第62話 自警団
三好を取り囲む暴徒の一人が、宣教師に向かって怒鳴る。
「てめえ、何者だ!」
「城の使者です。皆様の暴挙を止めに来ました」
宣教師は平然と答える。
それを聞いた暴徒達は、火に油を注いだように騒ぎ出した。
「俺達より先に、放火した奴を止めろよ! どうして今更出てきやがったんだ!」
「そうだそうだ!」
「偽善者めッ!」
罵詈雑言を浴びられても、宣教師は顔色一つ変えない。
彼女は冷静に、しかし強靭な意志の宿る目で語りかける。
「貧窮に屈して悪の道に走る……本当にそれでよろしいのですか。皆様の心はそれを是としましたか」
宣教師は両手を広げる。
あまりに無防備な姿だが、男達は釘付けとなって動けなかった。
彼女の放つ雰囲気に気圧されたのだ。
些細な仕草や目つき、声の抑揚が説得力を生み出していた。
直前までの敵意が露わだった暴徒達は、続く言葉を聞き逃すまいと集中する。
「不当な輩によって街は焼かれました。罪のない人々が殺されました。だからこそ手を取り合って団結すべきです」
「で、でも俺達はもうこんなことをしちまって……」
「構いません。王は赦すと仰いました。もし皆様にその気があるのなら、この街の自警団に加わりませんか。既に大勢の仲間がいますよ」
宣教師が指を鳴らすと、武装した人々が各所から一斉に登場した。
彼らは宣教師が独自に勧誘して集めた自警団だった。
全員の表情は希望に満ち溢れ、高潔な使命感によって輝いている。
尚も当惑する暴徒に対し、宣教師は晴れやかな声で告げる。
「さあ、共に立ち上がりましょうっ!」
その瞬間、暴徒達は自警団の一員となった。
彼らは涙を流し、喝采を上げて仲間入りを果たす。
それを拒む者は誰一人としていなかった。
団結した自警団は新たな仲間を求めて移動を始める。
終始何もできなかった三好は、呆気に取られた様子で固まっている。
「何だったんだ……」
宣教師が屋根から飛び降りて三好の前に立つ。
彼女は三好の手を握って歩き出した。
「あなたはこちらへ」
「えっ」
二人は城に繋がる大通りを進んでいく。
ふらつく三好の足取りを見て、宣教師は振り返った。
「大丈夫ですか?」
「すみません、もうクタクタで……」
「分かりました。少しお待ち下さい」
星原がおもむろに手をかざした。
手から湧き出た光が広がって三好に浸透する。
三好は驚いた顔で杖を落とす。
「痛みが消えた……」
「治癒の魔法です。ゴーグルに内蔵された鎮痛剤が注入されました。傷が治ったわけではないので、無理な動きはしないでください」
「そんな魔法もあるんですね」
『状態異常の他にも様々な薬が用意されています。いずれも即効性が高く、一般には出回っていないものばかりです』
アテナの不穏な補足に、三好は顔を曇らせる。
宣教師は澄まし顔で述べた。
「このゲームは治験も兼ねているのかもしれませんね」
「嫌だなぁ……」
「高額報酬を考えれば当然かと」
歩きかけた宣教師が、ふと思い出したように三好を見つめる。
彼女は一礼してから名乗った。
「申し遅れました。わたくし、宣教師のプレーヤーの星原です」




