第66話 襲来
聖剣を掲げた志村が、雄叫びを上げて岩場を駆ける。
対峙するのは魔王軍のモンスターだ。
数十体の軍勢は、黒い砦を背に志村へと襲いかかる。
覆しようのない数的不利を前にしても、志村の動きが鈍ることはない。
それどころか気迫が増し、鬼のような殺気を噴出させながら疾走していた。
志村は勢いのままに聖剣を振り下ろす。
刃から迸った光の斬撃がモンスターの軍勢を呑み込む。
たった一撃で先頭にいたモンスターの大半が浄化され、何もできずに朽ち果てた。
仲間を盾に耐えた個体もいるが、続く二発目の斬撃の餌食となって即死する。
志村は圧倒的な暴力を以て、モンスターの侵攻を強引に食い止めていた。
そのうち少数のモンスターが、光の斬撃を躱して志村に接近する。
叩き込まれる反撃に対し、志村は慌てず聖剣を振るった。
彼はモンスターの爪や牙を回避しながら、相手を的確に一刀両断する。
全体的に隙が多く荒削りな動きだが、有り余る身体能力でそれをカバーしていた。
次々と砦から出現するモンスターにも臆せず、志村は愚直に戦い続ける。
そうして激しい攻防を繰り広げた末、岩場に残っていたのは志村一人だった。
夥しい量のモンスターの死骸が周囲一帯を埋め尽くしている。
志村は砦に踏み込み、中にあった宝箱を開ける。
そこには緑色の液体が入ったガラス瓶が納められていた。
志村は効果も確認せずに液体を飲み干す。
電子音が鳴り響いた。
志村のHPとMPが全回復し、それぞれの最大値も大幅に上昇している。
志村が効果に満足していると、アテナが事務的に通達した。
『おめでとうございます。砦を占拠しました』
「そうか」
短く応じた志村は砦の外に出る。
付近に大きな影が差し、けたたましい咆哮が轟く。
上空を巨大な赤い竜が飛んでいた。
竜は旋回して森の向こう側へと飛び去る。
一部始終を目撃した志村は驚愕する。
「ドラゴン……!?」
『あれが魔王です。トゥルー・ライフ・クエストにおけるラスボスであり、皆様の――』
説明の途中、志村は走り出した。
彼は魔王の飛び去った方角に向けて突き進む。
その行く手を阻むように数体のゾンビが飛び出した。
ゾンビは志村に掴みかかって噛み付こうとする。
「ぬっ」
志村は寸前で噛みつきを避けると、聖剣でゾンビ達を薙ぎ払った。
ゾンビ達はあっけなく身体が崩壊して消滅する。
その間に新たなゾンビが集結して志村を取り囲んだ。
志村は立ち止まって聖剣を構える。
近くの木の裏から女の声がした。
「残念。不意打ちならいけると思ったのに」
「誰だ。姿を現せ」
志村の言葉に従って登場したのは、漆黒のローブを着た女だった。
女は妖艶に笑って告げる。
「さっそくだけど死んでくれる?」
「死ぬのはお前だ」
志村はいきなり光の斬撃を飛ばした。




