第47話 対話
ここで黒田は三好に衝撃の事実を告げる。
「ちなみに君は一日近く眠っていた。現在はゲーム開始から三日目の昼だ」
「はっ!? う、嘘ですよね」
「本当だ。催眠魔法がよほど効いたらしい。こちらも警戒していたとはいえ、いきなり眠らせてすまなかった」
謝る黒田を無視して、三好は慌ただしくベッドから飛び出す。
彼は出入り口の扉に駆け寄ろうとして、黒田に腕を掴まれて止められた。
「どこへ行くんだ」
「南の村です! 早く行かないとメインクエストが……っ!」
「落ち着け。慌てて飛び出したら危ないぞ。まずは説明してくれ」
「うっ、あ……すみません。実は……」
冷静さを取り戻した三好はこれまでの経緯を話す。
黒田は真剣な様子で一連の話に聞き入っていた。
「……そういうわけで、南の村を占拠する盗賊を倒すのが任務なんです」
「メインクエストか。私のところにも城からの使者が来たよ。要請は断ったがね」
「えっ、なぜですか?」
「このゲームで動き回るのはリスクが高すぎる。誰とも関わらず、隠密重視で行動するのが最も安全だからだ」
断言する黒田は弓矢を撫でた。
彼は芯のある眼差しで三好に話す。
「私はゲーム開始直後から森に潜伏し、他プレーヤーを監視してきた。協力できる人間を見つけるためだ」
「協力……確かに人数がいた方が有利ですもんね」
「いや、多すぎると不仲の種になる。ゲームの賞金額を考えれば、裏切りだって起きやすい。だから不用意に接触するのは避けてきた」
黒田の目に僅かな陰りが差す。
色濃い疲労を滲ませる顔は、彼が壮年であることを仄めかせていた。
軽く息を吐いた後、黒田は話を再開する。
「君を眠らせてここまで運んだのは、仲間としてスカウトしたかったからだ。あのゾンビの大群を一掃した手腕は只者ではない」
「わざわざ眠らせなくても、普通に話しかければよかったじゃないですか」
「あの場で接触したら、いきなり殺し合いに発展しかねない。穏便な会話のためにこちらが有利な状況を作るしかなかった。その点は申し訳なく思っている」
黒田は素直に頭を下げる。
それを見た三好は微妙な顔になった。
(悪い人じゃないけど、ちょっとやり方が物騒だなぁ……)
立ち上がった黒田が小屋の扉を開けた。
彼は手招きしながら外に出る。
「ついてきてくれ。私の仲間を紹介しよう」
「お、お願いします」
三好は大人しく従った。




