第46話 弓の男
日差しが顔に当たり、三好はうっすらと目を開ける。
彼は呆けた顔で目だけを動かす。
視界には木目の天井が映っていた。
(ここは……?)
すぐそばで人の気配が動く。
三好が反応する前に、相手が声を発した。
「目が覚めたか。こちらを向け」
決して友好的ではない声音だった。
三好はゆっくりと首を回す。
茶色い服を着た男が弓矢を引き絞って彼に向けていた。
厳しい顔つきからは欠片の油断も感じられない。
必要とあれば躊躇なく射る。
それを直感的に理解させるだけの気迫を備えていた。
三好は跳ね起きて仰天する。
「ちょっ、ええ!?」
「今から質問をする。正直に答えてくれ」
男は淡々と話す。
弓矢を構えたまま、男は鋭い目つきで尋ねた。
「君は殺人者か」
問われた三好は、ゾンビに殺された丸岡のことを思い出す。
その光景をすぐさま脳裏から消すと、彼は勢いよく首を振って否定した。
「ち、違う! 俺は金を稼ぎたいだけだ! 殺し合いなんて嫌に決まってるだろ!」
「……分かった。その言葉を信じよう」
男は弓矢を下ろす。
彼の纏っていた剣呑な雰囲気が幾分か薄れた。
男は少し笑って手を差し出す。
「疑ってすまなかった。私は黒田。君と同じプレーヤーだ」
「み、三好です」
「よろしくな、三好君」
「こちらこそ……」
握手を交わした後、黒田は椅子を引いて座る。
ただし弓矢を手放そうとはしない。
まだ完全に信頼されたわけではないのだ、と三好は悟った。
三好の視線の意味を察しつつ、黒田はあえて触れずに話を進める。
「洞窟から出てきた君を眠らせたのは私だ。そしてこの小屋まで運んできた」
「眠らせるって、どうやったんですか」
「催眠の魔法だ。そういうスキルがある。詳しくはアテナに聞いてくれ」
やり取りを聞いていたのか、アテナが流暢に説明を始めた。
『ゴーグルによる投薬は、死亡時以外にも状態異常に陥った際に用いられます。三好様の場合は催眠魔法が受けたので、該当する効能の薬を打ちました』
「それでいきなり眠ってしまったのか」
三好は洞窟を出た時のことを振り返る。
突如として彼は眠気に襲われた。
それが人為的なものだと知り、ぞっとする。
相手が黒田でなければ、殺されていてもおかしくない状況だった。
(状態異常……注意しないと命取りだな)
三好は暗い顔で自戒した。




