第39話 聖剣
三好達は、小高い丘の上から街を眺めていた。
彼らの視線の先では、炎と黒煙が巻き上がっている。
四人が城を出て三十分後のことであった。
消火する手段もなく、ここまで避難するしかなかったのだ。
鱧はその場でしゃがみ込むよ、うんざりした様子でため息を吐く。
「あー、ヤバいな。誰かが暴走しとるやん。頭悪すぎやろ」
「火災でかなりの物資が燃えましたね。食糧調達が厳しくなるかもしれません」
西園寺も険しい面持ちで言う。
そこに志村が意見を挟んだ。
「街が心配だが進むしかない。我々は盗賊を倒して村を救わねばならない」
「ほんやわねー、さっすが勇者様ですわー」
棒読みで応じる鱧だったが、やがて諦めて立ち上がった。
彼は気持ちを切り替えて笑う。
「まあ、シム兄さんの言う通りやね。戻ったところで何もできひんし、任務をこなすのが優先やわ」
そうして四人は移動を始めた。
彼らはマップ機能を参考に歩く。
森の中を突っ切り、目的地である南の村へ向かう予定であった。
道中ではモンスターが出現するが、危なげなく倒して進む。
経験値稼ぎのため、戦闘は交代で担当した。
中でも際立った強さを見せるのは志村だった。
青白く光る勇者の剣は、どんなモンスターも一撃で葬り去っていく。
数度目の戦闘後、気になった鱧が志村に質問した。
「なあ、シム兄さんの武器強すぎひん? それどこで手に入れたん?」
「これは聖剣だ。召喚された時点で持っていたぞ。おそらく神から授かったのだろう」
「初期武器なんかい。ズルいやろ……」
ぼやいた鱧が三好の袖を引く。
彼は志村に聞かれないように耳打ちした。
「シム兄さんの聖剣、ちょっと見てみ? 性能ヤバいで」
「えっ?」
言われた三好は、志村の剣を注視する。
すぐさまVR技術で武器のデータが表示された。
【光の聖剣】
攻撃力50。
聖なる力を宿す伝説の剣。
所持者のレベル分の数値が攻撃力に加算される。
攻撃対象の防御力を無視する。
ゲーム知識のある三好は、その性能がどれだけ破格なのか理解した。
彼は率直な感想を洩らす。
「チート武器……」
「な? 裏技とかアホみたいやん。防具を固めても一発で死ぬで」
鱧が吹っ切れた調子で苦笑する。
彼は続けて告げた。
「シム兄さんには逆らわん方がええね。今のところ敵対する理由もないし、仲良くしとこか」
三好は無言で頷いた。




