第43話 ゾンビ
三好はひたすら走る。
彼の後方には数体のゾンビがいた。
ゾンビは呻き声を発しながら小走りで迫ってくる。
一時も気を抜けず、立ち止まることも許されない状況だった。
三好は汗だくになりながら叫ぶ。
「どうして、増えてるんだよっ!?」
丸岡の死を目撃して数分。
森の各所から現れたゾンビ達が三好を追跡していた。
ゾンビの動きはあまり速くないが、体力の限界がないため絶えず接近を試みてくる。
そのせいで三好はノンストップで走らざるを得なかった。
「くそ、だめだ……! もう走れないって!」
三好は胸を押さえて喚く。
それでも足は止めない。
ゾンビの声が彼の生存本能を掻き立てた。
彼は根性だけでひたすら前に突き進む。
無我夢中で逃げる中、三好は右方向に人影を認めた。
木陰から顔を覗かせるのはゾンビではなく、茶髪の若い女だった。
漆黒のローブを着込むその女は、悪意に満ちた眼差しで三好を観察している。
そして、女の周囲には大量のゾンビがいた。
(誰だ……?)
三好はさらに意識を向けようとするも、ゾンビの追跡を無視できずに走り抜ける。
一瞬だけ振り返ると、女はゾンビに囲まれながらも襲われていなかった。
その光景で三好は確信する。
(あいつがゾンビを操っているんだ。敵対NPCか……それとも殺人プレーヤーか?)
全力で走る三好は、視界の端にマップを展開する。
現在地は森の南端に近い場所だった。
偶然にも本来の目的地がある方角であった。
(南の村まで行けば、志村が待っている。勇者の力なら一掃できるはずだ!)
それから三好はマップを常に表示させた状態で走る。
ショートソードを失った彼は攻撃手段を持たず、とにかく避けて移動するしかない。
四方八方から出現するゾンビを躱し続けるのは困難だったが、三好は何度か噛まれながらも進む。
どうしても厳しい場面では、冒険者のスキル【狩猟】で獲得していたドロップアイテム――ゴブリンやツノウサギの肉を使用することで、ゾンビの気を引いてやり過ごした。
『そのスキルを囮に使うとは……面白い発想ですね。あなたの生存能力を再評価しました』
「はいはい、ありがとな! でも今ピンチだから話しかけてくんなよッ!」
『お邪魔して申し訳ありません』
アテナの賞賛に怒鳴りながら、三好は後方を確認する。
雪崩のように蠢くゾンビは百体を超えていた。
三好は死に物狂いで逃げるしかなかった。




