第45話 悪運
「これが……レアアイテム?」
三好は少しがっかりする。
もっと強力そうな武器を想像していたのだ。
彼は杯に注目して効果を確かめる。
【聖杯】
神聖なる力が込められた道具。
使用者を中心に半径十メートルの結界を一分間作る。
結界内に入ったアンデッドは毎秒100ダメージを受ける。
このアイテムは三回の使用で壊れる。
効果を知った三好は喜ぶ。
最初の印象とは裏腹に、聖杯はこの場における最適解にも等しい性能だった。
三好は聖杯を持ち上げて笑う。
「アンデッドってことはゾンビにも有効だよな」
『その通りです。非常に強力なマジックアイテムですね。使用回数に制限があるのでご注意ください』
「でもここで使わないと死ぬだろ」
『その可能性が高いです』
「じゃあ使うよ」
三好が宣言した瞬間、聖杯から柔らかな光が放出された。
光は洞窟内の全域へと浸透し、ゴブリンと戦っていたゾンビが次々と朽ち果てていく。
毎秒100ダメージの理不尽な結界がすべてのゾンビを一瞬で消滅させた。
残されたゴブリンはゾンビの残骸を見て困惑する。
光を放つ聖杯を見て、三好は驚嘆した。
「めちゃくちゃ強いな……ゲームバランスがおかしいだろ」
『おめでとうございます。レベルが21まで上昇しました』
「えっ、一気に上がりすぎじゃないか?」
『ゾンビの数が多かったことに加えて、連続討伐ボーナスが加わった結果です。スキルを三つ取得できますが、今すぐに確認しますか?』
「ああ、頼む」
アテナからスキルの選択肢が提示される。
三好は聖杯を持ったまま考え込む。
(とにかく武器だ。ゴブリンを倒さないと洞窟から出られない)
悩んだ末、三好はまず攻撃用に【魔法:雷撃】を選んだ。
それはMPを消費して雷を飛ばす魔法スキルだった。
続けて取得したのは、身を守るための盾を生み出す【魔法:魔力盾】である。
三つ目のスキルは、敵を倒すと一定の確率でMPが回復する【蠱毒】を選ぶ。
いずれもこの場から生還することを目的とした能力であった。
準備を終えた三好は洞窟の入り口に向けて歩き出す。
彼は生き残りのゴブリンに呼びかけた。
「おい」
三好はゴブリン達に手をかざし、青白い雷撃を発射した。
雷撃を受けたゴブリンは悲鳴を上げて倒れる。
一部の個体は接近して反撃を試みるも、魔力盾で進路を塞がれて失敗する。
そこに至近距離からの雷撃を食らって戦闘不能になっていく。
三好は焦らずじっくりと進む。
MPの残量に気を付けつつ、一体ずつ堅実に倒すことを選んだ。
幸いにもゴブリンは弱いモンスターだった。
一日目の経験値稼ぎで戦い慣れており、攻撃手段を持つ三好からすると難敵ではなかった。
やがて三好は時間をかけて洞窟の外に出る。
ゾンビは残らず全滅していた。
使役者と思しき黒ローブの女もいない。
改めて安堵した三好は、紫色の煙を見た気がした。
反射的に見回すも煙は見当たらない。
彼は何歩か進んだ後、よろめいてその場に座り込んだ。
立ち上がろうとするも、視界がぐにゃりと歪んで上手くいかない。
「あ、あれっ」
間もなく三好は仰向けに倒れた。
彼の視界の端に、近付いてくる何者かの足が映る。
彼は危機感を覚えるも、猛烈な眠気に抗えず意識を手放した。




