白石は腰を抜かして喚いた。
西園寺は迎撃を諦め、回避行動を取ろうとする。
唯一、三好だけは臆せず前に進み出た。
彼がゆっくりと掲げたのは聖杯だ。
三好は物部を睨みながら告げる。
「——お前が死ねよ」
聖杯を中心に神々しい結界が展開された。
それに触れた魔王が表面から崩壊し、断末魔の叫びを上げて蒸発していく。
志村との死闘で消耗していた魔王には、聖杯の持続ダメージを耐えるだけの余裕がなかった。
足を失って倒れ込んだ魔王は結界に頭から突っ込む形となり、そのまま黒い塵となって消滅する。
残された三好にアテナがいつも通りの口調で報告した。
『おめでとうございます。不死者魔王を倒したことでレベルが150まで上がりました。賞金も三千万円が追加されます。レベルアップに伴うスキル取得ですが、合計で二十八――』
「どのスキルを選ぶかはお前に任せる。とにかく死にづらい構成にしてくれ。できるか?」
『ええ、可能です。しかし私に一任してよろしいのですか』
「……もう疲れたんだ。細かいことを考えたくない」
『かしこまりました。三好様のオーダーに最適な二十八種のスキルを取得します』
三好がレベルアップの処理を行う間、物部はこっそり逃げようとしていた。
そんな彼女に西園寺が火球を放つ。
火球は物部に背中に命中し、彼女は一瞬で火だるまとなった。
魔法のダメージは物部のHPをあっけなく消し飛ばし、彼女は投薬による苦痛に襲われる。
「アアアアアアアアアアアアアッ!」
絶叫する物部がバルコニーから落下した。
彼女は地面に激突した拍子に頸椎を折って絶命する。
その死を見届けた西園寺は杖を構えたまま呟く。
「残るは鱧さんだけですね」
「誰が残ってるって?」
城から現れたのは、鉈を持つ鎌倉だった。
彼はその手に鱧の生首を持っていた。




