第54話 迎撃
笹川は白石を引きずって森の奥へと歩き去る。
残された薮蛇は、気さくな態度で三好に話しかけた。
「やあ、また会ったね。リベンジマッチでもするかい?」
「うるさい。こっちは二度と会いたくなかったんだ」
言い返す三好は、全身の痛みが一気にぶり返すのを感じた。
藪蛇に受けた苦痛が恐怖を伴って蘇ってくる。
それでも三好は奮起し、藪蛇に向けて手をかざした。
(やらなきゃ殺される。攻撃するんだ!)
三好の手から雷撃が迸る。
雷撃は藪蛇の片腕に命中した。
突然の魔法に驚いた藪蛇は、眉を曲げて面倒そうに喚く。
「うっわ、厄介な技じゃん。正々堂々と殺し合おうよー」
「絶対に嫌だ!」
怒鳴る三好は連続で雷撃を放った。
それ以上の被弾を避けるため、薮蛇は木々の合間に飛び込んで姿を消す。
藪蛇は一切の音を立てず、居場所を隠してしまった。
雷撃を止めた三好は焦る。
(また透明化だ……目視で見つけるのは厳しいな)
三好の隣では、黒田が太腿を貫通する槍を切断し、力任せに引き抜いていた。
汗だくの黒田は、傷口をタオルできつく縛って止血すると、小声で三好に告げる。
「……頼む。蓮巳を連れて逃げてくれ」
「黒田さんはどうするんですか」
「あいつを食い止める。この足では逃げられないからな」
やり取りを聞いた蓮巳は、泣きそうな顔で黒田に言った。
「何言ってるの! そんなことしたらおじさんが死んじゃうよ!」
「仕方ないんだ。あの男の動きを見ただろう。立ち向かうのは危険すぎる!」
前方の木陰から藪蛇の笑い声がした。
三好は勘で雷撃を打ち込む。
笑い声は少し離れるも、三好達の周囲を徘徊しているようだった。
藪蛇の接近を警戒しつつ、三好は意見を述べる。
「相手は一人です。ここで逃げても別の仲間が合流してきます。その前に全員で戦いましょう」
「……勝てる算段はあるのか」
「分かりません。でもやるしかないので」
根拠のない主張に黒田は逡巡する。
やがて彼は負傷した脚を庇いながら前に進み出る。
その手には弓矢がしっかりと握られていた。
前を向いたまま黒田は決意を以て述べる。
「私が奴の攻撃を凌ぐ。三好君と蓮巳は魔法による援護を頼む」
「任せて!」
「了解です!」
蓮巳と三好はそれぞれ身構えた。
暗い森の奥から、藪蛇の声が近づいてくる。




