第6話 協力者
握手を求められた三好は固まる。
彼は恐る恐る相手の顔を見て呟いた。
「えっ……なんで俺がプレーヤーって……」
「そりゃぺらぺらと独り言喋ってたら、アテナちゃんがいるって丸分かりやろ。視覚効果で互いにゴーグルは見えんけどね」
「あー……確かに」
鱧に指摘された三好は納得する。
そして己の迂闊さを痛感した。
アテナの声は周囲の人間には聞こえない。
そのため三好がアテナと会話する光景は、傍目には延々と独り言を洩らしているように見えるのだ。
特徴的な行動はプレーヤーであることを明示する。
三好はそれを思い知り、心の中で反省した。
(アテナに質問する時は場所を考えないといけないな)
一方、鱧は気さくな態度で歩き出す。
「お察しやろうけど、僕もプレーヤーやねん。とりあえず歩いて話そか」
「は、はい」
頷いた三好は早足でついていく。
その際、鱧が薄いサンダルを履いていることに気付いた。
かなりの安物で、今にも壊れてしまいそうだった。
(職業によって服装も大違いだな)
新たな発見をした三好の顔をじっと鱧が覗き込む。
鱧は軽薄な笑みで尋ねた。
「お兄さん、名前は?」
「み、三好です」
「オーケー、じゃあミヨちゃんって呼ぼか。堅苦しいから敬語も抜きで頼むわ」
「えっ……」
「ミヨちゃんは嫌? じゃあミヨシンな」
強引にあだ名を決めた鱧は、三好の手を掴んで握手をする。
呆気に取られた三好はされるがままだった。
その間にも鱧は勝手に話を進めていく。
「ミヨシンの職業は?」
「俺は冒険者。鱧さんは……奴隷か」
「そうそう、見れば分かるよな。奴隷やねん」
鱧はみすぼらしい服を見せびらかす。
服は汚れているだけでなく、あちこちに虫食いの穴が開いていた。
大げさに息を吐いた鱧は、奴隷売り場を一瞥して愚痴る。
「あの檻からスタートした時は焦ったわ。一文無しで何もできひんし、誰かに買ってもらうのを待ってたんよ」
「ふ、不遇すぎる」
「せやろ? やからミヨシンが来てくれてほんま助かったわ」
嬉しそうな鱧は、三好の背中をバシバシと叩く。
それから笑顔で言葉を続けた。
「何しても仲間が出来たのは心強いわ。僕達から上手くやれそうやな」
「こちらこそ。協力してゲームを攻略しよう」
「よっしゃ! 二人で大儲けや!」
三好と鱧はハイタッチを交わした。