第81話 カオス
ゾンビを見た西園寺は瞬時に駆け出した。
彼女の進む先は崩れた壁の穴だった。
動けずにいる二人に指示を出しつつ、西園寺は大きく跳躍した。
「こちらです! 急いでっ!」
西園寺は城の外へと消える。
我に返った三好と白石は慌ててその後を追った。
彼らは階下の床に着地し、すぐさま室内へと転がり込む。
その直後、着地に失敗したゾンビ達が次々と落下していく。
早足で廊下に出た西園寺に三好は尋ねた。
「どうするんだ!?」
「とりあえず逃げるしかありません」
西園寺が杖を構える。
進路を遮るように現れたゾンビに火球が命中した。
ゾンビは一瞬で消し炭になった。
西園寺は足を止めずに進む。
「ナイトメアモードで全員の攻撃力が大幅に上昇しています。一度のダメージで死ぬ可能性が高く、ここで大勢のゾンビと戦うのはあまりに危険かと」
「西園寺の言う通りだ。狙うならゾンビを操るあの女だな。とても近付ける感じはしねえが……」
「現時点では困難です。身を守ることを最優先に考えて動きましょう」
城の中を走る三人の目の前に、いきなり生首が転がってくる。
その生首は姫のものであった。
恐怖と苦痛に固まった表情を浮かべている。
ショッキングな光景に白石が狼狽する。
「な、なんだっ!?」
生首が転がってきた方角から金属音が鳴り響く。
次の瞬間、武器を打ち合いながら現れたのは鱧と鎌倉だった。
鎌倉の一撃を弾いた鱧は、床を滑りながらため息を吐く。
「ったく、ほんま面倒やな……。どこの超人やねん」
「お前こそ強えじゃねえか。関西弁のくせに」
「関西弁は関係ないやろ」
鱧は包丁と黒い剣を握っていた。
鎌倉は鉈と燃える剣を構えている。
どちらも物理的な殺傷力を持つ武器と、ゲーム用の武器を併用していた。
互いにシステムを熟知し、あらゆる観点から相手の命を奪おうとしている。
両者の戦闘はすぐに再開された。
至近距離で互角の攻防を繰り返している。
紙一重で死ぬ状況ながらも、二人は心底から殺し合いを満喫していた。
それを見た三好は判断に迷う。
「ど、どうしよう……助太刀した方がいいか?」
「やめましょう。我々が下手に手を出しても邪魔になるだけです」
「こっちが標的になっても嫌だしな」
背後からゾンビが殺到してくる。
西園寺と白石が迂回したのを見て、三好もついていくしかなかった。




