第65話 他人任せ
使者との会話を思い出した三好は話題を転換する。
「そうだ! 志村が単独行動で次のクエストを進めていると聞いたぞ」
「勝手に先走ったんよ。全然言うこと聞かへんし、ほんま厄介やで。まあ、結果的に得しそうやけどね」
「どういうことだ?」
釈然としない三好に、鱧はのんびりと答えた。
「メインクエストは受けた時点で参加者にカウントされて、誰がクリアしても報酬は貰えるんよ。貢献度で内容は変わるけどな」
「つまり志村に丸投げしたわけか」
「その通り。こっちはノーリスクで報酬だけ掠め取るっちゅう寸法や。何もせずにメインクエストが進むんやからお得やね」
椅子にふんぞり返った鱧は、頭の後ろで手を組んで微笑む。
責任感など欠片もない顔だった。
彼に続いて白石と藤堂が補足する。
「今回から俺達もメインクエストに参加している」
「怪我人なんでお役に立てないっすけどね」
鱧が三好の装備を観察した後、首を傾げて質問する。
「ちなみにミヨシンは前のクエストの報酬で何を貰ったん?」
「え、3000Gだけど……」
「僕とサイちゃんはそれに加えて魔法のアイテムも貰ったわ。自慢してもええ?」
三好の答えを聞く前に、鱧はさっさも荷物を漁り出す。
彼は鉄板を打ち込んだ分厚い長方形の盾を持ち上げてみせた。
「見て見て、魔法を中和する盾。鉄板で補強して物理攻撃にも耐えられるように改造してみたわ」
「へえ、便利そうだな」
「やろ? 身を守る道具はマストやからねえ」
得意げに語った鱧は、盾を膝の上に乗せる。
次に西園寺が首に着けたペンダントを三好に見せた。
「これはMPを自動回復し、魔法ダメージも上昇させます。魔法特化の私にとってはかなり有用です」
「ミヨシンも今から貰いに行く?」
「たぶん無理だろ。盗賊退治には全然関わってないし」
「じゃあシム兄さんを追いかけて頑張ってみる? 報酬狙いならアリやで」
「嫌だよ。しばらくは危ない目に遭いたくない」
三好はうんざりした顔で首を振った。
傷の痛みは薄れたものの、全身の疲労は色濃く残っている。
気の緩みのためか、三好はそこから一步も動けそうになかった。
眠らずに会話するだけで精一杯だった。
鱧はリンゴを齧りながら喋る。
「シム兄さんがおったら、魔王軍の砦なんて楽勝やと思うけどなあ。ついてくだけで終わるやろ」
「じゃあなんで同行してないんだ? 楽勝なんだろ」
「移動続きで疲れたんよ」
「じゃあ俺も休む」
「うんうん、それが一番やな。まあ、気楽に待っとこうや」
鱧に促された三好は、頷くと同時に倒れ込む。
押し寄せる眠気に勝てず、彼の意識はあっという間に夢の世界へと引きずり込まれた。




