第63話 二つの報酬
自己紹介を聞いた三好は、その名前を聞いたことがあることに気付く。
「星原って、確か有名な占い師で……」
「それは双子の姉ですね。三年前に死にました」
「す、すみません」
「お気になさらず。特に仲は良くなかったので」
星原は澄まし顔のまま歩き出した。
三好はすぐに後を追う。
身体の痛みは薄れていたが、まだ少しふらついていた。
すれ違う住民に挨拶しつつ、星原は三好に尋ねる。
「あなたの名前は?」
「三好です。フリーターをやってます」
「なぜ定職に就かないのですか」
「じ、自分に合う仕事が見つからなくて……一応探してるんですけど」
「本当ですか。神に誓えますか」
星原がじっと三好の顔を見つめる。
その眼力に三好はたじろぎ、焦りで何も答えられなくなった。
黙り込む三好を横目に、星原は視線を外して言った。
「冗談です。わたくしは姉と違ってオカルトを信じていません。口先だけで生きるセラピストです」
「で、でもすごい迫力でしたよ。心の奥まで覗かれた気がしました」
「それは錯覚です。三好さんの勝手な思い込みですね。人間の認識ほど曖昧で信用ならないものはありません」
「はあ……」
会話をしているうちに二人は城に到着した。
門番と話していた使者が三好を発見し、驚いた顔で駆け寄ってくる。
「おお、生きていたのか! 先に戻った仲間達は生死不明だと言っていたぞ!」
「ど、どうも……」
「ついてこい。此度の報酬をやろう」
使者が三好を促して城内へと入る。
星原は「また後ほど会いましょう」と言い、その場で手を振った。
星原に見送られた三好は、何度か振り返りつつ苦笑する。
(不思議な雰囲気だけど、なんだかんだで親切な人だったな……)
三好と使者は廊下を進む。
使者は親しげに労いの言葉をかけた。
「事情は聞いたぞ。道中で野盗に襲われるとは災難だったな」
「結構大変でした」
「しかしそこから一人で生還できるとは逞しいではないか。見直したぞ、ははは」
笑う使者が三好の背中を叩く。
ただし、仮想のNPCなので実際に触られた感覚はない。
三好は愛想笑いで流しながらも質問した。
「他の三人は無事に盗賊を倒せたのですか?」
「うむ、勇者殿が一方的に蹂躙したらしい。同行した二人が呆れてしまうほどの戦いだったそうだ」
「すごく想像がつきます……」
数分後、案内されたのは城の宝物庫だった。
室内には金銀財宝が所狭しと保管されている。
使者はその中から貨幣の入った袋を指し示した。
「今回の報酬だ。戦いに貢献するほど内容は豪華になる。さらなる活躍を期待しているぞ」
「ありがとうございます」
三好が触れる瞬間、貨幣袋は消える。
代わりに彼の所持金に3000Gが加算されていた。
同時にアテナの通達も行われる。
『メインクエストの参加報酬として、賞金に五百万円が追加されました』
「えっ、そんなに貰っていいのか? 俺、全然活躍してないけど」
『賞金追加は厳正なルール化で行われています。遠慮なくお受け取りください』
三好は今すぐゲームを棄権して賞金を持ち帰りたいと思った。
しかし、そんな都合の良いことが起きないのは知っているので、素直に感謝しておくことにした。




