第51話 約束
夕食後、三好が案内されたのは木々のない広いスペースだった。
黒田がそこスペースを指差して説明する。
「夜はここで寝ている。見張りは二人ずつ、夜明けまで三時間ごとに交代するんだ」
「えっ、野宿ですか」
「違う。これはカモフラージュだ」
黒田が藤堂に目配せする。
数秒後、何もないスペースに突如として木造の小屋が出現した。
藤堂は得意げに述べる。
「幻術師のスキルっすね。これくらいのサイズならしっかり隠せるっすよ。透明化は外から見た場合だけで、中には入れば普通っす」
藤堂が小屋に入った。
その後、小屋が再び消える。
今度は藤堂の姿も見えなくなっていた。
三好は驚きながらも目を凝らす。
そこにいると認識した状態でも分からなかった。
(これなら外敵の心配もなさそうだな)
三好が安堵する間に、黒田は他の面々に向けて告げる。
「まず最初に白石君と三好君に見張りをしてもらう。次が私と蓮巳、最後が真島君と藤堂君のペアだ。くれぐれも小屋の外に出ないように。他プレーヤーを見つけても接触してはいけないよ」
彼らは就寝の準備を始めた。
小屋の中に寝袋を敷き、荷物をまとめて素早く動けるようにする。
万が一のために靴は履いたままだった。
最初の見張り役に任命された三好と白石は、小屋の出入口付近に座る。
窓から外を覗ける位置だった。
黒田が三好の肩に手を置く。
「分からないことがあれば白石君に聞くといい。自堕落に見えるが、意外とやる男なんだ」
「おいおい、あんまりハードルを上げんでくれ。落ちこぼれに期待なんかしちゃ損だぜ」
酒瓶を片手に白石は鼻を鳴らす。
その後、見張り以外の面々は寝袋で仮眠を取り始めた。
三好は慎重に外の様子を窺う。
月明かりに照らされた森に異常はない。
(このまま三時間かぁ……)
早くも退屈になり、三好はため息を吐いた。
やがて沈黙に耐え切れなくなった彼は、小声で白石に話しかける。
「あの、白石さんの詐欺師ってどんなスキルなんですか?」
「初対面のお前さんに大事な個人情報を教えると思うか」
「す、すみません……」
「冗談だよ。真に受けるなって」
愉快そうに苦笑した白石は、少し目を細めて言う。
「詐欺師の初期スキルは【虚言】だ。一日に一度だけ、どんな嘘でもNPCに信じ込ませることができる」
「すごいですね」
「だろ? 上手く使いこなせば盤面をひっくり返せる。お前さんの能力はどうなんだ?」
そう白石に訊かれた三好は【狩猟】と【宝の地図】の説明をする。
概要を知った白石は顎を撫でつつ感心した。
「地味だが悪くねえな」
「はい、スキルがなければとっくに死んでいました」
三好は聖杯を撫でる。
今の彼にとっては最終手段の一つだった。
白石は暫し無言で外を眺めていたが、ふと真顔になって呟く。
「なあ、三好よ」
「何ですか」
「無事に生き残ったら飲み会でも開こうぜ」
「いいですね! ぜひぜひ」
「今の時点の賞金でも十分だしな。いくらでも豪遊できそうだ」
「寿司! 高い寿司が食べたいです」
「いいねえ、銀座に良い店を知ってるんだ。紹介してやるよ」
「ありがとうございます!」
三好と白石は固い握手を交わした。




