第64話 新たな任務
報酬の話を済ませたところで、使者が揉み手をしながら三好に確認する。
「さっそくだが、新たな任務がある。魔王討伐に関わる重大な案件だ。受けてくれるな?」
「内容によりますかね……」
「ふうむ、消極的だがその傷なら仕方あるまい。先に説明をしよう」
少し残念そうな顔をしつつ、使者は真剣な面持ちで本題を語り始めた。
「諜報部隊が魔王軍の砦を発見した。場所は大陸の東端だ。そこに魔王がいるか分からないが、放っておくことはできない」
「つまり砦を攻撃するのが次の任務ですか?」
「その通りだ。引き受けてくれるか」
使者が三好の顔をじっと覗き込む。
間近で凝視される三好は怯み、無意識に後ずさってしまった。
彼は新たな任務の内容を頭の中で反芻する。
(魔王軍の砦か……正直、気乗りしないけど大金が貰えるんだよなぁ。レベル上げも兼ねてるし、別に損はしないか)
気持ちを固めた三好は、控えめな様子で承諾する。
「分かりました。任せてください」
「良い答えだ! 現在、勇者殿が単独で砦に向かっている。急いで追い付いてくれ」
「単独で? 他のメンバーはどうしたんですか」
「城で休息中だ。冒険の前に装備強化や情報収集しているらしい」
「一旦そちらと合流してもいいですか」
「確かにその傷で即座に動くのは厳しいな。出発前にしっかり英気を養ってくれ」
三好は使者の先導で再び城の中を移動する。
案内されたのは客室にあたる広い部屋だった。
並べられたソファやベッドには、包帯だらけの藤堂と白石が横たわっている。
目を閉じていた白石が、三好を見て疲れた笑みを浮かべた。
「よう、生きてたか」
「三好さん! また会えて嬉しいっす」
ベッドから跳ね起きた藤堂は、すぐに身体の痛みで背中を丸める。
それでも鶏頭は嬉しそうにしていた。
予想外の出迎えに、三好は驚いた顔で訊く。
「二人ともどうしてここに?」
「僕らが案内したんよ」
隣接した部屋から現れたのは鱧と西園寺だった。
鱧は血だらけの三好を前に苦笑する。
「また怪我しとるやん。大丈夫かいな」
「まあなんとか……」
「ミヨシン、悪運だけは一流やね。とにかく生きててよかったわ」
鱧が三好の肩を親しげに叩く。
一方、西園寺は空いたベッドに三好を引っ張っていった。
「こちらへどうぞ。応急処置を施しましょう」
「あ、ありがとうございます」
ベッドで横になった三好は、西園寺による応急処置を受ける。
西園寺は手際よく消毒し、ガーゼや包帯を巻いていく。
三好に水入りのコップを渡し、鎮痛剤や抗生物質も飲ませた。
その最中、隣に腰掛けた鱧は三好に尋ねる。
「諸々の話は二人から聞いとるけど、結局どうなったん?」
「それは……」
三好はここまでの出来事をゆっくりと話す。
すべてを聞き終えた時、白石は唇を噛んで辛そうに呟く。
「そうか、黒田は死んだか……」
「すみません。蓮巳さんも連れて来られればよかったんですが」
「しょうがないっすよ。三好さんが生還できただけで十分っす。きっと蓮巳ちゃんもどこかで生き延びてるっす」
落ち込む三好を藤堂が励ます。
その優しさに三好は泣きそうになった。




