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トゥルー・ライフ・クエスト ~超高額バイトに応募したら絶海の孤島でデスゲームに参加することになりました~  作者: 結城 からく


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第60話 満身創痍

 月明かりが差す中、三好の意識は浮上した。

 視界いっぱいに広がる夜空を眺め、彼は息を吐く。

 その直後、全身を駆け巡る激痛に顔を歪めた。


「うっ……ああ……ぐっ」


 ほんの少し力を入れるだけで痛みが走る。

 三好は人生最大の苦痛に襲われていた。

 彼はぼろぼろと涙を流して耐える。


 しばらくすると痛みは徐々に落ち着いてきた。

 まだ燻ぶっている感覚はあるものの、思考を妨げるほどではなくなっていた。

 三好は掠れた声を発する。


「ここは……」


『おはようございます。現在は三日目の二十一時です』


 アテナが淡々と回答した。

 驚いた三好は身体を動かそうとして、激痛でまた悶絶する。

 必死に呼吸を整えつつ、彼は頭上の崖に注目した。

 頂上までかなりの高さがあった。


(あそこから落ちて何時間も気絶していたのか……よく生きていたな)


 三好のすぐそばで笑い声がした。

 そこには薮蛇が倒れていた。

 薮蛇は身体はあちこちが潰れて骨が露出している。

 顔面も割れて、VRゴーグルに亀裂が出来ていた。

 薮蛇は血を吐きながら発言する。


「僕を……クッションにする、なんて……なかなか、やるねえ……」


「……っ」


 指摘された三好は、気絶する前の記憶を思い出す。

 崖から落下した三好は、薮蛇を下敷きにして急勾配を滑り落ちたのだった。

 それによって負傷を最低限まで抑えた。

 死に瀕した三好が無我夢中で取った行動だった。


 薮蛇はあっさりとした口ぶりで尋ねる。


「他人を、犠牲に……生きる気分は……どうだい?」


「……そんなに悪くない。ざまあみろって感じだ」


「ククッ……最高の答えじゃん」


 薮蛇は笑う。

 恨みや憎しみはなく、彼はただ悔しがっていた。

 ほんの些細なミスで逆転されたことを気にしていた。

 薮蛇は穴の開いた首を回して三好を見る。


「僕を……殺さ、ないの?」


「もう、いいよ。疲れた」


「賞金が、増えるのに……もったい、ない……」


 ぼやく薮蛇を無視して、三好はどうにか立ち上がった。

 近くに落ちていた木の槍を杖のように使って歩き始める。

 数メートル先の茂みからゾンビが出現した。

 続々と現れるゾンビは、頼りない足取りで二人に接近する。

 倒れたままの薮蛇はゾンビを見て呟く。


「僕達を、まとめて……殺したい奴が、いる……みたいだね」


「ゾンビを操るプレーヤーらしい。昨日も襲われたんだ」


「へえ……会ってみたかった、な……」


 会話の途中、三好は聖杯を使用した。

 急速に朽ち果てるゾンビを横目に、三好はその場から立ち去る。

 後続のゾンビは三好には近寄らず、薮蛇へと迫っていく。

 薮蛇は三好の背中に声をかけた。


「あーあ……僕を餌にして、逃げるんだ」


「自業自得だろ」


「そう、だね。別に責める気は……ないよ。僕だって、同じ選択を、するだろうから……」


 ゾンビが薮蛇に噛み付こうとする。

 刹那、その首が飛んだ。

 薮蛇の持つゲーム用武器のナイフが閃いたのだ。

 瀕死の重傷からは想像も付かないほど鮮やかな動きであった。


 満身創痍の薮蛇は、ナイフだけでゾンビを仕留めていく。

 それを目撃した三好は苦笑した。


「俺がお前を殺そうとしたら、反撃する気だったろ」


「ククッ……騙されてくれたらよかったのに」


 薮蛇はゾンビに噛まれながらも戦い続ける。

 いつの間にか周囲は数十体のゾンビに囲まれていた。

 その中央で薮蛇は、傷だらけの手を振って言う。


「まあ……こいつらは、僕の獲物だから……お互い生き残ってたら、また殺し合おうよ」


「二度とごめんだ」


 それだけ返した三好は、血だらけの身体で森の中を逃げた。

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